主な特徴

幅広い腐食性化学物質中での50年の実証された性能

HASTELLOY® C-276 合金 (UNS N10276) は、(炭素とケイ素の含有量を極端に低くすることによって)溶接に対する懸念を軽減した、最初の鍛造ニッケル-クロム-モリブデン材料です。このような特性を持った合金として化学プロセスおよび関連業界で広く受け入れられており、今では膨大な数の腐食性化学物質中で50年の実証された性能実績があります。

他のニッケル合金と同様に、この合金は延性があり、成形および溶接が容易で、塩化物含有溶液中で(オーステナイト系ステンレス鋼に起こりやすい劣化形態である)応力腐食割れに対して優れた耐性を有しています。クロムおよびモリブデン含有量が高いため、この合金は酸化性および非酸化性の両方の酸に耐えることができ、塩化物およびその他のハロゲン化物の存在下での孔食や隙間腐食に対して優れた耐性を示します。さらに、この合金は、サワー油田環境での硫化物応力腐食割れおよび応力腐食割れに対して非常に耐性があります。

HASTELLOY® C-276 合金は、厚板、薄板、帯板、ビレット、棒、ワイヤ、パイプ、チューブ、および被覆アーク溶接棒の形態で入手できます。代表的な化学プロセス産業(CPI)用途には、反応器、熱交換器、およびカラムなどがあります。

*この合金に関して技術的なご質問がある場合は、当社の技術支援チームにご連絡ください。

標準組成

重量 %
ニッケル:Ni 57 Balance
コバルト:Co 2.5 max. 
クロム:Cr 16
モリブデン:Mo 16
鉄:Fe 5
タングステン:W 4
マンガン:Mn 1 max.
バナジウム:V 0.35 max.
ケイ素:Si 0.08 max.
炭素:C 0.01 max.
銅:Cu 0.5 max. 

等腐食線図

ここに示す各々の等腐食図は、異なる酸濃度および温度で得られた多数の腐食速度値を用いて作成されたものです。青の線は、試薬グレードの酸を用いた実験室試験に基づいて、予想腐食速度が0.1 mm/y (4 mil/年) となる酸濃度と温度の組み合わせを示しています。同様に、赤の線は、予想腐食速度が 0.5 mm/y (20 mil/年) となる酸濃度と温度の組み合わせを示しています。線よりも上では、予想腐食速度は 0.5 mm/y を超えます。青と赤の線の間では、腐食速度は 0.1〜0.5 mm/y になると予想されます。

腐食速度の比較

HASTELLOY®C-276合金の性能を他の材料の性能と比較するには、0.1 mm/y の腐食速度線を描画するのが有用です。以下のグラフにおいて、C-276 合金の線は、塩酸および硫酸中における2つの一般的なオーステナイト系ステンレス鋼(316L および254SMO)、および低モリブデンニッケル合金(625合金)の線と比較されています。約5%以上の塩酸濃度では、C-276合金はステンレス鋼に比べて飛躍的な改善をもたらし、もっと高濃度の両方の酸に対しては、625合金よりもっと大きな耐食性を提供します。塩酸は20%の濃度限界では共沸混合物となり、これを超えた条件での高温腐食試験は信頼性が低くなります。

選択腐食データ

臭化水素酸

濃度 Wt.% 50°F 75°F 100°F 125°F 150°F 175°F 200°F 225°F 沸騰
10°C 24°C 38°C 52°C 66°C 79°C 93°C 107°C
2.5 - - - - - - - - 0.13
5 - - - - - 0.01 0.15 - 0.78
7.5 - - - - 0.01 0.14 0.73 - -
10 - - - - 0.02 0.51 0.89 - -
15 - - - 0.01 0.34 0.57 - - -
20 - - <0.01 0.25 0.37 0.51 - - -
25 - - 0.11 0.20 0.29 0.45 0.75 - -
30 - - 0.12 0.20 0.28 0.44 0.75 - -
40 - - 0.08 0.13 0.21 0.30 0.53 - -

