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Erosion

固体粒子エロージョン

エロージョンは、固体表面と流体、多成分流体または衝突する液体または固体粒子との間の機械的相互作用による、固体表面からの元の材料の漸進的な損失として定義されています(Hutchings, 1983 )。 固体粒子エロージョンが発生する条件は、粒子サイズが通常5〜500 μmで、相対速度は5〜500 m/sです。 ほとんどの場合、粒子は高速で移動して表面に衝突します。 ただし、粉塵が多い空気中のヘリコプターの回転翼の場合の様に、その逆も可能です。

固体粒子エロージョンでは、(表面の平面と粒子の軌道との間の角度として定義される)衝突角度が非常に重要です。延性材料では、20〜30°の衝突角度で最も損傷を受けるように見えますが、脆性材料では、衝突角度が90°のときに最大の劣化率を示します(Hutchings, 1983 )。 前者は、劣化の主要なモードとして塑性流動を伴う延性的エロージョン損傷として説明されています。 後者は、主な劣化メカニズムとして脆性破壊を伴う、脆性的エロージョン損傷として説明されています。

固体粒子エロージョン中の劣化率は、粒子が表面に衝突する(またはその逆)速度に強く依存します。 実際、衝撃角が一定の場合、劣化率は衝突速度のn乗に比例することがわかっています。ここで、nは通常、延性材料では2.3~2.5の範囲内にあり、脆性材料では2〜4の範囲内にあります(Hutchings, 1983) 。

非常に細かい粒子の場合を除いて、脆性材料のエロージョン率と粒子半径の関係もべき乗則に従い、指数は0〜1の範囲になります。驚くべきことに、微粒子は脆性材料が疑似延性であるかのような応答を引き起こします。すなわち、角度依存性が延性材料の場合と同じ様になります。 延性材料のエロージョンは一般に、直径が100〜200 μmを超える粒子のサイズには依存しません。 直径がより小さい場合は、関係はほぼ線形になりますが、直径が5μm以下の粒子では、エロージョンはほとんど発生しません(Hutchings, 1983) 。

侵食粒子の性質に関して、尖った粒子は明らかに丸い粒子よりも多くの損傷を引き起こします。 しかしながら、驚くべきことに、粒子が侵食される表面よりも硬い場合、エロージョン率と粒子の硬度との間に強い関係はありません。表面よりも柔らかい粒子の場合は、粒子の硬度が低下するとエロージョン率が急激に低下します(Hutchings, 1983) 。

金属材料に関しては、ミクロ組織の特性と固体粒子エロージョンに対する耐性との関係を確立するための試みがなされてきました。いくつかの研究は、例えば、マルテンサイト鋼の硬度とそれらの耐エロージョン性との間に反比例の関係があることを示しています(Gulden, 1979 および Green et al, 1981)。

同様に、炭化物は、侵食粒子よりも柔らかい場合、白鉄の固体粒子エロージョンに対する耐性に悪影響を与える可能性があります(Aptekar and Kosel, 1985 )。 炭化物が侵食粒子よりも硬い場合は、逆のことが当てはまります。 これらの研究から、、特に金属ミクロ組織にマルテンサイトまたは炭化物が存在することが原因している場合、硬度は、どちらかといえば、この形態の摩耗に対する耐性が不足していることの尺度であることが明らかです。

コバルト合金は、何年にもわたって、いくつかの室温での固体粒子エロージョンの研究に含まれており、特に、 Ninham,1987および L evy and Crook, 1991の論文 に記載されています。H utchings, 1983 で提示された原理に照らして、これらの結果のいくつかをレビューすることは価値があります。 Ninham, 1987 の研究では、合金6、6B、およびHAYNES®188(航空用ガスタービンエンジンの高温セクションで使用するために設計された低炭素Co-Cr-Ni-W合金)が、いくつかのクロム含有ニッケル基合金およびステンレス鋼とともに試験されました。 3つの変数、すなわち、侵食粒子のタイプ(炭化ケイ素または石英)、衝突角度(30、60、または90°)、および材料の状態が研究されました。試験合
金の1つ(718)は時効硬化型であったため、時効硬化した状態とアニールした状態の両方で試験しました。 2つの合金(188およびC-276)は、室温強度を高めるために冷間圧延することができるため、これらをアニールした状態と冷間圧
延した状態の両方で試験しました。

これらの変数の影響を評価するために使用された装置は、Levy, 1981 に詳細に説明されています。基本的には、侵食粒子を高速気流に供給するための振動ホッパーと、衝突が発生するテストチャンバーで構成されています。 60 m/sの粒子速度を使用し、20または40gの侵食粒子を使用するごとにサンプル重量を測定しました。 炭化ケイ素粒子は尖っており、直径は250〜300 μmでした。 石英粒子は直径が75〜200 μmで、形状は不特定でした。( Hutchings, 1983 から得られた)これら2つの材料の硬度は、炭化ケイ素の場合は2100〜2480 kgf/mm2、石英(SiO2)の場合は820 kgf/mmです。

