主な特徴

”湿式”リン酸に対する並外れた耐性をもったニッケル合金

HASTELLOY® G-35®合金 (UNS N06035)は、肥料の製造に使用される”湿式”リン酸(P2O5)に耐
えるように設計されています。実環境での対応策の試験では、G-35®合金が、この酸中において
他の金属材料よりはるかに優れていることを示しています。また、この合金は、”湿式”リン酸を濃
縮するために使用される蒸発器の堆積物下で問題になる可能性がある、塩化物の存在下での局
所的な腐食に耐えるようにも設計されています。更に、G-35®合金は、伝統的に”湿式”リン酸中で
使用されているステンレス鋼およびニッケル-クロム-鉄合金よりも、ずっと塩化物誘発応力腐食
割れを起こしにくい合金です。

クロム含有量が非常に高いため、G-35®合金は、硝酸などの他の酸化性酸や硝酸を含む混合物
に対して極めて耐性があります。この合金はモリブデンをかなりの量含んでいることから、他の
ニッケル-クロム-モリブデン合金とは異なり、還元酸に対して適度な耐性があり、高温の水酸化
ナトリウム中の”脱成分腐食”に対して非常に耐性があります。

HASTELLOY® G-35®合金は、厚板、薄板、帯板、ビレット、棒、ワイヤ、パイプ、チューブ、および
被覆アーク溶接棒の形で入手できます。用途には P2O5 蒸発器のチューブなどがあります。1

*この合金に関して技術的なご質問がある場合は、当社の技術支援チームにご連絡ください。

標準組成

重量 %
ニッケル:Ni Balance
コバルト:Co 1 max.
クロム:Cr 33.2
モリブデン:Mo 8.1
タングステン:W 0.6 max.
鉄:Fe 2 max.
マンガン:Mn 0.5 max.
アルミニウム:Al 0.4 max.
ケイ素:Si 0.6 max.
炭素:C 0.05 max.
銅:Cu 0.3 max.

“湿式法“湿式” リン酸に対する耐性

リン鉱石と硫酸を反応させて作られる”湿式”リン酸(P2O5)は、農業化学肥料の主なリン源であ
る最も重要な工業用化学物質の1つです。製造された状態では多くの不純物を含み、他の主要
な反応生成物である硫酸カルシウムから分離するのにすすぎ水が大量に必要であるため、P2O5
の濃度は僅か約30%です。典型的な不純物には、未反応の硫酸、種々の金属イオン、フッ化物イ
オン、および塩化物イオンなどがあります。フッ化物イオンは金属イオンと錯体を形成する傾向
があり、したがって、”湿式”リン酸と金属材料との間の電気化学反応に大きく影響を及ぼす塩化
物イオンよりも問題は少ないです。粒状物質(例えば、ケイ素粒子)が”湿式”リン酸中に存在す
る可能性もあります。

金属材料は主に濃縮プロセスで使用され、”湿式”リン酸は金属チューブを含む一連の蒸発ス
テップを通じて採取されます。典型的には、このプロセス中に P2O5の濃度は54%に上昇します。
リン酸の腐食性に対する濃度効果は、濃度が増加するにつれて不純物レベルが低下するという
事実によって幾分相殺されます。

以下の図はG-35®合金と競合材料を比較したもので、(フロリダ州の製造者によって供給され
た)3つの濃度(36、48、54%)の”湿式”リン酸の121℃(250℉)での試験に基づいています。

等腐食線図

ここに示す等腐食図の各々は、異なる酸濃度および温度で得られた多数の腐食速度値を用い
て作成されたものです。青の線は、試薬グレードの酸を用いた実験室試験に基づいて、予想腐
食速度が 0.1 mm/y (4 mil/年) となる酸濃度と温度の組み合わせを示しています。この線よりも
下では、腐食速度は 0.1 mm/y未満になると予想されます。同様に、赤の線は、予想腐食速度
が 0.5 mm/y (20 mil/年) となる酸濃度と温度の組み合わせを示しています。線よりも上では、予
想腐食速度は 0.5 mm/y を超えます。青と赤の線の間では、腐食速度は 0.1〜0.5 mm/y になる
と予想されます。

