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金属同士の滑り摩耗

金属材料の中で、コバルト基合金は、一般に、潤滑剤がない場合、高負荷での滑り摩耗に対して最も耐性があると見なされています。 このような条件下では、”かじり”として知られる損傷の形態が一般的です; これは、全体的に塑性変形し、原子結合(または冷間溶接)し、次に片面または両面が破壊し、材料が移動して起こると考えられています。後で示されるように、試験結果からコバルト基合金がかじりに耐性があることが確認できます。 さらに、試験結果は、ステンレス鋼が原子構造には関係せず、この形態の損傷を受けやすいことを示しています。

しかしながら、無潤滑のスライドシステムで発生する損傷の形態はかじりだけではありません。 より低い負荷、特に(金属表面にかなりの加熱を誘発する)高い相対速度では、酸化物の成長と剥離が発生する可能性があります。(”酸化””摩耗と呼ばれることもある)このような状況下では、母材の特性が幾分おおい隠されます。 これは、下にある材料が十分に支えている限り、酸化物がすべり摩耗プロセスを制御する傾向がある、約500℃を超える温度で確かに当てはまります。 非常に高温では、滑っている金属材料上に非常に滑らかな酸化物面が生成される可能性があります; これらの、いわゆる”光沢”は、何らかの形の熱変換を伴う可能性がある、あるいは、微細な酸化物粒子は容易にせん断されて接触面と平になると推測されています。

へインズインターナショナル(および以前の会社)での金属同士の摩耗試験の歴史は40年に及びます。 初期(1978年から1986年)には、かじりおよびピンオンブロックテストを使用して、当時の会社のポートフォリオにおける鋳造およびオーバーレイ溶接材料(主にコバルトおよびニッケル基)の特性を評価および比較していました(事業のハードフェーシングセグメントは1986年に売却されました)。高温試験が可能なピンオンディスク(POD)装置が構築されましたが、結果が疑わしく、すぐに使用されなくなりました。 1981年に(カリフォルニアのGeneral Atomicにおいて)いくつかの室温および高温での金属同士接触試験が実施され(Crook and Li, 1983) 、オーバーレイ溶接(表面硬化)材料であり、鍛造製品ではないことが懸念されてはいましたが、コバルトに利点があることが明確に示されました。

ヘインズインターナショナルでの金属同士の試験の第2期間は、ヘインズの研究所から出現した最初の鍛造、コバルト基、耐食および耐摩耗性材料であるULTIMET®合金の開発と宣伝の時期と一致し、この後にハードフェーシング事業が売却されました。この期間は1989年から1992年までで、主に鍛造製品のかじり試験が行われましたが、ULTIMET®合金の他の形態、特にヘインズ製の鍛造ワイヤー消耗品から作られたオーバーレイ溶接用製品も試験されました。

ヘインズインターナショナルは、ごく最近、金属同士の試験の第3期に入ったばかりで、ASTM G99準拠のピンオンディスク試験機を購入し、ヘインズが所有しているかじり試験器具を改修しました。さらに重要なことに、ヘインズインターナショナルは、極めて正確な表面分析を可能にするために、広域レーザー三次元測定装置を取得しました。

ASTM G99準拠のピンオンディスク試験とヘインズかじり試験は、金属同士の滑り摩耗の全容の両端にあります。 ピンオンディスク試験は、(たとえば、多くのベアリングや回転シールに見られる)高速/低負荷条件をシミュレートしますが、かじり試験は、(たとえば、ボルトの高トルクの取り付けおよび取り外し中に見られる)低速/高負荷条件をシミュレートします。 液体がない場合、高速/低負荷の金属同士の滑り中に表面温度が高くなる可能性があります; これらは、酸化物粒子を含む砕片を生じる可能性があります。

一方、かじりは、(材料の結合により)焼き付きを起こす可能性があり、短い滑り距離で比較的大きな損傷(材料の大きな塊が一方の表面からもう一方の表面に移動したり、接触面で放出されたりする)を引き起こす可能性があります。

基材合金と強化メカニズムが高速/低荷重の滑り摩耗に及ぼす影響を説明するために、ASTM G99準拠のピンオンディスク試験機によるヘインズインターナショナルでの初期の研究は、(同じ合金同士を組み合わせた)HAYNES® 25、230®、および282®合金に焦点を当ててきました。 HAYNES® 25合金は、変態傾向を調整するために10 wt.%のニッケルを含ませたコバルト基合金です。 HAYNES® 230®合金はニッケル基の合金で、非常に類似した合金添加物が同様のレベルで添加されています。 HAYNES® 282®合金は、ガンマプライム強化型のニッケル基材料です。

3つの合金のピン摩耗の程度を次の棒グラフに示します。図は、コバルト基のHAYNES® 25合金が、30 Nの負荷、および2m/sの線速度での摩耗に対して、3つの合金の中で最も耐性があることを示しています。

