主な特徴

優れた高温強度、低熱膨張特性、および良好な耐酸化性

HAYNES®242® 合金(UNS N10242)は、時効硬化時に長距離秩序反応により強度を引き出す時効
硬化型ニッケル – モリブデン – クロム合金です。この合金は、時効硬化状態で高い延性がありな
がら、1200~1300℉(649~704℃)以下では固溶強化型合金の2倍程度の引張およびクリープ強
度特性があります。242®合金の熱膨張特性は、他のほとんどの合金の熱膨張特性よりもずっと低
く、1500℉(816℃)以下では非常に良好な耐酸化性があります。他の魅力的な特徴には、優れた
低サイクル疲労特性、非常に良好な熱安定性、および高温フッ素およびフッ化物環境に対する耐
性などがあります。242®合金の進化型として、低熱膨張特性を有しているだけでなく、1400℉
(760℃)まで高い引張およびクリープ特性があるHAYNES® 244合金が開発されました。

HAYNES® 242®合金は、再鍛造ビレット、棒材、厚板、薄板、ワイヤー溶接製品の形態で、さまざま
なサイズで製造されています。 他の形態も、ご要求に応じて製造することができます。

用途

HAYNES® 242®合金は、航空および産業用ガスタービンエンジンのさまざまな部品用途に理想的
な特性を兼ね備えています。この合金は、シールリング、コンテインメントリング、ダクトセグメント、ケーシング、締結部品、ロケットノズル、ポンプ、およびその他多くに使用されます。化学プロセス産業においては、242® 合金は、当該環境への優れた耐性の結果として、高温のフッ化水素酸蒸
気を含むプロセスに使用されます。この合金はまた、高温のフッ化物塩混合物に対して優れた耐
性があります。242® 合金の高強度および耐フッ素環境性は、押出スクリューなどのフッ素エラスト
マープロセス装置で非常に役立つことも示されています。

新しい長距離強化メカニズム

HAYNES® 242®合金は、ユニークな長距離秩序反応により時効硬化強度を生み出し、それに
よって優れた延性を維持しながら、強度を非時効時の強度の基本的に2倍にします。 規則正
しいNi2(Mo,Cr)型領域は、数百オングストローム未満の大きさであり、電子顕微鏡を用いての
み見ることができます。

透過型電子顕微鏡写真は、242®合金の長距離秩序領域(黒っぽいレンズ形の粒子)を示してい
ます。(写真は、Cincinnati 大学の Dr. Vijay Vasudevan のご厚意により提供されたものです)。
試料は、2012℉(1100℃)で溶体化処理し、1200℉(649℃)で100時間かけて時効処理しました。

*この合金に関して技術的なご質問がある場合は、当社の技術支援チームにご連絡ください。

標準組成

重量 %

ニッケル:Ni Balance
モリブデン:Mo 25
クロム:Cr 8
鉄:Fe 2 max.
コバルト:Co 1 max.
マンガン:Mn 0.8 max.
ケイ素:Si 0.8 max.
アルミニウム:Al 0.5 max.
炭素:C 0.03 max.
ホウ素:B 0.006 max.

熱膨張特性

HAYNES® 242®合金は、時効状態での優れた強度と延性、およびアニール状態での良好な加工
性を兼ね備えた時効硬化型の材料です。1300℉(704℃)までの強度が制限された用途に特に有
効で、この温度域では、典型的な固溶強化型合金の2倍の強度があります。もっと高い温度でも
使用でき、その温度での固溶強化強度は依然として優れていますが、耐酸化性からは約1,500 –
1600℉(816 – 871℃)までの使用に制限されます。

100時間ストレスラプチャー強度の比較*

平均熱膨張係数

下記は、幾つかの合金の平均熱膨張係数を比較したものです:

合金 室温から下記温度までの平均熱膨張係数
1000°F 538°C 1100°F 593°C 1200°F 649°C 1300°F 704°C 1400°F 760°C
in./in/-
°F x10-6
mm/mm-
°C x10-6
in./in/-
°F x10-6
mm/mm-
°C x10-6
in./in/-
°F x10-6
mm/mm-
°C x10-6
in./in/-
°F x10-6
mm/mm-
°C x10-6
in./in/-
°F x10-6
mm/mm-
°C x10-6
909 5 9 5.4 9.7 5.8 10.4 6.2 11.2 6.6 11.9
242® 6.8 12.2 6.8 12.3 7 12.6 7.2 13 7.7 13.9
B 6.7 12 6.7 12 6.7 12 6.9 12.4 7.1 12.8
N 7.3 13.1 7.4 13.3 7.5 13.5 7.6 13.7 7.8 14
S 7.4 13.2 7.5 13.5 7.6 13.7 7.8 14 8 14.4
X 8.4 15.1 8.5 15.3 8.6 15.5 8.6 15.7 8.8 15.8