 

0.1 mm/y 腐食速度線の比較

HASTELLOY® G-35®合金の性能を他の材料の性能と比較するには、0.1 mm/y の腐食速度線
をプロットすると便利です。以下のグラフにおいて、G-35®合金の線は、塩酸および硫酸中にお
ける 625合金、254SMO合金、および 316Lステンレス鋼の線と比較されています。G-35®合金
の線は625合金の線に近いことに注意してください。塩酸濃度上限の20%では共沸混合物となる
ため、これ以上の濃度での腐食試験は信頼性が低下します。

選択腐食データ

臭化水素酸

濃度 Wt.% 50°F 75°F 100°F 125°F 150°F 175°F 200°F 225°F 沸騰
10°C 24°C 38°C 52°C 66°C 79°C 93°C 107°C
2.5 - - - - <0.01 - <0.01 - <0.01
5 - - - - <0.01 - <0.01 - <0.01
7.5 - - - - <0.01 - <0.01 - 0.02
10 - - - - <0.01 <0.01 1.12 - -
15 - - - - <0.01 0.41 1.89 - -
20 - - - <0.01 0.44 1.12 - - -
25 - - - - - - - - -
30 - 0.01 0.14 0.26 0.46 0.84 - - -
40 - - 0.10 0.17 0.31 0.48 - - -

すべての腐食速度はミリメートル/年(mm/y)で示しています;mil(ミル:1000分の1インチ)/年に変換するには、0.0254で除算します。
データは、腐食試験所の Job 17-04 からのものです。
すべての試験は、実験室条件下で試薬グレードの酸を用いて行われました;工業的利用に先立って、フィールドテストを実施することを推奨します。

塩酸

濃度 Wt.% 50°F 75°F 100°F 125°F 150°F 175°F 200°F 225°F 沸騰
10°C 24°C 38°C 52°C 66°C 79°C 93°C 107°C
1 - - - - - - - - 0.05
1.5 - - - - - - - - -
2 - - - - - - <0.01 - 0.05
2.5 - - - <0.01 <0.01 <0.01 17.83 - -
3 - - - - <0.01 <0.01 - - -
3.5 - - - - - - - - -
4 - - - - - - - - -
4.5 - - - - - - - - -
5 - - <0.01 - <0.01 1.23 17.08 - -
7.5 - - <0.01 0.47 0.97 - - - -
10 - <0.01 0.17 1.49 - - - - -
15 0.09 0.19 0.52 - - - - - -
20 0.08 0.15 0.42 - - - - - -

すべての腐食速度はミリメートル/年(mm/y)で示しています;mil(ミル:1000分の1インチ)/年に変換するには、0.0254で除算します。
データは、腐食試験所の Job 44-02 からのものです。
すべての試験は、実験室条件下で試薬グレードの酸を用いて行われました;工業的利用に先立って、フィールドテストを実施することを推奨します。

硝酸

濃度 Wt.% 50°F 75°F 100°F 125°F 150°F 175°F 200°F 225°F 沸騰
10°C 24°C 38°C 52°C 66°C 79°C 93°C 107°C
10 - - - - - - - - -
20 - - - - - - - - <0.01
30 - - - - - - - - -
40 - - - - - - - - 0.01
50 - - - - - - - - 0.03
60 - - - - - - - - 0.06
65 - - - - - - - - 0.07
70 - - - - - - - - 0.10

すべての腐食速度はミリメートル/年(mm/y)で示しています;mil(ミル:1000分の1インチ)/年に変換するには、0.0254で除算します。
データは、腐食試験所の Job 6-03 からのものです。
すべての試験は、実験室条件下で試薬グレードの酸を用いて行われました;工業的利用に先立って、フィールドテストを実施することを推奨します。

