主な特徴

MULTIMET® 合金(UNS R30155、W73155)は、1500℉(816℃)までの高応力と、2000℉(1093℃)までの中程度の応力を伴う用途にお薦めします。この合金には、優れた耐酸化性と良好な延性があり、容易に加工することができます。その高温特性は固有のものであり、時効硬化処理には依存しません。この合金の製造と使用は1940年代後半に遡ります。

この合金は、テールパイプやテールコーン、アフターバーナ部品、排気マニホールド、燃焼器、ター
ビンブレード、バケット(動翼)、およびノズル(静翼)などの多くの航空機用途に使用されています。また、優れた高温用ボルト材料であり、高温強度が重要な熱処理装置用途において経済的な構造
材料であることが証明されています。

MULTIMET® 合金は、酸化および還元の両方の条件下で、特定の媒体に対して優れた耐食性があ
ります。MULTIMET®合金は、溶体化処理すると、硝酸に対してステンレス鋼とほぼ同等の耐性が
あります。弱塩酸溶液に対しては、ステンレス鋼よりも優れた耐性を有しています。この合金は、室
温で全ての硫酸濃度に耐えます。

MULTIMET® 合金は、従来の方法で機械加工、鍛造、冷間成形することができます。この合金は、
様々なアーク溶接および抵抗溶接によって溶接することができます。

MULTIMET® 合金は、薄板(シート)、帯板、厚板(プレート)、ワイヤ、被覆アーク溶接棒、ビレット、砂型およびインベストメント鋳物として入手できます。 また、化学組成が保証された再溶解材の形
態でも入手できます。

MULTIMET® 合金のほとんどの鍛造品は、最適な特性を保証するために溶体化処理して出荷さ れます。薄板は、断面の厚さに応じた時間 2150℉(1177℃)で保持し、続いて、急速空冷または水冷して溶体化処理されます。棒材および厚板(1/4インチ以上)は、通常、2150℉(1177℃)での加温と水冷により溶体化処理されます。

MULTIMET® 合金は、耐酸化性が並であること、溶接中に熱影響部に割れが発生する傾向があること、および機械特性が比較的広いバンド幅で散らばることに悩まされていました。これらの懸念事項に対処し、改良するために HAYNES® 556® 合金が開発されました。

*この合金に関して技術的なご質問がある場合は、当社の技術支援チームにご連絡ください。

標準組成

重量 %
鉄:Fe Balance
ニッケル:Ni 20
コバルト:Co 20
クロム:Cr 21
モリブデン:Mo 3
タングステン:W 2.5
炭素:C 0.12
窒素:N 0.15
ニオブ + チタン:Nb + Ti 1
ケイ素:Si 1 max.
マンガン:Mn 1.5

硬度

形態 硬度, HRB 典型的な ASTM 結晶粒度
薄板 90 4.5 - 6.5
厚板 92 3 - 6.5
89 3 - 5

HRB = ロックウェル硬さ “B”
試験に用いた試料は全て溶体化処理済み

引張データ

薄板に対する高温引張試験を、以前の標準であったひずみ速度で実施しました。ここに記載する結果は、降伏に至るまでは 0.005 in/in/min のひずみ速度、降伏から破断に至るまでは、試験片平行部に対するクロスヘッド速度が 0.5 in/min で実施した試験から得られたものです。現在の標準では、降伏に至るまでは 0.005 in/in/min のひずみ速度、降伏から破断に至るまでは、試験片平行部に対するクロスヘッド速度は 0.05 in/min です。