すべての腐食速度はミリメートル/年(mm/y)で示しています;mil(ミル:1000分の1インチ)/年に変換するには、0.0254で除算します。
データは、腐食試験所の Job 15-02、27-02、および 37-02 からのものです。
すべての試験は、実験室条件下で試薬グレードの酸を用いて行われました;工業的利用に先立って、フィールドテストを実施することを推奨します。

塩酸

濃度 Wt.% 50°F 75°F 100°F 125°F 150°F 175°F 200°F 225°F 沸騰
10°C 24°C 38°C 52°C 66°C 79°C 93°C 107°C
1 - - - - - - - - 0.33
1.5 - - - - - - - - 0.70
2 - - - - 0.01 0.02 0.57 - 1.26
2.5 - - - - - 0.03 0.89 - 1.86
3 - - - - 0.01 0.42 1.18 - 2.34
3.5 - - - - - 0.57 1.26 - 2.43
4 - - - - 0.02 0.67 1.37 - 2.92
4.5 - - - - 0.37 0.68 1.72 - 3.34
5 - - - 0.02 0.31 0.75 1.25 - 3.63
7.5 - - 0.03 0.31 0.53 0.94 - - -
10 - - 0.17 0.32 0.46 1.18 - - -
15 - - 0.19 0.33 0.54 1.21 - - -
20 - - 0.14 0.29 0.55 1.10 - - -

すべての腐食速度はミリメートル/年(mm/y)で示しています;mil(ミル:1000分の1インチ)/年に変換するには、0.0254で除算します。
データは、腐食試験所の Job 8-95、11-95、18-95、36-95、3-96、9-96、16-96 および 25-96 からのものです。
すべての試験は、実験室条件下で試薬グレードの酸を用いて行われました;工業的利用に先立って、フィールドテストを実施することを推奨します。

硝酸

濃度 Wt.% 50°F 75°F 100°F 125°F 150°F 175°F 200°F 225°F 沸騰
10°C 24°C 38°C 52°C 66°C 79°C 93°C 107°C
10 - - 0.01 - 0.03 - 0.06 - 0.26
20 - - - - 0.09 - 0.16 - 0.66
30 - - 0.02 - 0.14 0.17 0.41 - 1.52
40 - - - 0.05 0.20 0.38 0.88 - 4.42
50 - - 0.04 0.07 0.30 0.65 1.51 - -
60 - - 0.06 0.10 0.42 0.82 2.03 - 18.42
65 - - - - 0.41 - 2.53 - 22.12
70 - - 0.06 - 0.46 1.12 2.62 - -

すべての腐食速度はミリメートル/年(mm/y)で示しています;mil(ミル:1000分の1インチ)/年に変換するには、0.0254で除算します。
データは、腐食試験所の Job 1-74 および 19-97 からのものです。
すべての試験は、実験室条件下で試薬グレードの酸を用いて行われました;工業的利用に先立って、フィールドテストを実施することを推奨します。

リン酸

濃度 Wt.% 125°F 150°F 175°F 200°F 225°F 250°F 275°F 300°F 沸騰
52°C 66°C 79°C 93°C 107°C 121°C 135°C 149°C
50 - - 0.01 0.02 - - - - 0.18
60 - - 0.01 0.02 0.08 - - - 0.28
70 - - 0.01 0.02 0.08 0.08 - - 0.13
75 - - - - - - - - 1.29
80 - - 0.01 0.02 - 0.09 0.12 - 0.31
85 - - - - - 0.09 0.17 0.29 1.68

すべての腐食速度はミリメートル/年(mm/y)で示しています;mil(ミル:1000分の1インチ)/年に変換するには、0.0254で除算します。
データは、腐食試験所の Job 19-95 および 64-96 からのものです。
すべての試験は、実験室条件下で試薬グレードの酸を用いて行われました;工業的利用に先立って、フィールドテストを実施することを推奨します。