リン酸

濃度 Wt.% 125°F 150°F 175°F 200°F 225°F 250°F 275°F 300°F 沸騰
52°C 66°C 79°C 93°C 107°C 121°C 135°C 149°C
50 - - - - - - - - 0.01
60 - - - - - - - - 0.01
65 - - - - - - - - 0.17
70 - - - - 0.01 0.09 - - 0.11
75 - - - - - 0.12 - - 0.30
80 - - - - 0.07 0.12 0.37 - 0.42
85 - - - - 0.07 0.14 0.31 0.71 0.99

すべての腐食速度はミリメートル/年(mm/y)で示しています;mil(ミル:1000分の1インチ)/年に変換するには、0.0254で除算します。
データは、腐食試験所の Job 5-03 および 30-04 からのものです。
すべての試験は、実験室条件下で試薬グレードの酸を用いて行われました;工業的利用に先立って、フィールドテストを実施することを推奨します。

硫酸

濃度 Wt.% 75°F 100°F 125°F 150°F 175°F 200°F 225°F 250°F 275°F 300°F 350°F 沸騰
24°C 38°C 52°C 66°C 79°C 93°C 107°C 121°C 135°C 149°C 177°C
1 - - - - - - - - - - - -
2 - - - - - - - - - - - -
3 - - - - - - - - - - - -
4 - - - - - - - - - - - -
5 - - - - - - - - - - - 0.07
10 - - - - - <0.01 - - - - - 0.11
20 - - - - - 0.01 - - - - - 0.59
30 - - - - <0.01 2.62 - - - - - -
40 - - - <0.01 <0.01 5.41 - - - - - -
50 - - - <0.01 2.30 - - - - - - -
60 - - - <0.01 2.45 - - - - - - -
70 - <0.01 0.32 1.62 - - - - - - - -
80 - <0.01 <0.01 2.54 - - - - - - - -
90 - <0.01 0.54 3.12 - - - - - - - -
96 - <0.01 0.50 2.84 - - - - - - - -

すべての腐食速度はミリメートル/年(mm/y)で示しています;mil(ミル:1000分の1インチ)/年に変換するには、0.0254で除算します。
データは、腐食試験所の Job 45-02 からのものです。
すべての試験は、実験室条件下で試薬グレードの酸を用いて行われました;工業的利用に先立って、フィールドテストを実施することを推奨します。

選択腐食データ (試薬グレード溶液、mm/y)

化学物質 濃度 wt.% 100°F 125°F 150°F 175°F 200°F 沸騰
38°C 52°C 66°C 79°C 93°C
酢酸 99 - - - - - <0.01
クロム酸 10 - - 0.15 - - -
20 - - 0.85 - - -
ギ酸 88 - - - - - 0.07
臭化水素酸 2.5 - - <0.01 - <0.01 <0.01
5 - - <0.01 - <0.01 <0.01
7.5 - - <0.01 - <0.01 0.02
10 - - <0.01 <0.01 1.12 -
15 - - <0.01 0.42 1.89 -
20 - <0.01 0.44 1.12 - -
30 0.14 0.26 0.46 0.84 - -
40 0.10 0.17 0.31 0.48 - -
塩酸 1 - - - - - 0.05
2 - - - - <0.01 0.05
2.5 - <0.01 <0.01 <0.01 17.83 -
3 - - <0.01 <0.01 - -
5 <0.01 - <0.01 1.23 - -
7.5 <0.01 0.47 0.97 - - -
10 0.17 1.49 - - - -
15 0.52 - - - - -
20 0.42 - - - - -
硝酸 20 - - - - - <0.01
40 - - - - - 0.01
50 - - - - - 0.03
60 - - - - - 0.06
65 - - - - - 0.07
70 - - - - - 0.10
リン酸 50 - - - - - 0.01
60 - - - - - 0.01
70 - - - - - 0.11
75 - - - - - 0.30
80 - - - - - 0.42
硫酸 10 - - - - <0.01 0.11
20 - - - - 0.01 0.59
30 - - - <0.01 2.62 -
40 - - <0.01 <0.01 - -
50 - - <0.01 2.30 - -
60 - - <0.01 2.45 - -
70 <0.01 0.32 1.62 - - -
80 <0.01 <0.01 2.54 - - -
90 <0.01 0.54 3.12 - - -
96 <0.01 0.50 2.84 - - -