鍛造材の典型的な短時間引張データ

形態 条件 試験温度 極限引張強さ 0.2% 耐力 伸び
°F °C ksi MPa psi MPa %
0.052 in (1.32 mm) 薄板 2150F(1177℃)、 RACで熱処理 RT RT 116.0 800 57 393 43
1200 649 73.2 505 - - 35
1700 927 19.8 137 - - 39
1900 1038 10.0 69 - - 34
0.063 in (1.6 mm) 薄板 2150F(1177℃)、 RACで熱処理 RT RT 118.1 814 58 400 49
800 427 98.0 676 42 292 54
1000 538 93.9 647 40 274 54
1200 649 73.5 507 38 259 28
1400 760 58.4 403 36 247 12
1600 871 38.8 268 30 207 15
1800 982 24.7 170 17 117 51
2000 1093 13.0 90 8 58 38
2100 1149 6.9 48 4 30 36
2200 1204 4.8 33 3 21 29
2300 1260 3.4 23 - - 19
2350 1288 2.6 18 - - 7
1/2 in (12.7 mm) 厚板 2165F (1185℃) 、 WQで熱処理 -108 -78 137.7 949 74 513 63
-320 -196 190.2 1311 - - 53
直径 21 in x 厚さ 3 1/4 in 鍛造材 1200F(649℃)で2時間、 ACで応力除去 RT RT 117.6 811 72 493 30
1200 649 83.0 572 49 338 25
1-2 in 厚さの鍛造棒材 2165F (1185℃) 、 WQで熱処理 RT RT 111.0 765 56 384 55*
直径 1/2-2 in の熱間圧延丸棒 2165F (1185℃) 、 WQで熱処理 RT RT 111.3 767 54 372 57*
熱間圧延した直径 0.242 in の丸棒を冷間圧延 2150F(1177℃)、 RACで熱処理 RT RT 115.8 798 - - 50
圧下率 5% RT RT 115.0 793 77 527 40
圧下率 10% RT RT 124.0 855 103 709 35
圧下率 15% RT RT 135.2 932 123 845 24
圧下率 20% RT RT 147.5 1017 136 935 20
圧下率 25% RT RT 153.0 1055 143 986 15
圧下率 30% RT RT 159.5 1100 153 1051 12
圧下率 35% RT RT 174.5 1203 168 1160 10
圧下率 40% RT RT 178.5 1231 176 1214 10
AC- 空冷
RAC- 急速空冷
WQ-水冷
*1 in 当たりの伸び.
RT = 室温

衝撃強度

試験温度 シャルピー衝撃強さ
°F °C ft-lb J
1500 816 69 94
RT RT 113 153
-20 -29 105 142
-108 -78 86 117
-216 -138 66 89
-321 -196 56 76

全ての試料は溶体化処理済み。
RT= 室温

クリープおよびストレスラプチャーデータ

溶体化処理した MULTIMET® 薄板

温度 クリープ 下記時間内に所定のクリープを生じるおおよその初期応力
10 Hours 100 Hours 1,000 Hours
°F °C % ksi MPa ksi MPa ksi MPa
1200 649 0.5 42 290 33 228 25 172
1 48 331 37 255 29 200
R 58 400 48 331 40 276
1300 704 0.5 30 207 23 159 17.5 121
1 36 248 27.5 190 21 145
R 46 317 37.5 259 29 200
1400 760 0.5 21.5 148 15.5 107 11 76
1 26 179 19 131 14 97
R 36 248 26 179 19 131
1500 816 0.5 15.5 107 11.5 79 8.0 55
1 18.5 128 13.5 93 9.5 66
R 26 179 18.5 128 13 90
1600 871 0.5 12.0 83 7.8 54 4.9 34
1 13.2 91 9.2 63 6.0 41
R 18.5 128 12 83 7.6 52
1700 927 0.5 7.5 52 4.8 33 2.8 19
1 9.0 62 5.8 40 3.4 23
R 12 83 7.8 54 4.7 32
1800 982 0.5 5.0 34 2.5 17 1.3 8.6
1 5.8 40 3.1 21 1.6 11
R 8.5 59 4.6 32 2.6 18

熱安定性

1200℉ (649℃) /16,000 hours 曝露後の室温引張特性

合金 形態 極限引張強さ 降伏強さ 伸び
ksi MPa ksi MPa
MULTIMET® 0.125 in 薄板 69.0 476 138.2 953 19.4
556® 0.5 in 厚板 64.2 443 129.9 896 29.6

耐酸化性

MULTIMET® は、約1800℉(982℃)まで許容できる耐酸化性を示します。しかしながら、耐酸化性
に対する懸念から、MULTIMET® は、通常、同等のクリープラプチャー強度があり、特に1800℉
(982℃)以上の温度でより優れた耐酸化性を有する 556® 合金に置き換えられてきました。

短時間静的酸化

空気流中での耐酸化性の比較、1008 Hours

合金 1800°F (980°C) 2000°F (1095°C)
メタルロス 平均酸化層厚さ メタルロス 平均酸化層厚さ
mils μm mils μm mils μm mils μm
MULTIMET® 0.4 10 1.3 33 8.9 226 14.3 363
556® 0.4 10 2.3 58 1.5 38 6.9 175

空気流は、流速 7.0 ft/min (213.4 cm/min) で試料を通過します。試料は、1週間に1回のサイク
ルで室温まで冷却されます。

バーナリグによる動的酸化

合金 1600°F (87°C), 1000 h, 30分サイクル 1600°F (87°C), 2000 h, 30分サイクル
メタルロス 平均酸化層厚さ メタルロス 平均酸化層厚さ
mils μm mils μm mils μm mils μm
MULTIMET® 1.3 33 2.2 56 2.7 69 4.9 124
556® 1.4 36 3.1 79 1.5 38 3.9 99