硫酸

濃度 Wt.% 75°F 100°F 125°F 150°F 175°F 200°F 225°F 250°F 275°F 300°F 350°F 沸騰
24°C 38°C 52°C 66°C 79°C 93°C 107°C 121°C 135°C 149°C 177°C
1 - - - - - - - - - - - -
2 - - - - - - - - - - - -
3 - - - - - - - - - - - -
4 - - - - - - - - - - - -
5 - - - - - - - - - - - -
10 - - - - 0.03 0.14 - - - - - 0.18
20 - - - - 0.05 0.40 - - - - - 0.49
30 - - - - 0.06 0.42 - - - - - 0.83
40 - - - - 0.19 0.48 1.02 - - - - 1.87
50 - - - 0.02 0.26 0.62 1.13 2.33 - - - 3.64
60 - - - 0.02 0.30 0.67 1.03 2.87 - - - 13.08
70 - - - 0.05 0.16 0.50 1.06 13.68 - - - -
80 - - - 0.04 0.14 0.60 2.73 5.66 - - - -
90 - - - 0.03 0.05 0.46 1.64 4.79 - - - -
96 - - - - 0.04 0.18 0.95 - - - - -

すべての腐食速度はミリメートル/年(mm/y)で示しています;mil(ミル:1000分の1インチ)/年に変換するには、0.0254で除算します。
データは、腐食試験所の Job 8-95、11-95、18-95、43-95、9-96、15-96 および 20-96 からのものです。
すべての試験は、実験室条件下で試薬グレードの酸を用いて行われました;工業的利用に先立って、フィールドテストを実施することを推奨します。

選択腐食データ (試薬グレード溶液、mm/y)

化学物質 濃度 wt.% 100°F 125°F 150°F 175°F 200°F 沸点
38°C 52°C 66°C 79°C 93°C
酢酸 99 - - - - - <0.01
クロム酸 10 - - 0.13 - - -
20 - - 0.53 - - -
ギ酸 88 - - - - - 0.04
臭化水素酸 2.5 - - - - - 0.13
5 - - - - - 0.78
7.5 - - 0.01 0.14 - -
10 - - 0.02 0.51 - -
15 - 0.01 0.34 0.57 - -
20 <0.01 0.25 0.37 0.51 - -
25 0.11 0.20 0.29 0.45 - -
30 0.12 0.20 0.28 0.44 - -
40 0.08 0.13 0.21 0.30 - -
塩酸 1 - - - - - 0.33
1.5 - - - - - 0.70
2 - - 0.01 0.02 - -
2.5 - - - 0.03 - -
3 - - 0.01 0.42 - -
3.5 - - - 0.57 - -
4 - - 0.02 0.67 - -
4.5 - - 0.37 0.68 - -
5 - 0.02 0.31 0.75 - -
7.5 0.03 0.31 0.53 0.94 - -
10 0.17 0.32 0.46 1.18 - -
15 0.19 0.33 0.54 1.21 - -
20 0.14 0.29 0.55 1.10 - -
フッ化水素酸* 5 - 0.34 - - - -
10 - 0.41 - - - -
20 - 0.48 - - - -
硝酸 10 - - 0.03 - 0.06 0.26
20 - - 0.09 - 0.16 0.66
30 - - 0.14 0.17 0.41 -
40 - - 0.20 0.38 0.88 -
50 - - 0.30 0.65 1.51 -
60 - - 0.42 0.82 2.03 -
65 - - 0.41 - 2.53 -
70 - - 0.46 - 2.62 -
リン酸 50 - - - 0.01 0.02 -
60 - - - 0.01 0.02 -
70 - - - 0.01 0.02 -
75 - - - - - -
80 - - - 0.01 0.02 -
85 - - - - - -
硫酸 10 - - - 0.03 0.14 0.18
20 - - - 0.05 0.40 0.49
30 - - - 0.06 0.42 0.83
40 - - - 0.19 0.48 -
50 - - 0.02 0.26 0.62 -
60 - - 0.02 0.30 0.67 -
70 - - 0.05 0.16 0.50 -
80 - - 0.04 0.14 0.60 -
90 - - 0.03 0.05 0.46 -
96 - - - 0.04 0.18 -