耐孔食および隙間腐食性

HASTELLOY® G-35®合金は、幾つかのオーステナイト系ステンレス鋼に特に発生しやすい腐食形態である塩化物誘起孔食および隙間腐食に対して高い耐性を示します。合金の耐孔食および隙間腐食性を評価するには、ASTM規格 G48で定義されている手順に従って、6 wt% 塩化第二鉄酸性溶液中の臨界孔食温度および臨界隙間腐食温度を測定することが通例です。測定された温度は、この溶液中で72時間以内に孔食および隙間腐食が発生する最低温度です。

合金
6% FeCl3 酸性溶液中の 臨界孔食温度
6% FeCl3 酸性溶液中の 臨界隙間腐食温度
°F °C °F °C
316L 59 15 32 0
254SMO 140 60 86 30
28 113 45 64 17.5
31 163 72.5 109 42.5
G-30® 131 55 77 25
G-35® 203 95 113 45
625 212 100 104 40

耐応力腐食割れ性

ニッケル合金の主な特性の1つは、耐塩化物応力腐食割れ性です。この非常に破壊的な腐食に
対する材料の耐性を評価するための一般的な方法は、典型的にはU字型に曲げて応力をかけた
サンプルを沸騰45%塩化マグネシウムに浸けることです(ASTM規格 G36)。以下の結果から明ら
かなように、G-35®合金は、比較対象のオーステナイト系ステンレス鋼よりも、この形態の腐食に
対してはるかに耐性があります。試験は1,008時間(6週間)後に停止しました。

合金 割れが発生するまでの時間
316L 2 h
254SMO 24 h
28 36 h
31 36 h
G-30® 168 h
G-35® 1,008 hで割れ無し
625 1,008 hで割れ無し

溶接部の耐食性

溶接部の耐食性を評価するために、Haynes International では、ガスメタルアーク(MIG)のマル
チパス溶接により製作した十字型組立品の四分円から切り取った全溶接金属サンプルを用い
て試験しました。 興味深いことに、主要な無機酸に対するG-35®合金の全溶接金属サンプル
の耐食性は、鍛造母材の耐食性に近く、濃硫酸中では母材を上回りさえします。

化学物質 濃度 温度 腐食速度
wt.% °F °C 溶接金属 鍛造母材
mpy mm/y mpy mm/y
H2SO4
30 150 66 <0.4 <0.01 0.4 0.01
H2SO4
50 150 66 <0.4 <0.01 <0.4 <0.01
H2SO4
70 150 66 56.3 1.43 63.8 1.62
H2SO4
90 150 66 66.5 1.69 122.8 3.12
HCl 5 100 38 <0.4 <0.01 <0.4 <0.01
HCl 10 100 38 9.4 0.24 6.7 0.17
HCl 15 100 38 22.0 0.56 20.5 0.52
HCl 20 100 38 17.7 0.45 16.5 0.42
HNO3
70 Boiling 4.7 0.12 3.9 0.10