この研究の主な結論の1つは、時効と冷間加工は、このタイプの合金の固体粒子エロージョンに対する耐性にほとんど影響を与えないということでした。 また、衝突角度の影響は小さいものでした。 炭化ケイ素の場合、角度効果は、Hutchings, 1983 で延性的エロージョン損傷について定義されたものと一致していました(エロージョン率が最大になるのは、衝突角度が30°のときで、最低になるのは90°のときです)。 ただし、石英の場合は、角度の影響はまちまちで、極小でした。 予想されるように、尖った炭化ケイ素粒子は、石英粒子よりも多くの損傷を与えました。

おそらく、 Ninham, 1987 に記載された研究から明らかになった最も重要な事実は、合金母材(コバルト vs. ニッケル vs.鉄)に関係なく、また、ミクロ組織の状態(アニール vs. 時効 vs. 冷間圧延)にも関係なく、(これらの試験条件下では)さまざまな合金の間に大きな違いがないということでした。合金 6および6Bに存在する炭化物は有益であるようには見えませんでしたが、 A ptekar and Kosel, 1985 の白鉄の場合のように、少なくともそれらは有害ではありませんでした。

Levy and Crook, 1991 の研究は、摩滅条件下でテストされた同じ鍛造合金の多くを含み、範囲が限定されていましたが、合金母材と炭化物が室温での固体粒子エロージョンにおいてほとんど重要ではないという証拠を再び提供しました。 材料の1つであるULTIMET®合金は、2つの異なるタイプの侵食粒子(400 μmの尖った炭化ケイ素と80 μmの不特定形状の酸化アルミニウム)を使用して、異なる衝突角度で試験されました。 測定されたエロージョン率を、衝突角度の関数として以下に示します。 Ninham, 1987 の研究と同様に、炭化ケイ素は延性的エロージョン損傷を誘発しましたが、酸化アルミニウムはわずかに異なる反応を示し、60°の衝撃角度でのエロージョン率は30°の衝突でのエロージョン率と同じでした。 Hutchings,1983 によると、酸化アルミニウムの硬度は炭化ケイ素の硬度と同様です;しかしな
がら、酸化アルミニウム粒子の形状は明記されていません。

Levy and Crook,1991 の研究の重要な部分は、同じ酸化アルミニウム粒子と30°の衝突角を使用した、高温(850℃)での固体粒子エロージョン試験でした。 この試験では、強度が最も低い合金である316Lステンレス鋼が、はるかに低い、最低のエロージョン率を示し、粒子が表面を変形させて破壊するのでなく、表面に埋め込まれた可能性があることを示唆しています。 もちろん、酸化皮膜はそのような高温で非常に重要です。

ULTIMET®合金の固体粒子エロージョンに対する衝突角度の影響

ULTIMET®合金の固体粒子エロージョンに対する衝突角度の影響

次の3つの図に示されている固体粒子エロージョンのデータは、2006/7の期間にタリン大学(エストニア)においてヘインズインターナショナルのために作成されたもので、25、282®、およびULTIMET®合金の性能に対する衝突角度、粒子速度、および温度の影響を示しています。 282®合金(高温用に設計されたニッケル基超合金)を時効硬化させた状態で試験しました。これらのデータを検討する際、重量変化の測定では、侵食されていない表面で成長した酸化物のスケールは考慮されておらず、侵食された表面では粒子の埋め込みにともなう重量増加も考慮されていないことに留意する必要があります。 それにもかかわらず、結果は前述の変数の影響に関してかなりの見識を提供します。

エロージョン図2中のHARDOX® 400および316Lステンレス鋼に対する単一のデータポイントは、これらの材料が300℃および60°の衝撃角において3つのヘインズ合金よりもエロージョンに対して耐性があることを示しています。 ただし、316Lの結果は、316Lが比較的柔らかい材料であるため、シリカ粒子の埋め込みによる重量の増加の影響を受けた可能性があります。

エロージョン図 0.2-0.4

エロージョン図 0.1-0.3

エロージョン図 0.1-0.3 90 degrees

キャビテーションエロージョン

キャビテーションエロージョンは、圧力変化を受けている液体中での、表面近くの気泡の形成と崩壊に関係しています。表面損傷は、気泡の崩壊、より正確には、気泡の爆縮中に発生する液体ジェットによって引き起こされます。 気泡自体は、液体の中の圧力が液体の蒸気圧を下回ると生成されます;崩壊は、その後の圧力上昇の結果です。 この損傷モードは、バルブとポンプで一般的です。

材料のキャビテーションエロージョン耐性は、一連の衝撃波に対する応答に依存するため、金属材料はミクロ疲労を被るのが一般的です。 これは、液滴エロージョンにも当てはまります。 実際、これら2つのタイプのエロージョンは密接に関連し合っているため、一方のタイプの試験が、もう一方のタイプに対する耐性を判断するために使用されることがよくあります。