引張特性

棒材およびリング材- アニールおよび時効処理

試験温度 0.2% 耐力 極限引張強さ 伸び 絞り
°F °C ksi MPa ksi MPa % %
RT RT 122.4 845 187.4 1290 33.7 45.7
200 93 110.4 760 180.7 1245 31.7 47.0
400 204 102.3 705 173.5 1195 33.0 51.8
600 316 96.5 665 168.6 1160 33.4 48.4
800 427 86.3 595 161.3 1110 37.6 45.9
1000 538 78.3 540 156.3 1080 38.3 49.9
1200 649 82.7 570 144.9 1000 33.2 41.1
1400 760 44.9 310 106.2 730 44.3 54.1
1600 871 44.8 310 72.5 500 49.7 85.1
1800 982 30.6 210 42.0 290 54.0 97.8

RT= 室温

降伏強度および伸びの比較*

HAYNES® 242®合金は、HASTELLOY® S合金のような典型的な固溶強化型ニッケル基合金よりも
はるかに高い降伏強度を示しますが、十分に熱処理された状態で優れた延性も有しています。
このことは、特に、242®合金の低膨張係数と熱曝露後の優れた延性維持と組み合わせたとき
に、ガスタービンのリングおよびケーシングにとって優れたコンテインメント特性を有することにつ
ながります。この特性の組み合わせは、1300℉(704℃)以下での締結具およびボルト締めの用
途域にも良く適しています。

*厚板材料または製造業者のデータ

熱間圧延した厚板 – アニールおよび時効処理 (a)

試験温度
0.2% 耐力 極限引張強さ
伸び
絞り
°F °C ksi MPa ksi MPa % %
RT RT 126 868 193 1330 36
400 204 101 696 176 1213 43 52
800 427 91 627 165 1137 45 52
1000 538 89 613 164 1130 44 51
1100 593 89 613 160 1102 44 51
1200 649 87 599 141 971 29 31
1300 704 73 503 118 813 28 30
1400 760 48 331 94 648 93 71

冷間圧延した薄板- アニールおよび時効処理( (a)

試験温度 0.2% 耐力 極限引張強さ 伸び
°F °C ksi MPa ksi MPa %
RT RT 120 827 187 1288 38
1000 538 106 730 165 1137 31
1100 593 102 703 150 1034 18
1200 649 96 661 135 930 14
1300 704 83 572 109 751 10
1400 760 57 393 92 634 98

(a)(a)各製品形態の2ヒートに対して、1ヒート当たり2回の試験の平均。
溶体化処理 + 1200℉(649℃)で 48時間の時効処理。

冷間圧延した薄板- 冷間圧延状態および冷間圧延+時効処理

HAYNES® 242® 合金は、冷間圧延して直接時効処理した製品状態で優れた強度と延性を有し
ています。この合金の低熱膨張特性と組み合わせることで、締結具やばね材料として優れた
選択肢となります。

条件 試験温度 0.2% 耐力 極限引張強さ 伸び
°F °C ksi MPa ksi MPa %
M.A. RT RT 65.3 450 137.6 950 47
M.A. + 20% C.W. RT RT 139.5 960 169.6 1170 20
M.A. + 40% C.W. RT RT 181.3 1250 217.9 1500 8
M.A. + Age RT RT 130.0 895 192.0 1325 32
M.A. + 20% C.W. + Age RT RT 173.0 1195 209.5 1445 21
M.A. + 40% C.W. + Age RT RT 219.7 1515 244.7 1685 11
M.A. + 40% C.W. + Age 1100 595 191.4 1320 201.9 1390 11
M.A. + 40% C.W. + Age 1200 649 145.9 1005 198.7 1370 8
M.A. + 40% C.W. + Age 1300 705 134.3 925 183.7 1265 11
M.A. + 40% C.W. + Age 1400 760 94.1 650 156.0 1075 32