*フッ化水素酸はまた、ニッケル合金の内部腐食を誘発します;ここに記載した値は、外部腐食のみの値 です。

耐孔食および隙間腐食性

HASTELLOY® C-276 合金は、オーステナイト系ステンレス鋼に特に発生しやすい腐食形態である塩化物誘起孔食および隙間腐食に対して高い耐性を示します。孔食および隙間腐食に対する合金の耐性を評価するには、ASTM規格 G48で定義されている手順に従って、6 wt%塩化第二鉄酸性溶液中の臨界孔食温度および臨界隙間腐食温度を測定することが通例です。測定された温度は、この溶液中で72時間以内に孔食および隙間腐食が発生する最低温度です。比較のために、316L、254SMO、 625、およびC-276合金の値を以下に示します。

合金
6% FeCl3 酸性溶液中の 臨界孔食温度
6% FeCl3 酸性溶液中の 臨界隙間腐食温度
°F °C °F °C
316L 59 15 32 0
254SMO 140 60 86 30
625 212 100 104 40
C-276 302 150 131 55

他の塩化物含有環境、とりわけ Green Death 溶液(11.5% H2SO+ 1.2% HCl + 1% FeCl3 + 1% CuCl2) および Yellow Death 溶液(4% NaCl + 0.1% Fe2(SO4)3 + 0.021mol HCl)が、(24時間保持試験によって)様々な合金の耐孔食および隙間腐食性を比較するために用いられてきました。 Green Death 溶液では、C-276合金で孔食が観察された最低温度は沸点です。Yellow Death 溶液では、C-276合金は最高試験温度(150℃)でも孔食を生じませんでした。Yellow Death 溶液におけるC-276合金の臨界隙間腐食温度は60℃です。

耐応力腐食割れ性

ニッケル合金の主な特性の1つは、塩化物誘発応力腐食割れに対する耐性です。この非常に破壊的な腐食に対する材料の耐性を評価するための一般的な方法は、典型的には応力をかけたU字型曲げサンプルを沸騰45%塩化マグネシウムに浸けることです(ASTM規格 G36)。以下の結果から明らかなように、2つのニッケル合金、C-276 および 625 は、比較対象のオーステナイト系ステンレス鋼よりも、この形態の腐食に対してはるかに耐性があります。試験は1,008時間(6週間)後に停止しました。

合金 割れ発生までの時間
316L 2 h
254SMO 24 h
625 1,008 h で割れなし
C-276 1,008 h で割れなし

耐海水隙間腐食性

海水は、おそらく最も一般的な塩水溶液です。海上輸送や海上石油リグで遭遇するだけでなく、沿岸施設の冷却にも使用されています。下表に記載されているのは、ノースカロライナ州ライツヴィル ビーチにある LaQue 試験所において行われた米国海軍の研究の一部として作成(およびD.M. Aylor 等によって出版 ; Paper No. 329, CORROSION 99, NACE International, 11999)されたデータです。隙間試験は、29℃±3℃の、流れていない(静止した)海水と流れている海水の両方で行われました。各合金の2つのサンプル(AとB)を180日間静水中で試験し、同様に流水中で試験しました。各サンプルは、隙間腐食を起こす可能性がある箇所を2つ含んでいます。

合金 静水 流水
腐食した 箇所の数 最大腐食深さ、mm 腐食した 箇所の数 最大腐食深さ、mm
316L A:2, B:2 A:1.33, B:2.27 A:2, B:2 A:0.48, B:0.15
254SMO A:2, B:2 A:0.76, B:1.73 A:2, B:2 A:0.01, B:<0.01
625 A:1, B:2 A:0.18, B:0.04 A:2, B:2 A:<0.01, B:<0.01
C-276 A:1, B:1 A:0.10, B:0.13 A:0, B:0 A:0, B:0