バーナーリグ酸化試験は、3/8” x 2.5” x 特定厚さ (9mm x 64 mm x 特定厚さ)の試料を回転式
の保持具に取付け、No.2燃料油を、空気と燃料の比率が約50:1の条件で燃焼させたときにでき
る燃焼ガス中に曝露して実施しました。(燃焼ガスの流速は約0.3マッハ数でした。) 試料は30分
毎に自動的にガス流から取り出し、ファンで外気温度近くまで冷却した後、燃焼ガス流中に戻し
ました。

耐高温腐食性

バーナリグ高温腐食試験

1650℉ (899℃)での耐高温腐食性

合金 塩分 5 ppm, 200 Hours 塩分 50 ppm, 200 Hours 塩分 5 ppm, 1000 Hours
メタルロス 平均腐食層厚さ メタルロス 平均腐食層厚さ メタルロス 平均腐食層厚さ
mils μm mils μm mils μm mils μm mils μm mils μm
MULTIMET® 1.8 46 3.7 94 1.8 46 4.2 107 1.8 46 5.4 137
556® 0.9 23 2.7 69 1.1 28 2.6 66 1.6 41 5.9 150

高温腐食試験は、バーナーリグで0.4%の硫黄分を含んだNo.2 燃料油を燃焼させ、低流速で実施し
ました。空気:燃料の比は30:1でした。人工的に作った海水を、表に記載した塩分濃度になるよう
に噴射しました。試験は1000 時間実施し、試料は1時間に1回のサイクルでガス流から取り出し、
外気温度付近まで冷却しました。ガス流速は 13 ft./sec. (4 m/s) でした。

物理的特性

物理的特性 英国単位 メートル単位
密度 RT
0.296 lb/in3
RT
8.20 g/cm3
溶融温度 2350-2470°F 1288-1354°C
熱伝導率 400°F
101 Btu-in/ft2-hr-°F
200°C 14.6 W/m-°C
600°F
112 Btu-in/ft2-hr-°F
300°C 15.9 W/m-°C
800°F
122 Btu-in/ft2-hr-°F
400°C 17.3 W/m-°C
1000°F
133 Btu-in/ft2-hr-°F
500°C 18.6 W/m-°C
1200°F
143 Btu-in/ft2-hr-°F
600°C 20.0 W/m-°C
平均熱膨張係数 70-300°F 8.2 µin/in.-°F 20-100°C 14.1 µm/m-°C
70-400°F 8.5 µin/in.-°F 20-200°C 15.2 µm/m-°C
70-500°F 8.5 µin/in.-°F 20-300°C 15.3 µm/m-°C
70-600°F 8.5 µin/in.-°F 20-400°C 15.6 µm/m-°C
70-800°F 8.7 µin/in.-°F 20-500°C 16.0 µm/m-°C
70-1000°F 9.1 µin/in.-°F 20-600°C 16.7 µm/m-°C
70-1200°F 9.4 µin/in.-°F 20-700°C 17.2 µm/m-°C
70-1400°F 9.8 µin/in.-°F 20-800°C 17.5 µm/m-°C
70-1600°F 9.9 µin/in.-°F 20-900°C 17.8 µm/m-°C
70-1800°F 10.1 µin/in.-°F 20-1000°C 18.1 µm/m-°C
70-2000°F 10.3 µin/in.-°F 20-1100°C 18.4 µm/m-°C
電気抵抗 400°F 40.1 µohm-in 200°C 101.7 µohm-cm
800°F 43.4 µohm-in 400°C 109.5 µohm-cm
1000°F 44.6 µohm-in 600°C 115.0 µohm-cm
1200°F 45.7 µohm-in 700°C 117.0 µohm-cm
1400°F 46.5 µohm-in 800°C 119.0 µohm-cm
1600°F 47.4 µohm-in 900°C 121.0 µohm-cm
1800°F 48.2 µohm-in 1000°C 122.7 µohm-cm
比熱(計算値) 70-212°F 0.104 Btu/lb.-°F 22-100°C 0.104J/kg-°C
ポアソン比 -108°F 0.319 -78°C 0.319
RT 0.298 RT 0.298
800°F 0.315 426°C 0.315
1200°F 0.325 650°C 0.325
1500°F 0.339 816°C 0.339
放射率 (酸化した合金) 2000°F 0.88 1090°C 0.88