物理的特性

物理的特性 英国単位 メートル単位
密度 RT
0.297 lb/in3
RT
8.22 g/cm3
電気抵抗 RT 46.5 μohm.in RT 1.18 μohm.m
200°F 46.8 μohm.in 100°C 1.19 μohm.m
400°F 47.4 μohm.in 200°C 1.20 μohm.m
600°F 47.7 μohm.in 300°C 1.21 μohm.m
800°F 48.2 μohm.in 400°C 1.22 μohm.m
1000°F 49.0 μohm.in 500°C 1.24 μohm.m
1200°F 49.4 μohm.in 600°C 1.25 μohm.m
熱伝導率 RT
70 Btu.in/h.ft2.°F
RT 10 W/m.°C
200°F
82 Btu.in/h.ft2.°F
100°C 12 W/m.°C
400°F
98 Btu.in/h.ft2.°F
200°C 14 W/m.°C
600°F
113 Btu.in/h.ft2.°F
300°C 16 W/m.°C
800°F
127 Btu.in/h.ft2.°F
400°C 18 W/m.°C
1000°F
143 Btu.in/h.ft2.°F
500°C 19 W/m.°C
- - 600°C 23 W/m.°C
平均熱膨張係数 77-200°F 6.8 μin/in.°F 21-100°C 12.3 μm/m.°C
77-400°F 7.0 μin/in.°F 21-200°C 12.6 μm/m.°C
77-600°F 7.4 μin/in.°F 21-300°C 13.2 μm/m.°C
77-800°F 7.5 μin/in.°F 21-400°C 13.4 μm/m.°C
77-1000°F 7.7 μin/in.°F 21-500°C 13.6 μm/m.°C
- - 21-600°C 14.1 μm/m.°C
熱拡散率 RT
0.11 ft2/h
RT
0.028 cm2/s
200°F
0.12 ft2/h
100°C
0.031 cm2/s
400°F
0.13 ft2/h
200°C
0.034 cm2/s
600°F
0.15 ft2/h
300°C
0.038 cm2/s
800°F
0.17 ft2/h
400°C
0.042 cm2/s
1000°F
0.18 ft2/h
500°C
0.045 cm2/s
- - 600°C
0.048 cm2/s
比熱 RT 0.11 Btu/lb.°F RT 450 J/kg.°C
200°F 0.11 Btu/lb.°F 100°C 470 J/kg.°C
400°F 0.12 Btu/lb.°F 200°C 490 J/kg.°C
600°F 0.12 Btu/lb.°F 300°C 510 J/kg.°C
800°F 0.13 Btu/lb.°F 400°C 530 J/kg.°C
1000°F 0.13 Btu/lb.°F 500°C 530 J/kg.°C
- - 600°C 600 J/kg.°C
動弾性率 RT
29.6 x 106psi
RT 204 GPa
600°F
27.4 x 106psi
300°C 190 GPa
800°F
26.5 x 106psi
400°C 184 GPa
1000°F
25.7 x 106psi
500°C 179 GPa
1200°F
24.7 x 106psi
600°C 174 GPa
溶融温度 2430-2482°F - 1332-1361°C -

RT= 室温

衝撃強さ

試験温度 衝撃強さ
°F °C ft-lbf J
RT RT 371 503
-320 -196 461 625

限られたデータ
衝撃強さは、ミルアニールしたプレート(厚板)を機械加工して製作したシャルピー V-ノッチ試験片
を用いて取得しました。

引張り強さおよび伸び

形態 板厚/丸棒直径 試験温度 0.2% 耐力 極限引張強さ 伸び
in mm °F °C ksi MPa ksi MPa %
薄板 0.125 3.2 RT RT 50 345 107 738 60
薄板 0.125 3.2 200 93 43 296 101 696 63
薄板 0.125 3.2 400 204 36 248 93 641 64
薄板 0.125 3.2 600 316 31 214 89 614 70
薄板 0.125 3.2 800 427 30 207 86 593 74
薄板 0.125 3.2 1000 538 27 186 80 552 68
薄板 0.125 3.2 1200 649 26 179 75 517 68
厚板 0.5 12.7 RT RT 46 317 100 689 72
厚板 0.5 12.7 200 93 41 283 97 669 74
厚板 0.5 12.7 400 204 33 228 88 607 75
厚板 0.5 12.7 600 316 29 200 82 565 71
厚板 0.5 12.7 800 427 30 207 78 538 77
厚板 0.5 12.7 1000 538 26 179 72 496 75
厚板 0.5 12.7 1200 649 24 165 68 469 74
丸棒 1 25.4 RT RT 46 317 103 710 66
丸棒 1 25.4 200 93 41 283 98 676 70
丸棒 1 25.4 400 204 35 241 89 614 71
丸棒 1 25.4 600 316 30 207 84 579 71
丸棒 1 25.4 800 427 31 214 81 558 73
丸棒 1 25.4 1000 538 28 193 75 517 72
丸棒 1 25.4 1200 649 23 159 69 476 71