RT= 室温
M.A.= 溶体化処理
C.W. = 冷間加工
Age = 標準の時効処理

締結用合金の引張特性の比較*

HAYNES® 242®合金は、他の冷間加工して直接時効処理した締結用合金と非常によく比較され
ます。以下のグラフは、40%圧下率の冷間圧延と時効処理を施した薄板製品の室温引張特性
を比較して示しています。

*合金の冷間圧延の圧下率は 40% 。242®合金の時効処理;1200℉ (649℃)/24 時間/空冷
合金 718の時効処理;1325℉ (718℃)/8 時間/1150℉ (621℃)まで炉冷/8 時間/空冷合金
A-286 の時効処理;1200℉ (649℃)/16 時間/空冷

クリープ・ラプチャー強度

HAYNES® 242®合金は、時効状態での優れた強度と延性、およびアニール状態での良好な加工
性を兼ね備えた時効硬化型の材料です。1300℉(704℃)までの強度が制限された用途に特に有
効で、この温度域では、典型的な固溶強化型合金の2倍の強度があります。もっと高い温度でも
使用でき、その温度での固溶強化強度は依然として優れていますが、耐酸化性からは約1,500 –
1600℉(816 – 871℃)までの使用に制限されます。

100時間ストレスラプチャー強度の比較*

*Alloy B および Alloy N は薄板製品。その他は全て熱間鍛造材又は圧延した厚板、棒材、リング材。

242® Plate, Age-Hardened

温度 クリープ 下記時間で所定のクリープを生じるおおよその初期応力
10 Hours 100 Hours 1,000 Hours 10,000 Hours
°F °C % ksi MPa ksi MPa ksi MPa ksi MPa
1000 538 0.5
1
R 153 1055 138 952 122 841 109 752
1100 593 0.5 75 517
1 79 545
R 126 869 112 772 100 690 85 586
1200 649 0.5 82 565 62 427 38 262
1 85 586 66 455 42 290
R 105* 724* 91 627 75 517 48 331
1300 704 0.5 72 496 48 331 33 228 13* 90*
1 75 517 53 365 37 255 17* 117*
R 87* 600* 66 455 44 303 25 172
1400 760 0.5 24 165 12 83
1 27 186 15 103 8.0 55
R 46 317 29 200 18 124

*Significant extrapolation

時効硬化処理した242® 薄板

温度 クリープ 下記時間で所定のクリープを生じるおおよその初期応力
10 Hours 100 Hours 1,000 Hours
°F °C % ksi MPa ksi MPa ksi MPa
1000 538 0.5
1
R 133 917 125 862
1100 593 0.5 97 669
1 102 703
R 117 807 110 758
1200 649 0.5 79 545 58 400
1 82 565 62 427
R 110* 758* 90 621 69 476
1300 704 0.5 59 407 44 303 33 228
1 64 441 47 324 35 241
R 80 552 57 393 41 283
1400 760 0.5 21 145 12* 83*
1 24 165 14 97
R 41 283 25 172 15 103

*Significant extrapolation

疲労特性

HAYNES® 242® 合金は、高温で優れた低サイクル疲労特性を示します。 800~1400℉ (427~
760℃)の温度範囲で行われた、ひずみ制御試験の結果を以下に示します。試料は、厚板を機
械加工したものです。試験は、周波数が20 cpm (0.33 Hz)で、完全両振り (R = -1) の条件で行
いました。

応力制御切欠き部 LCF 特性 (熱間圧延したリング材)

以下の試験結果は、実際のガスタービンエンジン部品用途向けに設計された、熱間圧延して十
分に熱処理されたリング材から得られたものです。試験は、2重切欠きがある丸棒試験片
(Kt=2.18)を用いて接線方向に行いました。応力比 R=0.05で荷重は一軸繰り返し、サイクル周波
数は20 cpm (0.33 Hz)でした。

最大応力 1200℉ (649℃)での破断するまでのサイクル数, NF
ksi MPa 242® 909
110 760 845 2,835
100 690 12,220 22,568
95 655 32,587 13,796
90 620 76,763 55,679; 40,525
85 585 297,848 47,707; 43,701
80 550 304,116* 129,573**

*198,030 サイクルで割れは発見されず。200,000 サイクルで 8 mil (200μm)の割れを発見。
**45,800 サイクルで割れは発見されず。47,770 サイクルで 8 mil (200μm)の割れを発見。