RT = Room Temperature

成形性

形態 状態 典型的なエリクセンカップ深さ 
- - mm
0.025-0.050 in.の薄板 2150℉(1177℃)、RACで熱処理  10.0-11.5

RAC= 急速空冷

時効および冷間圧延後の硬さデータ

形態 条件 試験温度 典型的な硬さ
- °F °C °F °C ロックウェル ブリネル
薄板 Heat-Treated at 2165°F WQ Heat-Treated at 1185°C WQ RT RT 91 HRBW 190
Aged 20 min at: Aged 20 min at: - - - -
752°F 400°C 752°F 400°C - 138*
932°F 500°C 932°F 500°C - 130*
1112°F 600°C 1112°F 600°C - 130*
1292°F 700°C 1292°F 700°C - 120*
1472°F 800°C 1472°F 800°C - 105*
1652°F 900°C 1652°F 900°C - 60*
752°F 400°C RT RT - 190†
932°F 500°C RT RT - 192†
1112°F 600°C RT RT - 187†
1292°F 700°C RT RT - 192†
1472°F 800°C RT RT - 192†
1652°F 900°C RT RT - 218†
鍛造した棒材 As-Heat-Treated at 2150°F RAC As-Heat-Treated at 1177°C RT RT 92 HRBW -
reduced 5% reduced 5% RT RT 92 HRBW -
reduced 10% reduced 10% RT RT 19 HRC -
reduced 15% reduced 15% RT RT 25 HRC -
reduced 20% reduced 20% RT RT 30 HRC -
reduced 25% reduced 25% RT RT 34 HRC -
reduced 30% reduced 30% RT RT 37 HRC -
reduced 35% reduced 35% RT RT 40 HRC -
reduced 40% reduced 40% RT RT 40 HRC -

*2000 kg の荷重および 10mm のタングステンカーバイドボールを用いて実施した高温ブリネル硬さ試験ボールおよび試験片の両方は、試験前の20分間、試験温度で保持。
**最大値
†2000 kg の荷重および 10mm のタングステンカーバイドボールを用いて、室温で測定されたブリネル硬さ。
RT=室温
HRB = ロックウェル硬さ “B”
HRC = ロックウェル硬さ“C”
WQ=水冷

溶接

MULTIMET® 合金は、ガスタングステンアーク溶接(GTAW)、ガスメタルアーク溶接(GMAW)、シール
ドメタルアーク溶接(SMAW)、および抵抗溶接で容易に溶接することができます。サブマージアーク
溶接は、プロセスが母材金属に対する高入熱および溶接の冷却が遅いという特徴を有しているた
め、お薦めできません。これらの因子は溶接による拘束を高め、割れの発生を促します。

母材の準備

いかなる溶接であっても、溶接面および近接領域は、溶接する前に適切な溶剤により完全に清浄
にしなければなりません。全ての潤滑剤、油、切削油、クレヨンの痕、機械加工溶剤、腐食性生成
物、塗料、スケール、染色浸透溶液、およびその他の異物は完全に除去しなければなりません。
溶接する場合、合金は溶体化処理された状態であることが好ましいですが、必ずしも必要ではあ
りません。

溶加材の選定

MULTIMET® 合金をガスタングステンアーク溶接あるいはガスメタルアーク溶接で接合する場合
は、MULTIMET® 溶加ワイヤ (AMS 5794) を推奨します。シールドメタルアーク溶接に対しては、
MULTIMET® 合金 (AMS 5795) の被覆アーク溶接棒も入手できます。MULTIMET® 合金とニッケル
基、コバルト基、あるいは鉄基金属との異種金属の接合には、MULTIMET® 溶加ワイヤ、
HAYNES® 556® 合金 (AWS A5.9 ER3556, AMS 5831)、 HASTELLOY® S 合金 (AMS 5838) あるい
はHASTELLOY® W 合金 (AMS 5786, 5787) の溶接製品すべてが、特定のケースに応じて考えら
れます。もっと多くの情報が必要な場合は、当社の “溶接および加工”の パンフレットをご覧にな
るか、当社Webサイトの  ”Haynes Welding SmartGuide ”をご利用下さい。

予熱、パス間温度、および溶接後の熱処理

予熱する必要はありません。予熱は、一般に、室温(典型的な作業場の環境条件)として指定され
ています。パス間温度は、200℉(93℃)以下に保たなければなりません。汚染物質が混入すること
がないのであれば、必要に応じて、溶接パス間で補助冷却手段を使用することができます。
通常、MULTIMET® 合金には溶接後の熱処理は不要です。さらなる情報が必要な場合は、”溶接
及び 加工”のパンフレットを参照願います。

標準溶接パラメータ

GTAW、GMAWおよびSMAW溶接に関する詳細は、”溶接および加工”のパンフレットをご覧くださ
い。 典型的な溶接作業に対するガイドラインとして、標準溶接パラ メータを提供しています。これ
らのパラメータは、当社の実験室で使用されている溶接条件に基づいています。