30 Nの負荷、および2msの線速度での摩耗に対して

ガンマプライム強化型 HAYNES® 282®合金は、固溶強化型ニッケル基のHAYNES® 230®合金よりも、これらの条件下での耐摩耗性が大幅に高いことがわかりました。 さらに、282®合金は10および20 Nの負荷で非常に低い摩擦係数を示すのに対し、25および230®合金の摩擦係数は、以下のチャートに示すように、一般に10〜30Nの範囲の負荷に依存しないことが発見されました。

10、 20、 および 30 Nの負荷(直線滑り速度 2 m/s)
で連続測定した HAYNES® 282® 合金の摩擦係数

10、 20、 および 30 Nの負荷(直線滑り速度 2 ms) で連続測定した HAYNES® 282® 合金の摩擦係数

10、 20、 および 30 Nの負荷(直線滑り速度 2 m/s)
で連続測定した HAYNES® 25 合金の摩擦係数

10、 20、 および 30 Nの負荷(直線滑り速度 2 ms) で連続測定した HAYNES® 25 合金の摩擦係数

10、 20、 および 30 Nの負荷(直線滑り速度 2 m/s)
で連続測定した HAYNES® 230® 合金の摩擦係数

10、 20、 および 30 Nの負荷(直線滑り速度 2 ms) で連続測定した HAYNES® 230® 合金の摩擦係数

ヘインズインターナショナルが最初に使用したかじり試験機は単純な設計で、直径9.5 mmのピン(滑り面は円筒軸に垂直な平らな部分)を102 mm x 102 mm x 12.7 mmのブロックに対して、さまざまな荷重をかけた(圧縮モードでは、引張試験機を使用して負荷する)状態で(360°)回転させます。 この試験の主な問題は、滑り界面およびピンと機械の結合部での変形と破壊の事象に伴う荷重変動は別として、分析に主観が入ることでした。

分析には、滑り面の目視検査と、”かじり”が発生したかどうかの判断が含まれていました。 さまざまな荷重でテストを実行し、見かけの接触面積を使用して応力に変換し、閾値応力(かじりが観察された最低値)を決定しました。 この最初の試験では、当時の会社の製品ラインナップに含まれていた種々の耐摩耗コバルト基STELLITE®合金を区別できず、走査型電子顕微鏡は、目視検査で明らかになるのは損傷の大きさのみであることを示唆しました。すなわち、かじりがないとされた表面が、マイクロスケールで見たときにのみ損傷の同じ兆候を示しました。

この最初の試験の限界のいくつかを修正するために、(特に、同様の試験を行っていたが、時計回りと反時計回りの複数回転技術を使用していたArmcoのトライボロジー研究所を訪問した後に)変更が加えられました。 最も重要な変更は、表面形状測定器を使用して、目視検査をブロック表面の山から谷への振幅の変化を定量的に決めることに置き換えたことでした。 一般に、ピンとブロックの表面は同じ様な変化を示すように見えました; したがって、形状測定器に適した(エッジの落ち込みがない)ブロック表面のみを分析することが適切であると見なされました。 その他の変更には、(引張機からの荷重伝達に使用されるボールベアリングを保持するため)上部の大きなメスのコーン形状に合わせて、ピンをより大きな直径(15.9 mm)にしたこと、および時計方向と反時計方向に120°の円弧を10 ストローク回転する技法が含まれています。

余談ですが、ASTM規格(G98)の材料の耐かじり性に対する試験方法は、有力なASTM代表権を持っていたArmcoで使用されていたものと似ています。 ただし、ピン(規格ではボタンと呼ばれます)の1回転と、(コバルト基合金のランク付けには許容できないと見なされていた)かじり応力の閾値の主観的な判断が必要です。

1981年に導入された試験機、ならびに表面形状測定器を使用して取得された、(多くのヘインズインターナショナルの現在の鍛造製品ポートフォリオに対する)同一合金同士のかじりデータを、(それぞれが特定の負荷に対応する)次の3つの図に示します。

1361 kg の負荷に対するかじり損傷 (μm)
*時効硬化材
316L、 410 および 2205 は(200 μmを超える損傷を伴う)焼き付きを発生。 

2722 kg の負荷に対するかじり損傷 (μm)
*時効硬化材
316L、 410、および 2205 は、 2722 kg の負荷で試験せず。
17‐4 PH は、 (200 μmを超える損傷を伴い) 粗すぎて測定できず。

4082 kg の負荷に対するかじり損傷 (μm)
*時効硬化材
316L、 410 および 2205 は、4082 kg の負荷で試験せず。
17‐4 PH は、 (200 μmを超える損傷を伴い) 粗すぎて測定できず。
230® および HR‐120® 合金の値は 200 μm を超えた。

これらの図をレビューすると、以下のことがわかります:

  1. コバルト基の材料である6B合金、ULTIMET®合金、および25合金は、3つの負荷すべてで、同じ合金同士を組合わせると非常に高い耐かじり性を示します。
  2. NITRONIC®合金60(Armcoが開発した高シリコン、200タイプのオーステナイト系ステンレス鋼)は、最低負荷での耐かじり性が非常に高くなりますが、高負荷での耐かじり性は低くなります。
  3. ニッケルは、ULTIMET®合金(9 wt.% Ni)および25合金(10 wt.% Ni)と比較した188合金(22 wt.% Ni)の性能によって示されるように、コバルト合金の耐かじり性に悪影響を及ぼします。
  4. 試験されたニッケル基合金の中で、最も耐かじり性があるのは、時効硬化された718合金です; これは、他のガンマダブルプライムまたはガンマプライム強化型超合金にとって良い兆候です。
  5. ニッケル-クロム-モリブデン(Cタイプ)合金および625合金は、研究した荷重範囲にわたって、かじりに対して中程度の耐性を示します。
  6. NITRONIC®合金60とは別に、ステンレス鋼はかじりが非常に起こりやすいです; 実際、時効硬化した17-4 PH合金を除いて、ステンレス鋼は非常に強く結合する傾向があるため、同一合金同士の組み合わせで試験中に焼き付きます(このため、高負荷での試験は考えもされませんでした)。

対向面の材料が異なる影響については、鍛造ULTIMET®合金に対して次の図に示されています。 これらすべての試験で、ピンはULTIMET®の棒材から作成され、ブロックは(x軸に沿って示されている)対向面材料のプレートから作成されました。 ULTIMET®合金は、かじりの点に関して多くの異なる材料と互換性があります; これは、他のコバルト合金には必ずしも当てはまりません。304および410ステンレス鋼の場合を除いて、損傷の程度に対する負荷の影響は強くないことに注意してください。

ULTIMET®合金は、かじりの点に関して多くの異なる材料と互換性があります

耐摩耗性コバルト合金の多くの用途には(重要な表面の)オーバーレイ溶接が含まれるという事実を認識した上で、次の図は、ガスタングステンアーク(または TIG)溶接を用いたときの、ULTIMET®溶接の耐かじり性に対する希釈の影響を示しています。 これらのデータ(Crook, 1993) は、組成が既知で均質な”全溶接金属”サンプルを作成するために、事前に混合した溶接消耗品の製作して冷却した銅ブロック上に付着させるという、通常とは異なるアプローチを使って作成されました。

希釈の効果は基材のタイプに依存するという事実を認識して、2つの組成が異なる材料を選択してULTIMET®合金との事前に混合させました。 これらは1040炭素鋼と316Lステンレス鋼でした。 研究のために選択された希釈レベル(9.1%および16.7%)に関して、これらは10:1および5:1の” オーバーレイ対基材”の比率を表します(希釈は溶接ビード内の基材のパーセンテージとして定義されます)。 ULTIMET®合金の未希釈サンプルも準備され、試験されました。

予混合した溶接消耗品(直径4.8mmの溶接棒)を作るために、高周波炉とオーバーヘッド型吸引鋳造システムが使用されました。 装入材は(ULTIMET®合金の場合は)鍛造ビレット、および(炭素鋼とステンレス鋼の場合は)鍛造プレートの切断片でした。

これらのデータから、希釈(9.1%および16.7%レベルで、低から中程度と見なされます)がULTIMET®合金の耐かじり性にほとんど影響を与えないことが明らかです。

希釈された、ULTIMET® GTA 溶接オーバーレイの

1981年にGeneral Atomicで実施された前述の金属間滑り試験は、表面硬化(鍛造ではない)材料の性能に関するものでしたが、基材合金と温度の重要性を示していました。 それ故、結果のグラフは価値があり、以下に示されています。

Wear Rates Co, NI, FE (J)

Wear Rates at 500 Degrees (J)

最後に、ヘインズインターナショナルでの最新の摩耗試験の洗練度と精度を示すことが重要です。 最近
(Krishnamurthy and Crook, 2018)、摩耗合金基材としてのコバルトの利点を定量化、ならびに(ニッケル基合金の)ガンマプライム強化の利点を研究するために、かじり試験が行われました。 これを達成するために、HAYNES® 25、230®、および282®合金を比較しました。 広域レーザーを使用した三次元測定システムを使用して作成した結果を、次の棒グラフに示します。 これらには、2722 kg(6000 lb)の負荷と1981年のマルチストローク手順が使用されました。

ブロックの傷跡の粗さ, μm

ブロックの傷跡の粗さ, µm 対316L ステンレス鋼ブロック

これらのチャートから、次のことが明らかです:

  1. (鍛造合金基としての)コバルトは、ブロックの傷を山から谷までの粗さとして、または二乗平均平方根粗さとして測定したいずれの場合でも、ニッケルよりも耐かじり性がはるかに高くなります。
  2. これは、同一材料の組み合わせの場合と対向面が316Lの場合に適用されます。
  3. ガンマプライム強化は、同一材料の組み合わせの場合と対316Lステンレス鋼の両方で、高温ニッケル合金の耐かじり性に非常に有益です。

重要なことに、上記の棒グラフの値は、(以前のように)2つの直径に沿ってスタイラスを使って読み取った値ではなく、傷跡領域全体にわたってレーザーを使って読み取った値を表しています。また、すべての組み合わせを2回テストし、結果を平均しました。

次に示す最後の図は、HAYNES® 230®ブロックの傷跡のレーザー生成画像(1500倍に拡大)で、表面の特徴の高さと深さを示すために色分けしています。

Laser-generated image of HAYNES® 230® block scar

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