衝撃強さ

製品形態 条件 試験温度 衝撃強さ
°F °C ft-lbf J
プレート(厚板) 溶体化処理 RT RT 198 268
プレート(厚板) 溶体化処理 -320 -196 150 203
溶体化処理 RT RT 401 544
溶体化処理 -320 -196 343 465
プレート(厚板) 時効硬化処理* RT RT 91 123
リング 溶体化処理 + 時効硬化処理* RT RT 51 69

*時効硬化処理条件: 1200℉ (649℃) / 24 h / 空冷

高温硬度データ

以下は、標準真空炉高温硬度試験の結果です。元の値は DPH (ビッカース) 単位の計測値で、
ロックウェル C/BW スケールは換算値です。

合金 800°F (425°C) 1000°F (540°C) 1200°F (650°C) 1400°F (760°C) 1600°F (870°C)
ビッカース ロックウェル ビッカース ロックウェル ビッカース ロックウェル ビッカース ロックウェル ビッカース ロックウェル
242® 271 26 HRC 263 24 HRC 218 95 HRBW 140 75 HRBW 78
6B 269 26 HRC 247 22 HRC 225 98 HRBW 153 81 HRBW 91
25 171 87 HRBW 160 83 HRBW 150 80 HRBW 134 74 HRBW 93
188 170 86 HRBW 159 83 HRBW 147 77 HRBW 129 72 HRBW 89
230® 142 77 HRBW 139 76 HRBW 132 73 HRBW 125 70 HRBW 75
556® 132 73 HRBW 129 72 HRBW 118 67 HRBW 100 56 HRBW 67

HRC = ロックウェル硬さ “C”.
HRBW= ロックウェル硬さ“B”, タングステンカーバイド球.

熱安定性

HAYNES® 242® 合金は、ある温度で長期間熱曝露された後でも優れた延性と衝撃強さを保持し
ます。その高強度と低熱膨張特性とを組み合わせることにより、ガスタービンの静的構造物に
おいて非常に良好なコンテインメント特性が得られます。以下のグラフは、1200℉(649℃)で
4000時間曝露した後の、242®合金と他の関連材料の室温での残留伸びおよび衝撃強さを示し
ています。

残留延性おび衝撃強度の比較

*Alloy 909 のデータは1000時間での値

1200°F (649°C)で曝露した後の室温特性*

曝露時間 0.2% 耐力 極限引張強さ 伸び 絞り シャルピー衝撃強さ
h ksi MPa ksi MPa % % ft.-lbs. J
0 110 758 179 1234 39 44 66 90
1000 119 820 194 1338 28 38 41 56
4000 122 841 196 1351 25 37 31 42
8000 121 834 193 1331 24 39 26 35