溶接部の引張データ

溶接方法および材料 状態 試験温度 極限引張強さ 降伏強さ 伸び
°F °C ksi MPa ksi MPa %
SMAW, 薄板, 0.125 in 溶接したまま RT RT 116.0 800 60.9 420 27
SMAW, 厚板, 0.375 in RT RT 105.1 725 65.6 452 28
SMAW, 厚板, 0.500 in RT RT 102.6 707 49.8 343 44
GTAW, 薄板 0.125 in 溶接したまま RT RT 108.2 746 60.5 417 22
GTAW, 厚板, 0.250 in RT RT 111.4 768 65.0 448 21
GTAW, 厚板, 0.375 in RT RT 105.9 730 60.4 416 19

熱処理および加工

鍛造

インゴットは、開始最高温度を 2200℉(1204℃)にして熱間鍛造する必要があります。インゴットが
これよりも高い温度に加熱されると表面で破断し、酷く酸化されます。 MULTIMET® 合金は、最低
温度が1700℉(927℃)で鍛造しなければなりません。これよりも低い温度での鍛造は、特に、
1300℉(704℃)よりも高い温度で使用される場合、合金の高温強度に悪影響を及ぼすことがあり
ます。インゴットは、約2200℉(1204℃)で完全に浸漬する必要がありますが、その後は鍛造を比
較的速い速度で行うことができます。MULTIMET® 合金は容易には破断しないため、ほとんどの
場合、インゴット組織を破壊するために軽いブローハンマーを使用する必要はありません。再加
熱が必要な場合は、適切な温度になるように鍛造物が完全に浸るようにする必要があります。

成形

冷間加工は、スピニング、絞り、型押しのような作業に対して好ましい加工方法です。この合金
は、かなりの程度引き延ばされると加工硬化するため、材料を軟化させ、冷間加工作業で失わ
れた延性を回復させるために、様々な成形段階の間に溶体化処理が必要となる場合がありま
す。

熱処理

MULTIMET® 合金の薄板は、断面の厚さに応じた時間 2150℉(1177℃)で保持し、その後に急速
空冷または水冷して溶体化処理することにより最適な特性を引き出すことができます。棒材およ
び厚板(厚さが 1/4 in (6.35 mm)以上)は、通常、2150℉(1177℃)での加熱と水冷により溶体化
処理されます。ほとんどの鍛造製品は、溶液化処理した状態で出荷されます。

内部応力を除去するために、熱間加工後に金属を応力緩和することをお勧めします。過大な、ま
たは複雑な鍛造は、応力が除去されない限り機械加工中に反るかも知れません。遭遇する最高
使用温度に対応する温度で、合金を2~4時間加熱して応力緩和することを推奨します。熱処理
は、応力を除去すると同時に穏やかな析出硬化をもたらします。

溶体化処理した棒材および鍛造品は、1500℉(816℃)で4時間加温した後、空冷して時効処理し
ます。 この処理は、ブリネル硬さを192〜241の範囲まで増加させます。時効処理した状態の棒
材は真直ぐにして成形するのが難しいため、棒材は溶体化処理状態で購入し、最終加工後に時
効処理することを推奨します。

適合規格

仕様

MULTIMET® (R30155, W73155)
薄板、厚板及び帯板 AMS 5532
ビレット、ロッド及び棒 AMS 5769
被覆アーク溶接棒 AMS 5795SFA 5.4/ A 5.4 (E3155)
裸溶接棒及びワイヤ AMS 5794
継ぎ目なしパイプ及びチューブ -
溶接パイプ及びチューブ -
継手類 -
鍛造材 AMS 5768B 639
DIN -
その他 -

免責事項

Haynes Internationalは、本パンフレットに記載されているデータの精度・正確性を保証するために妥当な努力を払っておりますが、データの精度、正確性、あるいは信頼性について、いかなる表明も保証もいたしません。すべてのデータは一般的な情報のみであり、設計上のアドバイスを提供するものではありません。ここに開示されている合金特性は、主にHaynes International、Inc.によって行われた作業に基づいており、場合によっては公開文献の情報によって補足されているため、そのような試験の結果のみを示すものであり、保証最大値または最小値と考えてはなりません。実際の使用条件で特定の合金を試験して特定の目的に対する適合性を判断するのはユーザーの責任です。

特定の製品に含まれる特定の元素濃度とその潜在的な健康への影響については、Haynes International、Inc.が提供する安全データシートを参照してください。特記のない限り、すべての商標はHaynes International、Inc.が所有しています。

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