RT= 室温

硬度

形態 硬さ, HRBW 典型的な ASTM 結晶粒度
薄板 87 3.5 - 5
厚板 87 2 - 4.5
丸棒 82 1 - 4

試料は、全て溶体化処理した状態で試験。
HRBW = ロックウェル硬さ “B”, タングステンカーバイドボール「圧子。

溶接および加工

HASTELLOY® G-35®合金は、ガスメタルアーク溶接(GMA/MIG)、ガスタングステンアーク溶接
(GTA/TIG)、およびシールドメタルアーク溶接(SMA/Stick)に非常に適しています。これらの溶接に使用する同一組成の溶加金属(すなわち、ソリッドワイヤおよび被覆アーク溶接棒)を入手することができ、溶接のガイドラインが、“溶接および加工”のパンフレットに記載されています。

HASTELLOY® G-35®合金の鍛造製品は、指定のない限り、ミルアニール(MA)した状態で供給されます。この溶体化処理手順は、合金の耐食性と延性を最適化するように設定されています。の熱間成形作業した後はすべて、最適な特性を回復させるために、材料を再アニールする必要があります。また、この合金は、7%以上の外面の繊維伸びを生じる冷間成形作業の後にも再アニールしなければなりません。HASTELLOY® G-35®合金のアニーリング温度は1121℃(2050℉)で、水冷を推奨します(10mm(0.375インチ)より薄い構造の場合は急速空冷が可能です)。アニーリング時の保持時間は、構造の厚さに依存しますが、10~30分を推奨します(より厚い構造の場合は、30分一杯必要です)。HASTELLOY® G-35®合金の熱処理に関するもっと詳細な情報は、”溶接および加工”のパンフレット に記載されています。

HASTELLOY® G-35®合金は熱間鍛造、熱間圧延、熱間据え込み鍛造、熱間押出し、および熱間成形することができます。しかしながら、オーステナイト系ステンレス鋼に比べてひずみやひずみ速度に対してより敏感であり、熱間加工温度範囲が非常に狭くなっています。たとえば、熱間鍛造の推奨開始温度は1204℃(2200℉)で、推奨最終温度は954℃(1750℉)です。”溶接および加
工”のパンフレットに記載しているように、適度な板厚減少と頻繁な再加熱が最良の結果をもたらします。また、このパンフレットでは、HASTELLOY®合金の冷間成形、スピニング加工、ドロップハンマ、打ち抜き、およびせん断のガイドラインも提供しています。G-35®合金は、ほとんどのオーステナイト系ステンレス鋼よりも剛性が高く、冷間成形時にはより多くのエネルギが必要です。ま
た、G-35®合金は、ほとんどのオーステナイト系ステンレス鋼よりも容易に加工硬化し、中間ア
ニールを伴った数段階の冷間加工が必要になる場合があります。

冷間加工は、通常、HASTELLOY® G-35®合金の耐全面腐食性、および耐塩化物誘発孔食および隙間腐食性に影響しませんが、耐応力腐食割れ性に影響する可能性があります。したがって、最適な耐食性を得るためには、(7%以上の外面の繊維伸びをした)冷間加工部品は、再アニールすることが重要です。

溶接物に対する引張データ

溶接方法 形態 試験温度 0.2% 耐力 極限引張強さ 伸び
°F °C ksi MPa ksi MPa   %
ガス タングステン アーク溶接 (GTAW) 12.7 mm/0.5 in 厚さの溶接した板 から採った横方向 サンプル RT RT  63.5  438  101.0  696   44.0
500 260  44.9  310  79.0  545   40.0
1000 538  36.1  249  65.0  448   37.0
シナジックガス メタルアーク 溶接 (GMAW) 12.7 mm/0.5 in 厚さの溶接した板 から採った横方向 サンプル RT  RT  66.5  459  105.0  724   31.5
500  260  48.6  335  80.5  555   43.0
1000  538  35.7  246  72.7  501   51.0
十字型から採った 直径12.7 mm/0.5 in の全溶接金属 のサンプル RT  RT  70.5  486  101.0  696   43.0
500  560  48.8  336  78.0  538   46.0
1000  238  43.8  302  64.0  441   42.0

