主な特徴

真空溶解されたニッケル基のHAYNES® R-41(UNS N07041)合金は、1200〜1800℉(649〜982℃)の範囲で 並外れた高い強度を有しています。 この合金は析出硬化型で、様々な溶体化処理や時効熱処理により 強度が発現します。 この合金は、その高い強度と良好な耐酸化性のために、現在のガスタービンエンジ ンのアフターバーナ部品およびノズルの隔壁に使用されています。 アニールされた状態では、この合金 には延性があり、18-8ステンレス鋼および他のニッケル基合金と本質的に同じ成形特性を有しています。 しかしながら、この合金はより強く、成形に対してより大きな抵抗があります。この合金は、ドロップハン マー、拡径マンドレルおよび引張成形機で問題なく成形されてきました。R-41合金は、282® 合金の優れ た加工性のため、多くの用途でHAYNES® 282®合金に置き換えられています。

機械的特性は、溶体化熱処理と時効処理の様々な組合せを選択することによって調整すること ができます。一般に、溶体化熱処理温度が高いほど室温延性がより良好になり、成形性が改善 されます。ストレスーラプチャー強度も、また、このタイプの処理によって改善されます。溶体化熱 処理温度が低いほど、約1700℉(927℃)以下の温度でより高い引張強度が得られます。溶体化 熱処理温度の影響は、引張およびストレスーラプチャーデータに見ることができます。

*この合金に関して技術的なご質問がある場合は、当社の技術支援チームにご連絡ください。

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標準組成

重量 %
ニッケル (Ni) 52 Balance
クロム (Cr) 19
コバルト (Co) 11
鉄 (Fe) 5 max.
モリブデン (Mo) 10
チタン (Ti) 3.1
アルミニウム (Al) 1.5
ケイ素 (Si) 0.5 max.
マンガン (Mn) 0.1 max.
炭素 (C) 0.09
ホウ素 (B) 0.006
ジルコニウム (Zr) 0.07 max.

物理的特性

物理的特性 英国単位 メートル単位
密度 70°F
0.298 lb/in3
21°C
8.25 g/cm3
溶融温度 2250-2535°F - 1232-1391°C -
平均熱膨張係数 70-1000°F 7.5 µin/in -°F 21-538°C
13.5 x 10-6m/m·°C
70-1200°F 7.8 µin/in -°F 21-649°C
14.0 x 10-6m/m·°C
70-1400°F 8.2 µin/in -°F 25-760°C
14.8 x 10-6m/m·°C
70-1500°F 8.5 µin/in -°F 25-816°C
15.2 x 10-6m/m·°C
70-1600°F 8.8 µin/in -°F 25-871°C
15.7 x 10-6m/m·°C
70-1700°F 9.1 µin/in -°F 25-927°C
16.3 x 10-6m/m·°C
70-1800°F 9.4 µin/in -°F 25-982°C
16.8 x 10-6m/m·°C
熱伝導率 300°F
80 Btu-in/ft2-hr-°F
149°C 11.5 W/m-°C
400°F
87 Btu-in/ft2-hr-°F
204°C 12.5 W/m-°C
500°F
95 Btu-in/ft2-hr-°F
260°C 13.6 W/m-°C
600°F
102 Btu-in/ft2-hr-°F
316°C 14.7 W/m-°C
800°F
117 Btu-in/ft2-hr-°F
427°C 16.8 W/m-°C
1000°F
131 Btu-in/ft2-hr-°F
538°C 18.8 W/m-°C
1100°F
139 Btu-in/ft2-hr-°F
593°C 20.0 W/m-°C
1200°F
146 Btu-in/ft2-hr-°F
649°C 21.0 W/m-°C
1300°F
153 Btu-in/ft2-hr-°F
704°C 22.0 W/m-°C
1400°F
161 Btu-in/ft2-hr-°F
760°C 23.1 W/m-°C
1500°F
168 Btu-in/ft2-hr-°F
816°C 24.1 W/m-°C
1600°F
175 Btu-in/ft2-hr-°F
871°C 25.1 W/m-°C
比熱 70°F 0.108 Btu/lb.-°F 21°C 452 J/kg-°C
電気抵抗率 32°F  50.0 µohm-in  0°C  127.0 µohm-cm 
透磁率 70°F <1.002 at 200 oersteds 21°C <1.002 at 200 oersteds