溶接部の耐食性

溶接部の耐食性を評価するために、Haynes International では、ガスメタルアーク(MIG)のマルチパス溶接により全溶接した、十字型の組立品から切り取った四分円の金属サンプルを用いて試験しました。予想されるように、溶接ミクロ組織の不均質な性質は、(均一な鍛造製品よりも)大きい腐食速度をもたらします。それにもかかわらず、HASTELLOY® C-276 合金は、次の表に示すように、溶接形態であっても主要な無機酸に対して優れた耐性を示します:

化学物質 濃度 温度 腐食速度
wt.% °F °C 溶接金属 鍛造母材
mpy mm/y mpy mm/y
H2SO4
30 150 66 1.2 0.03 0.1 0.01
H2SO4
50 150 66 1.2 0.03 0.8 0.02
H2SO4
70 150 66 5.1 0.13 2.0 0.05
H2SO4
90 150 66 4.3 0.11 1.2 0.03
HCl 10 100 38 8.7 0.22 6.7 0.17
HCl 15 100 38 7.9 0.20 7.5 0.19
HCl 20 100 38 6.3 0.16 5.5 0.14

物理的特性

物理的特性 英国単位 メートル単位
密度 RT
0.321 lb/in3
RT
8.89 g/cm3
電気抵抗 RT 48.4 μohm.in RT 1.23 μohm.m
200°F 48.7 μohm.in 100°C 1.24 μohm.m
400°F 49.0 μohm.in 200°C 1.25 μohm.m
600°F 49.5 μohm.in 300°C 1.26 μohm.m
800°F 49.8 μohm.in 400°C 1.26 μohm.m
1000°F 50.6 μohm.in 500°C 1.28 μohm.m
- - 600°C 1.30 μohm.m
熱伝導率 100°F
71 Btu.in/h.ft2.°F
50°C 10.5 W/m.°C
200°F
77 Btu.in/h.ft2.°F
100°C 11.2 W/m.°C
400°F
90 Btu.in/h.ft2.°F
200°C 12.9 W/m.°C
600°F
104 Btu.in/h.ft2.°F
300°C 14.7 W/m.°C
800°F
117 Btu.in/h.ft2.°F
400°C 16.5 W/m.°C
1000°F
132 Btu.in/h.ft2.°F
500°C 18.3 W/m.°C
平均熱膨張係数 75-200°F 6.2 μin/in.°F 24-100°C 11.2 μm/m.°C
75-400°F 6.7 μin/in.°F 24-200°C 12.0 μm/m2.°C
77-600°F 7.1 μin/in.°F 24-300°C 12.7 μm/m.°C
77-800°F 7.3 μin/in.°F 24-400°C 13.1 μm/m.°C
77-1000°F 7.4 μin/in.°F 24-500°C 13.3 μm/m.°C
77-1100°F 7.8 μin/in.°F 24-600°C 13.8 μm/m.°C
透磁率 200 oersted 1.0002 15.9 kA/m 1.0002
比熱 RT 0.102 Btu/lb.°F RT 427 J/kg.°C
動弾性率 RT
29.8 x 106psi
RT 205 GPa
400°F
28.3 x 106psi
200°C 195 GPa
600°F
27.3 x 106psi
300°C 189 GPa
800°F
26.4 x 106psi
400°C 183 GPa
1000°F
25.5 x 106psi
500°C 178 GPa
溶融温度 2415-2500°F - 1323-1371°C -
ポアソン比 - - RT 0.31