*試料は曝露した厚板を機械加工。2回の繰り返し試験。

物理的特性

物理的特性 英国単位 メートル単位
密度 RT 0.327 lb/in3 RT 9.05 g/cm3
溶融温度 2350-2510°F 1290-1375°C
電気抵抗 RT 48.0 µohm-in RT 122.0 µohm-cm
200°F 48.5 µohm-in 100°C 123.4 µohm-cm
400°F 49.3 µohm-in 200°C 125.1 µohm-cm
600°F 50.0 µohm-in 300°C 126.7 µohm-cm
800°F 50.6 µohm-in 400°C 128.0 µohm-cm
1000°F 51.1 µohm-in 500°C 129.5 µohm-cm
1200°F 51.7 µohm-in 600°C 130.6 µohm-cm
1400°F 52.4 µohm-in 700°C 132.0 µohm-cm
1600°F 51.3 µohm-in 800°C 132.4 µohm-cm
1800°F 50.4 µohm-in 900°C 129.8 µohm-cm
1000°C 127.6 µohm-cm
熱拡散率 RT 4.7 x 10-3 in2/s RT 30.5 x 10-3 cm2/s
200°F 5.1 x 10-3 in2/s 100°C 32.9 x 10-3 cm2/s
400°F 5.6 x 10-3 in2/s 200°C 35.9 x 10-3 cm2/s
600°F 6.1 x 10-3 in2/s 300°C 39.0 x 10-3 cm2/s
800°F 6.6 x 10-3 in2/s 400°C 41.9 x 10-3 cm2/s
1000°F 7.2 x 10-3 in2/s 500°C 45.0 x 10-3 cm2/s
1200°F 7.9 x 10-3 in2/s 600°C 48.1 x 10-3 cm2/s
1400°F 7.2 x 10-3 in2/s 700°C 51.2 x 10-3 cm2/s
1600°F 7.0 x 10-3 in2/s 800°C 44.2 x 10-3 cm2/s
1800°F 7.6 x 10-3 in2/s 900°C 46.6 x 10-3 cm2/s
1000°C 49.6 x 10-3 cm2/s
熱伝導率 RT 75.7 Btu-in/ft2-hr-°F RT 11.3 W/m-ºC
200°F 83.6 Btu-in/ft2-hr-°F 100°C 12.6 W/m-ºC
400°F 96.1 Btu-in/ft2-hr-°F 200°C 14.2 W/m-ºC
600°F 108.5 Btu-in/ft2-hr-°F 300°C 15.9 W/m-ºC
800°F 120.9 Btu-in/ft2-hr-°F 400°C 17.5 W/m-ºC
1000°F 133.3 Btu-in/ft2-hr-°F 500°C 19.2 W/m-ºC
1200°F 145.7 Btu-in/ft2-hr-°F 600°C 20.9 W/m-ºC
1400°F 158.2 Btu-in/ft2-hr-°F 700°C 22.5 W/m-ºC
1600°F 170.6 Btu-in/ft2-hr-°F 800°C 24.2 W/m-ºC
1800°F 183.0 Btu-in/ft2-hr-°F 900°C 25.8 W/m-ºC
1000°C 27.5 W/m-ºC
比熱 RT 0.092 Btu/lb-°F RT 386 J/Kg-ºC
200°F 0.097 Btu/lb-°F 100°C 405 J/Kg-ºC
400°F 0.100 Btu/lb-°F 200°C 419 J/Kg-ºC
600°F 0.103 Btu/lb-°F 300°C 431 J/Kg-ºC
800°F 0.106 Btu/lb-°F 400°C 439 J/Kg-ºC
1000°F 0.110 Btu/lb-°F 500°C 451 J/Kg-ºC
1200°F 0.118 Btu/lb-°F 600°C 470 J/Kg-ºC
1400°F 0.144 Btu/lb-°F 700°C 595 J/Kg-ºC
1600°F 0.146 Btu/lb-°F 800°C 605 J/Kg-ºC
1800°F 0.150 Btu/lb-°F 900°C 610 J/Kg-ºC
1000°C 627 J/Kg-ºC
平均熱膨張係数 70-200°F 6.0 µin/in-°F 25-100°C 10.8 µm/m-°C
70-400°F 6.3 µin/in-°F 25-200°C 11.3 µm/m- °C
70-600°F 6.5 µin/in-°F 25-300°C 11.6 µm/m-°C
70-800°F 6.7 µin/in-°F 25-400°C 11.9 µm/m-°C
70-1000°F 6.8 µin/in-°F 25-500°C 12.2 µm/m-°C
70-1100°F 6.8 µin/in-°F 25-600°C 12.3 µm/m-°C
70-1200°F 6.9 µin/in-°F 25-650°C 12.4 µm/m-°C
70-1300°F 7.2 µin/in-°F 25-700°C 13.0 µm/m-°C
70-1400°F 7.7 µin/in-°F 25-750°C 13.7 µm/m-°C
70-1600°F 8.0 µin/in-°F 25-800°C 14.0 µm/m-°C
70-1800°F 8.3 µin/in-°F 25-900°C 14.5 µm/m-°C
25-1000°C 15.0 µm/m- °C
動弾性係数 RT 33.2 x 106 psi RT 229 GPa
200°F 32.7 x 106 psi 100°C 225 GPa
400°F 31.8 x 106 psi 200°C 219 GPa
600°F 30.8 x 106 psi 300°C 213 GPa
800°F 29.7 x 106 psi 400°C 206 GPa
1000°F 28.6 x 106 psi 500°C 199 GPa
1200°F 27.6 x 106 psi 600°C 193 GPa
1400°F 25.7 x 106 psi 700°C 185 GPa
1600°F 24.0 x 106 psi 800°C 172 GPa
1800°F 22.4 x 106 psi 900°C 163 GPa
1000°C 152 GPa

RT= 室温

耐酸化性

HAYNES® 242®合金は、1500℉(816℃)以下の温度で非常に良好な耐酸化性を示し、これらの温
度での連続または断続的な使用のための保護コーティングは必要ありません。この合金は、もっ
と高い温度での使用に対しては特別に設計されてはいませんが、短期間の曝露に耐えることが
できます。