コバルト合金は、キャビテーションと液滴エロージョンの両方に対して傑出した耐性を備えています(Heathcock et al,1979、Antony and Silence, 1979、および Woodford, 1972) 。 これは、コバルトに富む固溶体が機械的応力の作用下で(FCCからHCPに)変態する傾向があるのと、それに伴う、核形成と亀裂の伝播の両方に影響を与える低い積層欠陥エネルギーに起因しています。さらに、コバルト合金は双晶化によって応力を吸収することが知られています(Rémy andPineau, 1976) 。

キャビテーションエロージョンに対するコバルト合金の顕著な耐性は、いくつかの鍛造コバルト合金、ニッケル合金、およびステンレス鋼に対して、24時間後に記録されたエロージョンの深さを示した次の図から明らかです。

(炭化物を含まない)ULTIMET®合金と(約13 wt.%の炭化物を含む)合金6Bのエロージョン速度を比較すると、ミクロ組織の炭化物はキャビテーションエロージョン耐性にほとんど影響を与えないことが明らかです。もっと重要なのは、ULTIMET®合金および合金6Bよりも変態が少ないことが知られている合金25およびMP35N合金の結果が示すように、変態傾向です。図中のデータは、ASTM規格 G32に記載されている振動キャビテーション試験機を使って取得しました。基本的に装置は、振動子(振動源)、振動を増幅するための先細の円筒形部材、および試験液(蒸留水)を保持する温度制御された
容器から構成されています。試験片は直径14 mmの円筒状のボタンの形をしており、先細の円筒の端にあるネジ穴にネジを切った6.4 mmのシャンクがねじ込まれています。 ASTM規格で推奨されているように、テスト中は周波数20kHz、振幅0.05 mmを使用し、蒸留水は16℃に維持しました。

G32に記載
*時効硬化材

すべての液体で、通常、凝固点と沸点の中間の温度でキャビテーションエロージョン速度が最大になります(Hutchings, 1986)。 たとえば、Zhou and Hammitt,1983 は、水中の304ステンレス鋼のキャビテーションエロージョン耐性に対する温度の影響の研究について説明しており、最大値は約50℃で測定されました。

時間の影響に関しては、キャビテーション条件下で、材料が失われる前の潜伏期間が短いことが知られています(Hutchings,1986)。 コバルト合金の場合、この潜伏期間は8時間未満です。 より長い期間の後、ほとんどの材料でエロージョン速度の低下が観察されました。 ULTIMET®合金のキャビテーションエロージョン耐性に対する、より長い試験期間の影響を下の図に示します。この図は、製品形態によるの違いも示しています。

ULTIMET のキャビテーションエロージョン耐性に対する

コバルト合金の摩耗に関連する多くの用途には、オーバーレイ溶接が含まれます。 多層溶接が適用されない限り、希釈(すなわち、溶融池での耐摩耗性コバルト合金と、通常は鋼またはステンレス鋼の基材の混合)は、オーバーレイ材料の摩耗性能を低下させる可能性があります。 次の図は、ULTIMET®合金に対する希釈の影響を研究した Crook,1993 の結果を示しています(実験的アプローチはかじりに関するセクションで説明されています)。 これらの結果から、(少なくともULTIMET®、および最大16.7%レベルまでの鋼またはステンレス鋼に対する)希釈の影響は、96時間の試験期間にわたって極端に有害ではないことが確認できます。

希釈された ULTIMET®GTA オーバーレイ溶接に対する

スラリーエロージョン

液体の流れに同伴する固体粒子によって引き起こされるスラリーエロージョンは、複雑な現象です。 衝突角度が大きい場合(すなわち、表面の平面に垂直)は、プロセスは固体粒子のエロージョンにいくらか似ています。 実際、建物のサンドブラストは、空気中の砕片を最小限に抑えるために、砂/水スラリーを使用して行われることがよくあります。ただし、衝突力は液体の存在によって著しく影響されます。衝突角度が小さい場合、プロセスは低応力摩耗にもっと似ており、粒子が流体力学的に表面に押し付けられます。 表面が金属で液体が腐食性である場合(そして水が鋼を腐食する可能性がある場合)、不動態皮膜の機械的剥離を伴う複合プロセスであるエロージョン/コロージョンの可能性が高くなり、化学的腐食の速度が速くなります。

ヘインズインターナショナルが(ローレンス・バークレー国立研究所と共同で)作成した、6B、25、およびULTIMET®合金を比較した唯一のスラリーエロージョン試験データを以下に示します(Levy and Crook,1991 を参照)。 試験期間は40時間で、サンプルとプロペラを回転シャフトに取り付けた状態で、密閉されたスラリーポット内で実施されました。 スラリーは室温の水にアルミナ(80 μm)が入ったもので、粒子負荷は0.12 kg/lでした。 衝突角度は30°、衝突速度は5m/sでした。

スラリーエロージョンデータの比較

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