RT= 室温

衝撃強さ

試験温度 衝撃強さ
°F °C ft-lbf J
RT RT 353 479
-320 -196 383 519

衝撃強さは、ミルアニールしたプレー^ト(厚板)を機械加工して作ったシャルピー V-ノッチ試験片を
用いて取得しました。

引張強さ および 伸び

形態 試験温度 厚さ 0.2% 耐力 極限引張強さ 伸び
°F °C in mm ksi MPa ksi MPa %
薄板 RT RT 0.078 2 51.6 356 114.9 792 61
薄板 400 204 0.078 2 42.0 290 100.6 694 59
薄板 600 316 0.078 2 35.9 248 98.8 681 68
薄板 800 427 0.078 2 32.7 225 94.3 650 67
薄板 400 204 0.094 2.4 39.9 275 101.0 696 58
薄板 600 316 0.094 2.4 33.5 231 97.6 673 64
薄板 800 427 0.094 2.4 29.7 205 93.5 645 64
薄板1 400 204 0.063-0.187 1.6-4.7 42.1 290 100.8 695 56
薄板2 600 316 0.063-0.187 1.6-4.7 37.7 260 97.0 669 64
薄板2 800 427 0.063-0.187 1.6-4.7 34.8 240 95.0 655 65
薄板2 1000 538 0.063-0.187 1.6-4.7 33.8 233 88.9 613 60
薄板2 400 204 0.188-1.0 4.8-25.4 38.2 263 98.9 682 61
薄板2 600 316 0.188-1.0 4.8-25.4 34.1 235 94.3 650 66
薄板2 800 427 0.188-1.0 4.8-25.4 32.7 225 91.5 631 60
薄板2 1000 538 0.188-1.0 4.8-25.4 32.8 226 87.2 601 59
厚板 RT RT 1.0 25.4 52.9 365 113.9 785 59
厚板 600 316 1.0 25.4 36.2 250 96.3 664 63
厚板 800 427 1.0 25.4 30.5 210 94.8 654 61

1: 25回試験の平均
2: 34-36回試験の平均
3: 9-11回試験の平均
RT= 室温

硬度

形態 硬さ, HRBW 典型的な ASTM 結晶粒度
薄板 88 3.5 - 6
厚板 88 1 - 5
丸棒 86 1 - 5

試料は、全て溶体化処理した状態で試験。
HRBW = ロックウェル硬さ “B”, タングステンカーバイドボール圧子。

溶接および加工

HASTELLOY® C-276 合金は、ガスメタルアーク溶接(GMA/MIG)、ガスタングステンアーク溶接 (GTA/TIG)、およびシールドメタルアーク溶接(SMA/Stick)に非常に適しています。これらの溶接に使用する母材と同一組成の溶加金属(すなわち、ソリッドワイヤおよび被覆アーク溶接棒)が入手可能で、溶接のガイドラインは、 “溶接および加工”のパンフレットに記載されています。

HASTELLOY® C-276 合金の鍛造製品は、指定のない限り、ミルアニール(MA)した状態で供給されます。この溶体化処理手順は、合金の耐食性および延性を最適化するように設定されています。熱間成形作業した後はすべて、最適な特性を回復させるために、材料を再アニールする必要があります。また、この合金は、7%以上の外面の繊維伸びを生じる冷間成形作業の後にも再アニールしなければなりません。HASTELLOY® C-276 合金のアニーリング温度は1121℃(2050℉)で、水冷を推奨します(10mm(0.375インチ)より薄い構造の場合は急速空冷が可能です)。アニーリング温度での保持時間は、構造の厚さに依存しますが、10~30分を推奨します(より厚い構造の場合は、30分一杯必要です)。HASTELLOY® C-276 合金の熱処理に関するもっと詳細な情報は、”溶接および加工”のパンフレットに記載されています。

HHASTELLOY® C-276 合金は熱間鍛造、熱間圧延、熱間据え込み鍛造、熱間押出し、および熱間成形することができます。しかしながら、オーステナイト系ステンレス鋼に比べてひずみやひずみ速度に対してより敏感であり、熱間加工温度範囲が非常に狭くなっています。たとえば、熱間鍛造の推奨開始温度は1232℃(2250℉)で、推奨仕上げ温度は954℃(1750℉)です。”溶接および加工”のパンフレットに記載しているように、適度な圧下率と頻繁な再加熱が最良の結果をもたらします。また、こ のパンフレットでは、冷間成形、スピニング加工、ドロップハンマ、打ち抜き、およびせん断のガイドラインも提供しています。 この合金は、ほとんどのオーステナイト系ステンレス鋼に比べて剛性が高く、冷間成形にはより多くのエネルギが必要です。また、HASTELLOY® C-276 合金は、ほとんどのオーステナイト系ステンレス鋼よりも容易に加工硬化し、中間アニールを伴った数段階の冷間加工が必要になる場合があります。