1500℉(816℃)の空気流中に1008時間曝露させたときの耐酸化性の比較*

合金 メタルロス 平均酸化層厚さ
mils µm mils µm
242® 0.0 0 0.5 13
S 0.0 0 0.5 13
X 0.1 3 1.1 28
N 0.4 10 1.2 30
B 7.2 183 8.2 208
909 4.4 112 19.4 493

*試験片は、試料を 7.0 ft/min (2.1m/min)の流速で通過する空気流中に曝露させました。 試料
は、1日に1回のサイクルで室温まで冷却しました。

空気流中に10か月間(7200h)、2か月に1回のサイクル**で曝露させたときの
耐酸化性の比較**

合金 800°F (427°C) 1000°F (538°C) 1200°F (649°C)
メタルロス 平均
酸化層厚さ
メタルロス 平均
酸化層厚さ
メタルロス 平均
酸化層厚さ
mils μm mils μm mils μm mils μm mils μm mils μm
718 0 0 0 0 0 0 0.1 3 0 0 0.2 5
242® 0 0 0 0 0 0 0.1 3 0 0 0.3 8
263 0 0 0 0 0 0 0.1 3 0 0 0.3 8

**試験片は、試料を 7.0 ft/min (2.1m/min)の流速で通過する空気流中に曝露させました。 試料
は、2か月に1回のサイクルで室温まで冷却しました。

1400℉ (760℃) で 500 時間のバーナーリグ耐酸化性の比較***

合金 メタルロス 平均酸化層厚さ
mils µm mils µm
N 0.7 18 0.8 20
242® 1.1 28 1.2 30
B 1.8 46 2.6 66
909 0.3 8 10.8 275

***バーナーリグ試験では、3/8 in x 2.5 in x 特定厚さ (9.5mm x 63.5mm x 特定厚さ) の複数の試
料を回転する保持装置に取付け、No. 2燃料油を約50:1の空燃比で燃焼させてできる燃焼ガス
中に曝しました。(燃焼ガスの流速は、マッハ数が約0.3でした。) 試料は30分毎に自動的に燃焼
ガス流から取り出され、ファンで外気温度付近まで冷却された後、燃焼ガス流中に戻されました。

上に示したミクロ組織は、評価した3つの材料に対して示したバーナーリグ酸化試験データと関連
しています。 242®合金および合金Bの写真上部の黒い領域は、試験中に消失した厚さを表して
います。合金909は、明らかにわずかな厚さ損失しか示しませんでした。これは、試料が酸素を吸
収して、曝露中に実際に膨潤した結果であると考えられます。試料はまた、非常に厚く、粗いス
ケールおよび広範囲の内部酸化を発生しました。合金909には、試験した試料が拘束されていな
いにもかかわらず、熱サイクルよる顕著な割れの証拠もありました。

 

酸化試験の評価に使用した金属組織学的手法の模式図

高温フッ素環境に対する耐性

高モリブデン含有量および低クロム含有量の材料が、一般に他の材料よりもフッ素含有環境での
高温腐食に対する耐性に優れていることが研究によって示されています。HAYNES® 242® 合金は
そのカテゴリーに属し、HAYNES® 242® 合金はそのカテゴリーに属し、フッ化ガスとフッ化塩環境の
両方に優れた耐性を示します。

70% HF に対する 1670℉ (910℃) で 136 時間での耐性の比較

合金 厚さ損失
mils mm
242® 12.6 0.3
S 15.8 0.4
N 15.8 0.4
625 47.2 1.2
230® 70.9 1.8
C-22® 78.7 2
600 141.7 3.6

KCl-KF-NaF 混合塩に対する耐性の比較

試料は、KCl-KF-NaF 混合塩に合計40 時間曝露温度は、曝露の過程で1290〜1650℉(699〜899℃)で周期的に変動。

溶融塩に対する耐性

試料は、1250℉(677℃)で1200時間、溶融フラックスに部分的に浸されました。 フラックス
は、ホウ酸、ホウ素元素、フッ化カリウム、四ホウ酸カリウム四水和物、ホウフッ化カリウ
ム、二フッ化水素カリウム、および五ホウ酸カリウムで構成されていました。

合金 腐食速度
mils / 24 h µm / 24 h
242® 0.5 13
N 0.6 15
C-276 0.9 23

耐窒化性

耐窒化性

HAYNES® 242®合金は、窒化環境に対して非常に優れた耐性を持っています。試験は、アンモニ
ア流中で、1800℉(982℃)で168時間行いました。吸窒量は、曝露前後の化学分析および試験片
の曝露面積から決定しました。