溶接物に対するシャルピー V-ノッチ 衝撃データ

溶接方法 形態 ノッチの位置 試験温度 衝撃強さ
°F  °C   ft.lbf  J
シナジックガス メタルアーク 溶接 (GMAW) 12.7 mm/0.5 in 厚さの溶接した板 から採った横方向 サンプル 溶接の真ん中 RT  RT  201  273 
-320  -196  153  207 
熱影響領域 RT  RT  >264  >358 
-320  -196  >264  >358

時効処理した溶接物に対する室温シャルピー V-ノッチデータ
(シナジックガスメタルアーク溶接、12.7 mm 厚さの溶接した板から採った横方向サンプル)

ノッチの位置 時効時間 時効温度 衝撃強さ
ºF  ºC  ft.lbf 
溶接の真ん中 2000  800  427  223  302 
溶接の真ん中 2000  900  482  219  297 
溶接の真ん中 2000  1000  538  224  304 
溶接の真ん中 2000  1100  593  125  169 
溶接の真ん中 2000  1200  649  79  107 

適合規格および基準

規格

HASTELLOY® G-35® 合金 (N06035)
薄板、厚板および帯板 SB 575/B 575P= 43
ビレット、ロッドおよび棒 SB 574/B 574B 472P= 43
被覆アーク溶接棒 SFA 5.11/ A 5.11 (ENiCrMo-22) F= 43
裸溶接棒およびワイヤ SFA 5.14/ A 5.14 (ERNiCrMo-22) F= 43
継ぎ目なしパイプおよびチューブ SB 622/B 622P= 43
溶接パイプおよびチューブ SB 619/B 619SB 626/B 626P= 43
継手類 SB 366/B 366SB 462/B 462P= 43
鍛造材 SB 564/B 564SB 462/B 462P = 43
DIN No. 2.4643 NiCr33Mo8
TÜV -
その他 NACE MR0175 ISO 15156ASME Code Case No. 2484

基準

HASTELLOY® G-35® 合金 (N06035)
ASME Section l -
Section lll Class 1 -
Class 2 -
Class 3 -
Section Vlll Div. 1
800°F (427°C)1
Div. 2 -
Section Xll -
B16.5
800°F (427°C)2
B16.34
800°F (427°C)2
B31.1 -
B31.3 800°F (427°C)
VdTÜV (doc #) -

1承認された材料形態: 厚板、薄板、棒、鍛造材、継手類、溶接パイプ/チューブ、継ぎ目なしパイプ/チューブ
2認された材料形態: 厚板、棒、鍛造材、継ぎ目なしパイプ/チューブ

免責事項

Haynes Internationalは、本パンフレットに記載されているデータの精度・正確性を保証するために妥当な努力を払っておりますが、データの精度、正確性、あるいは信頼性について、いかなる表明も保証もいたしません。すべてのデータは一般的な情報のみであり、設計上のアドバイスを提供するものではありません。ここに開示されている合金特性は、主にHaynes International、Inc.によって行われた作業に基づいており、場合によっては公開文献の情報によって補足されているため、そのような試験の結果のみを示すものであり、保証最大値または最小値と考えてはなりません。実際の使用条件で特定の合金を試験して特定の目的に対する適合性を判断するのはユーザーの責任です。特定の製品に含まれる特定の元素濃度とその潜在的な健康への影響については、Haynes International、Inc.が提供する安全データシートを参照してください。特記のない限り、すべての商標はHaynes International、Inc.が所有しています。

合金パンフレット

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