引張データ

下記条件で熱処理した後の引張特性
2050℉ (1121℃) /30 min/急速空冷 + 1650℉ (899℃) /4h/空冷

試験温度 0.2% 耐力 極限引張強さ 4D 伸び
°F °C ksi MPa ksi MPa %
RT RT 116.4 803 181.8 1253 20.5
400 204 109* 752* 174.2* 1201* 16.5*
800 427 109.1* 752* 161.6* 1114* 20.3*
1000 538 107.2 739 161 1110 21.2
1200 649 107.7 743 172.9 1192 19.3
1400 760 114.3 788 139.1 959 28.3
1500 816 104* 717* 115.7* 798* 27.2*
1600 871 79.7 550 89.2 615 28.5
1700 927 59.1* 407* 66.9* 461* 24.8*
1800 982 34.2 236 40.2 277 31.1
2000 1093 4.9* 34* 8.5* 59* 94.4*

*限られたデータ

1400℉(760℃) /16h/空冷 の条件で熱処理した後の引張特性

試験温度 0.2% 耐力 極限引張強さ 4D 伸び
°F °C ksi MPa ksi MPa %
RT RT 154.3 1064 205.4 1416 22.3
400 204 141.2* 974* 198.2* 1367* 23.0*
800 427 141.8* 978* 181.6* 1252* 25.6*
1000 538 139.8 964 182.6 1259 20.5
1200 649 138.3 954 196.2 1353 23.4
1400 760 126.1 869 150.8 1040 17.9
1500 816 112.2 774 128.1 883 19.4
1600 871 83.9 578 98.5 679 31.4
1700 927 51.1 352 62.3 430 38.7
1800 982 25.9 179 34.5 238 42.7

*限られたデータ

耐酸化性

静的酸化試験

環境: 空気流
試験時間: 1,008 h
サイクル数: 6
サイクルの長さ: 168 h
温度: 1600, 1700, 1800℉ (871, 927, 982℃)
メタルロス = (A-B)/2
平均内部酸化深さ = C
最大内部酸化深さ = D
平均酸化層厚さ = メタルロス + 平均内部酸化深さ
最大酸化層厚さ = メタルロス + 最大内部酸化深さ

空気流中での耐酸化性の比較、 1008 時間

合金 1600°F (871°C) 1700°F (927°C) 1800°F (982°C)
メタルロス 平均酸化層厚さ メタルロス 平均酸化層厚さ メタルロス 平均酸化層厚さ
mils μm mils μm mils μm mils μm mils μm mils μm
263 0.1 3 0.4 10 0.2 5 0.7 18 0.9 23 5.0 127
282® 0.2 5 0.6 15 0.1 3 1.1 28 0.2 5 1.8 46
R‐41 0.2 5 0.8 20 0.2 5 1.5 38 0.2 5 2.9 74
Waspaloy 0.3 8 1.4 36 0.3 8 3.4 86 0.7 18 5.0 127

動的酸化試験(バーナーリグ試験)

バーナーリグ試験では、0.375 in x 2.5 in x 特定厚さ (9.5mm x 64mm x 特定厚さ) の複数の試料
を回転する保持装置に取付け、燃料油 (No. 1燃料油:2、No. 2燃料油:1の混合油)を約50:1の
空燃比で燃焼させてできる燃焼ガス中に曝します。燃焼ガスの流速はマッハ数が約0.3です。試
料は30分毎に自動的に燃焼ガス流から取り出され、ファンで 500 ℉ (260 ℃) 以下に冷却された
後、燃焼ガス流中に戻されます。