合金 吸窒量 (mg/cm2)
214® 0.3
242® 0.7
600 0.9
230® 1.4
X 3.2
800H 4
316 SS 6
304 SS 7.3
310 SS 7.7

塩水噴霧腐食に対する耐性

HAYNES® 242®合金は、1200℉(649℃)での硫酸ナトリウムを含んだ海水環境による腐食に対し
て優れた耐性を示します。試験は、試験片を300℉(149℃)に加熱し、海水を模擬した溶液を噴霧
し、室温で1週間冷却および保管し、静止空気中で1200℉(649℃)に20時間加熱;室温まで冷却
し、再び300℉(149℃)に加熱して噴霧し、室温で1週間保存する、という手順で実施しました。

合金 メタルロス 最大金属腐食層厚さ
mils µm mils µm
S 0.1 2.5 0.2 5.1
242® 0.15 3.8 0.3 7.6
B 0.2 5.1 0.3 7.6
909 0.4 10.2 0.2 30.5

耐水素脆性

水素および空気中で行われる切欠き付き室温引張試験は、242®合金が耐水素脆性において合
金625とほぼ同等であり、多くの重要な材料よりも優れていることを示しています。試験は、MILP27201B グレードの水素中において、0.005 in/min (0.13 mm/min)のクロスヘッド速度で行いまし
た。

合金 水素圧力 応力集中係数 切欠き引張強度比水素/空気
psi MPa Kt
Waspaloy 7,000 48 6.3 0.78
625 5,000 34 8 0.76
242® 5,000 34 8 0.74
718 10,000 69 8 0.46
R-41 10,000 69 8 0.27
X-750 7,000 48 6.3 0.26

耐水溶液腐食性

242®合金は、耐水溶液腐食性を必要とする用途に特化して設計されたものではありませんが、
ある種の媒体の中で、従来の耐食合金と比較して勝るとも劣らない耐性を示します。242®合金
に対する以下のデータは、ミルアニール(溶体化処理)状態の試料で試験したものです。

腐食媒体 温度 曝露時間 腐食速度, Mils/year (mm/year)
242® B-2 C-22® N
°F °C h mils mm mils mm mils mm mils mm
5% HF 175 79 24 14 0.36 12 0.3 25 0.64 20 0.51
48% HF 175 79 24 32 0.81 25 0.64 27 0.69 31 0.79
70% HF 125 52 24 35 0.89 66 1.68 32 0.81 48 1.22
10% HC 沸点 24 22 0.56 7 0.18 400 10.16 204 5.18
20% HCl 沸点 24 41 1.04 15 0.38 380 9.65
55% H3PO4 沸点 24 3 0.08 4 0.1 9 0.23
85% H3PO4 沸点 24 4 0.1 4 0.1 120 3.05
10% H2SO4 沸点 24 2 0.05 2 0.05 11 0.28 46 1.17
50% H2SO4 沸点 24 5 0.13 1 0.03 390 9.91
99% ACETIC 沸点 24 <1 <0.03 1 0.03 無し

溶体化処理材の引張特性

溶体化処理した状態の材料の室温引張特性

形態 0.2% 耐力 極限引張強さ 伸び 絞り
ksi MPa ksi MPa % %
薄板 60.7 419 131.8 909 65.6
厚板 60.3 416 131.1 904 65.5 71.6
60.5 417 131.0 903 66.5 77.1

硬度および結晶粒度

溶体化処理時の室温硬度

形態 硬さ, HRBW 典型的な ASTM 結晶粒度
薄板 92 5 – 6.5
厚板 94 4 – 6.5
90 3.5 – 6

HRBW= ロックウェル硬さ”B”, タングステンカーバイド球.