冷間加工は、通常、HASTELLOY® C-276 合金の耐全面腐食性、および耐塩化物誘発孔食および隙間腐食性に影響しませんが、耐応力腐食割れ性に影響する可能性があります。したがって、最適な腐食性能のためには、(7%以上の外面の繊維伸びをした)冷間加工部品は、再アニールすることが重要です。

適合規格および基準

規格

HASTELLOY® C-276 合金 (N10276, W10276)
薄板、厚板および帯板 SB 575/B 575P= 43
ビレット、ロッドおよび棒 SB 574/B 574P= 43
被覆アーク溶接棒 SFA 5.11/ A 5.11 (ENiCrMo-4)DIN 2.4887(EL-NiMo15Cr15W)F= 43
裸溶接棒およびワイヤ SFA 5.14/ A 5.14 (ERNiCrMo-4)DIN 2.4886(SG-NiMo16Cr16W)F= 43
継ぎ目なしパイプおよびチューブ SB 622/B 622P= 43
溶接パイプおよびチューブ SB 619/B 619P= 43
継手類 SB 366/B 366P= 43
鍛造材 SB 564/B 564P= 43
DIN 17744 No. 2.4819 NiMo16Cr15W
TÜV Werkstoffblatt 400Kennblatt 320Kennblatt 319
その他 NACE MR0175ISO 15156

基準

HASTELLOY® C-276 合金 (N10276, W10276)
ASME Section l
1000°F (538°C)1
Section lll Class 1 -
Class 2
800°F (427°C)2
Class 3
800°F (427°C)2
Section Vlll Div. 1
1250°F (677°C)3
Div. 2
1250°F (677°C)3
Section Xll
650°F (343°C)3
B16.5
1250°F (677°C)4
B16.34
1250°F (677°C)5
B31.1
1000°F (538°C)6
B31.3
1250°F (677°C)7
VdTÜV (doc #) 844°F (450°C)8,#400

1承認された材料形態: 厚板、薄板、棒、継手類、溶接パイプ/チューブ、継ぎ目なしパイプ/チューブ
2承認された材料形態: 厚板、薄板、棒、溶接パイプ/チューブ、継ぎ目なしパイプ/チューブ
3承認された材料形態: 厚板、薄板、棒、鍛造材、継手類、溶接パイプ/チューブ、継ぎ目なしパイプ/チューブ
4承認された材料形態: 厚板、鍛造材、継手類、ボルト類
5承認された材料形態: 厚板、棒、継手類、継ぎ目なしパイプ/チューブ、ボルト類
6承認された材料形態: 厚板、薄板、継手類、溶接パイプ/チューブ、継ぎ目なしパイプ/チューブ
7承認された材料形態: 厚板、薄板、鍛造材、継手類、溶接パイプ/チューブ、継ぎ目なしパイプ/チューブ
8承認された材料形態: 厚板、薄板、棒、鍛造材

免責事項

Haynes International, Inc. は、本パンフレットに記載されているデータの精度・正確性を保証するために妥当な努力を 払っておりますが、データの精度、正確性、あるいは信頼性について、いかなる表明も保証もいたしません。すべての データは、一般的な情報のみであり、設計上のアドバイスを提供するものではありません。ここに開示されている合金 特性は、主に Haynes International, Inc. によって行われた作業に基づいており、場合によっては公開文献の情報に よって補足されているため、そのような試験の結果のみを示すものであり、保証最大値または最小値と考えてはなり ません。実際の使用条件で特定の合金を試験して特定の目的に対する適合性を判断するのはユーザーの責任で す。

特定の製品に含まれる特定の元素濃度とその潜在的な健康への影響については、Haynes International, Inc. が提供 する安全データシートを参照してください。特記のない限り、すべての商標は Haynes International, Inc. が所有してい ます。

合金パンフレット

ダウンロード