Alloy 1600℉ (871℃), 1000 時間, 30 分サイクル 1800℉ (982℃), 1000 時間, 30 分サイクル
メタルロス 平均酸化層厚さ メタルロス 平均酸化層厚さ
mils μm mils μm mils μm mils μm
263 1.4 36 4.0 102 12.5 318 16.1 409
282® 1.8 46 4.2 107 8.0 203 13.0 330
Waspaloy 1.9 48 4.3 109 9.5 241 13.6 345
R‐41 1.2 30 4.4 112 5.8 147 12.1 307

時効後の硬度

時効硬化後の室温硬度

形態 硬度 熱処理
薄板 35 HRC 2050F, 30 Min, AC + 1650F, 4 Hr, AC
厚板 36 HRC 2050F, 30 Min, AC + 1650F, 4 Hr, AC
薄板 42 HRC 1400F, 16 Hr, AC
厚板 39 HRC 1400F, 16 Hr, AC

HRC = ロックウェル硬さ “C”

クリープ-ラプチャー強度

時効硬化処理した* HAYNES® R-41 薄板

温度 クリープ 下記時間で所定のクリープが生じるおおよその初期応力:
100h 1,000h
°F °C % ksi MPa ksi MPa
1200 649 1 105 724 84 579
R 110 758 90 621
1300 704 1 75 517 59 407
R 85 586 68 469
1400 760 1 53 365 34 234
R 63 434 43 296
1500 816 1 32 221 18 124
R 39 269 24 165
1600 871 1 17 117 9.0 62
R 23 159 13 90
1700 927 1 8.4 58 4.6 32
R 13 90 6.5 45

*試料は 2050℉(1121℃) /30 min./RAC(急速空冷) + 1650℉ (899°C) /4h/AC(空冷)の条件で時効硬化
処理。

熱安定性

RT(室温)および ET(曝露温度)での基準引張特性 ;
室温および曝露温度での残留引張特性

条件 試験温度 0.2% 耐力 極限引張強さ 4D 伸び
°F °C ksi MPa ksi MPa %
溶体化処理 RT RT 83.6 576 151.4 1044 38.7
時効硬化* RT RT 116.8 805 178.6 1231 17.3
1200 649 103.1 711 169.6 1169 18.0
1400 760 111.6 769 138.2 953 28.4
1500 816 100.6 694 113.5 783 32.0
1600 871 78.1 538 87.9 606 30.0
時効硬化* + 1200℉ (649℃)/8000h RT RT 150.7 1039 188.5 1300 5.3
1200 649 129.7** 894** 182.6 1259 8.1**
時効硬化* + 1400℉ (760℃)/8000h RT RT 151.6** 1045** 173.9** 1199** 0.1
1400 760 88.2 608 126.8 874 30.1**
時効硬化* + 1500℉ (816℃)/8000h RT RT 113.5 783 156.6 1080 1.4
1500 816 58.2 401 88.5 610 26.8
時効硬化* + 1600℉ (871℃)/8000h RT RT 83.3 574 122.9 847 2.0
1600 871 36.3 250 60.9 420 33.0

*2050℉ (1121℃)/30 min./AC + 1650℉ (899℃)/4h/AC で時効硬化処理。
**限られたデータ

弾性率

弾性率、せん断弾性率、およびポアソン比

試験温度 弾性率 せん断弾性率 ポアソン比
°F °C
106 psi
GPa
106 psi
GPa
80 27 31.6 218 12 83 0.31
300 149 30.9 213 12 81 0.31
500 260 29.6 204 11 77 0.32
700 371 28.7 198 11 75 0.32
900 482 27.6 190 10 72 0.32
1000 538 27.2 188 - - -
1100 593 26.4 182 10 69 0.33
1200 649 25.9 179 - - -
1250 677 25.8 178 10 67 0.33
1400 760 24.8 171 9 64 0.33
1500 816 24.1 166 - - -
1550 843 23.7 163 9 61 0.34
1600 871 23.2 160 - - -
1700 927 21.8 150 8 55 0.35