加工および溶接

HAYNES® 242®合金は、優れた成形および溶接特性を備えています。ピース全体を一様な温度に
するのに十分な時間浸した場合、約1800〜2250℉(982〜1232℃)の範囲の温度で熱間加工する
ことができます。 最初のブレークダウンは通常、温度範囲の上限で行い、仕上げは通常、結晶粒
を微細化するためにより低い温度で行います。

その良好な延性の結果として、242®合金は冷間加工によっても容易に成形できます。熱間また
は冷間加工した部品はすべて、最良の特性バランスを引き出すために、1200℉(649℃)で時効処
理する前に、1900〜2050℉(1037〜1121℃)でアニールし、空冷またはより速い速度で冷却しなけ
ればなりません。

この合金は、ガスタングステンアーク、ガスメタルアーク、およびシールドメタルアークなどの様々
なプロセスによって溶接することができます。サブマージアークや酸素アセチレン溶接などの高熱
入力プロセスは推奨できません。

溶接手順

ほとんどの耐熱ニッケル基合金に共通の溶接手順を推奨します。これには、ストリンガービード
の使用と、200℉(93℃)未満のパス間温度が含まれます。予熱は必要ありません。清潔であること
が重要で、溶接前にグリース、オイル、クレヨンの痕、作業場の汚れなどの除去に注意を払う必
要があります。この合金はニッケル含量量が多いため、溶接パドルは鋼材と比較して幾分”動き
がのろく”なります。溶融不足と不完全な溶け込み欠陥を避けるために、ルートの開口部および
傾斜部は十分に開いていなければなりません。

溶加材

HAYNES® 242®合金は、同一組成の溶加材を使用して接合しなければなりません。シールドメタ
ルアーク溶接を用いる場合は、HASTELLOY® W 合金の被覆アーク溶接棒を推奨します。

溶接後の熱処理

HAYNES® 242® 合金は、通常、完全に時効した状態で使用されます。しかしながら、最良の接合
および全体的な機械的特性を引き出すために、成型および溶接に引き続いて、時効処理する
前に完全溶体化処理することを推奨します。

同一組成の溶加材を用いて溶接した、厚さ 0.5 in (13
mm) の 242® 合金厚板の典型的なルート、フェイス、
および横曲げ(写真の左から右)。曲げ半径は、1.0
in (25 mm)。

機械加工

HAYNES® 242®合金は、溶体化処理あるいは時効処理状態のいずれの状態でも機械加工するこ
とができます。超硬工具の使用を推奨します。アニールした状態 (典型的な硬度:HRB 95-100)
では、この合金はやや”ゴム状”です。時効硬化した状態(典型的な硬度:HRC 35-39)で機械加
工すれば、より良い結果が得られるかも知れません。仕上げのターニングは、超硬工具を使用し
て、切込深さを 0.010-0.020 in (0.25-0.51 mm)の範囲、回転速度を 200-400 rpm、 40-80 sfm と
し、水性潤滑剤を使用することで問題なく行うことが出来ます。

適合規格および基準

規格

HAYNES® 242® 合 金
(N10242)
薄板、厚板および帯板 SB 434/B 434
P= 44
 

ビレット、ロッドおよび棒

SB 573/B 573
B 472
P= 44
被覆アーク溶接棒
裸溶接棒およびワイヤ SFA 5.14, F= 44 (ERNiMo-12)
A 5.14 (ERNiMo-12)
継目なしパイプおよびチューブ SB 622/B 622
P= 44
溶接パイプおよびチューブ SB 619/B 619
SB 626/B 626
P= 44
継手類 SB 366/B 366
P= 44
鍛造材 SB 564/B 564
P= 44
DIN
その他

基準

HAYNES® 242® 合 金
(N10242)
ASME Section l
 

Section lll

Class 1
Class 2
Class 3
Section lV HF-300.2
Section Vlll Div. 1
Div. 2
Section Xll
B16.5
B16.34
B31.1
B31.3
MMPDS

1承認された材料形態: 厚板、薄板、棒、鍛造材、継手類、溶接パイプ/チューブ、継目なしパイプ/チューブ

免責事項

Haynes Internationalは、本パンフレットに記載されているデータの精度・正確性を保証するために妥当な努力を払っておりますが、データの精度、正確性、あるいは信頼性について、いかなる表明も保証もいたしません。すべてのデータは一般的な情報のみであり、設計上のアドバイスを提供するものではありません。ここに開示されている合金特性は、主にHaynes International、Inc.によって行われた作業に基づいており、場合によっては公開文献の情報によって補足されているため、そのような試験の結果のみを示すものであり、保証最大値または最小値と考えてはなりません。実際の使用条件で特定の合金を試験して特定の目的に対する適合性を判断するのはユーザーの責任です。

特定の製品に含まれる特定の元素濃度とその潜在的な健康への影響については、Haynes International、Inc.が提供する安全データシートを参照してください。特記のない限り、すべての商標はHaynes International、Inc.が所有しています。

合金パンフレット

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