低サイクル疲労

低サイクル疲労データの比較

熱処理

HAYNES® R-41 鍛造合金は、特に指定されない限り、溶体化処理した状態で提供されます。部
品に加工した後、特性を最適化するために、この合金は通常、1950℉~2150℉(1066~1177℃)
で断面厚さに見合った時間をかけて再溶体化処理され、急冷または水冷されます。溶体化処
理に続いて、ミクロ組織を最適化して時効硬化を発現させるため、この合金は時効硬化処理を
施されます。様々な時効硬化法が商業的に使用されており、これらの全てが1400℉~1800℉
(760℃~982℃)の範囲で熱処理されています。例えば、AMS 5545が規定する時効硬化で
は、試料を1400℉(760℃)で少なくとも16時間熱処理して空冷します。

加工

溶体化処理時の室温硬度

形態 硬度 典型的な ASTM 結晶粒度
薄板 98 HRB 5 - 7.5
厚板 31 HRC 4 - 6

全ての試料は、溶体化処理した状態で試験実施。

溶体化処理した R-41 の室温引張特性

形態 試験温度 0.2% 耐力 極限引張強さ 4D 伸び
°F °C ksi MPa ksi MPa %
薄板 RT RT 84.2 581 148.1 1021 44.7
厚板 RT RT 101.0 696 195.0 1344 38.8

HAYNES® R-41 合金の溶接については、”溶接および加工”のパンフレットに記載されている”溶接および接合のガイドをご覧ください。これらのガイドラインに加えて、R-41 合金の溶接
時には、追加で考慮すべき事項がいくつかあります。

HAYNES® R-41 合金は析出強化型の合金で、適切な特性を引き出すには溶接後の熱処理
(PWHT) が必要です。R-41 合金に対する溶接後熱処理は、二つの部分から成ります: 溶体化処
理と、それに続く適切な時効処理です。詳細は、本パンフレットの”熱処理”のセクションをご覧く
ださい。PWHTの間、ガンマプライム相 (Ni3Al,Ti) が析出し、合金はわずかに体積収縮します。こ
れは、一般に溶体化処理温度まで加熱すると発生するひずみ時効割れを起こしやすくします。
ひずみ時効割れを防ぐためには、溶体化処理温度までの加熱速度は、使用する炉の能力の範
囲内でできるだけ速くしなければなりません。

R-41 合金同士の溶接には、同一組成の溶加金属を使用することを推奨します。R-41 合金と他
の合金との溶接に推奨できる溶加金属については、”Haynes Welding SmartGuide”をご利用い
ただくか、さらなるガイダンスについては、Haynes International にお尋ねください。

適合規格および基準

規格

基準

HAYNES® R-41 合金 (N07041)
薄板、厚板および帯板 AMS 5545
ビレット、ロッドおよびバー AMS 5712
被覆アーク溶接棒 -
裸溶接棒およびワイヤ AMS 5800
継ぎ目なしパイプおよびチューブ -
溶接パイプおよびチューブ -
継手類 -
鍛造材 AMS 5712
DIN -
その他 -
HAYNES® R-41 合金 (N07041)
MMPDS  6.3.7

免責事項

Haynes Internationalは、本パンフレットに記載されているデータの精度・正確性を保証するために妥当な努力を払っておりますが、データの精度、正確性、あるいは信頼性について、いかなる表明も保証もいたしません。すべてのデータは一般的な情報のみであり、設計上のアドバイスを提供するものではありません。ここに開示されている合金特性は、主にHaynes International、Inc.によって行われた作業に基づいており、場合によっては公開文献の情報によって補足されているため、そのような試験の結果のみを示すものであり、保証最大値または最小値と考えてはなりません。実際の使用条件で特定の合金を試験して特定の目的に対する適合性を判断するのはユーザーの責任です。

特定の製品に含まれる特定の元素濃度とその潜在的な健康への影響については、Haynes International、Inc.が提供する安全データシートを参照してください。特記のない限り、すべての商標はHaynes International、Inc.が所有しています。

合金パンフレット

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