主な特徴

HAYNES® 718 合金 (UNS N07718) は、アニールされた状態で優れた強度と良好な加工特性を持 つように設計された時効硬化型のニッケル-鉄-クロム-ニオブ(コロンビウム)-モリブデン-チタ ン-アルミニウム合金です。1200°F (649°C)以下の用途に限られていますが、これらの低温条件 では、 Waspaloy 合金、 R-41 合金、あるいは X-750 合金のような材料よりも著しく高い強度を 有しています。また、これら合金に比べて溶接が遥かに容易であり、ガンマプライム強化型材 料では一般的なひずみ時効割れの問題も起こり難くなっています。1200°F (649°C)よりも高い温 度では、 HAYNES® 282® 合金が優れた加工性だけでなく、より高い強度も有しているため、718 合金は、この合金に置き換えられています。

HAYNES® 718 合金は通常、1200°F (649°C)以下の温度の部品用途にのみ使用されます; しかし ながら、その耐酸化性は他のガンマプライム強化型超合金に匹敵します。

*この合金に関して技術的なご質問がある場合は、当社の技術支援チームにご連絡ください。

標準組成

重量 %
ニッケル:Ni 52 Balance
コバルト:Co 1 max.
鉄:Fe 19
クロム:Cr 18
ニオブ + タンタル:Nb+Ta 5
モリブデン:Mo 3
マンガン:Mn 0.35 max.
ケイ素:Si 0.35 max.
チタン:Ti 0.9
アルミニウム:Al 0.5
炭素:C 0.05
ホウ素:B 0.004

クリープおよびストレスラプチャー強度

時効処理*したHAYNES® 718 薄板

試験温度 クリープ 下記時間で所定のクリープを生じるおおよその初期応力:
10h 100h 1,000h
°F °C % ksi MPa ksi MPa ksi MPa
1000 538 0.5 157 1083 146 1007 132 910
1 160 1103 150 1034 138 952
R 165 1138 144 993
1100 593 0.5 140 965 126 869 108 745
1 143 986 130 896 112 772
R 150 1034 134 924 115 793
1200 649 0.5 121 834 101 696 75 517
1 124 855 103 710 78 538
R 130 896 105 724 87 600
1300 704 0.5 95 655 64 441 35 241
1 98 676 67 462 41 283
R 106 731 76 524 46 317
1400 760 0.5 54 372 24 165 3.8 26
1 60 414 28 193 5.1 35
R 70 483 37 255 17 117

* 試料は、1325°F (718°C)/8h/1150°F(621°C)まで炉冷、1150°F(621°C)/8h/空冷の2 ステップ時効処理を施した。

薄板での1000時間で1%のクリープを生じる応力の比較

1200°F (649°C) 以下の温度では、HAYNES® 718 合金は、他のほとんどの時効硬化型、鍛造ニッ ケル基超合金よりも優れたクリープ強度を有しています。しかしながら、約1200°F (649°C)を起 点として、それよりも高い温度では、HAYNES® 282®、HAYNES® Waspaloy、およびHAYNES® 263 合金のようなガンマプライム強化型合金が、より高い強度を提供します。

引張特性

引張データ、厚板

試験温度 極限引張強さ 0.2% 耐力 伸び
°F °C ksi MPa ksi MPa %
RT RT 200.5 1382 167.8 1157 20.6
800 427 173.1 1193 149.0 1027 22.6
1000 538 170.2 1173 145.9 1006 21.8
1200 649 162.5 1120 139.9 965 25.1
1400 760 117.3 809 104.9 723 12.1
1600 871 42.2 291 34.3 236 68.0
1800 982 14.1 97 9.6 66 129.9

ミルアニール + 1325°F(718℃)/8h/1150°F(621℃)まで炉冷、1150°F(621℃)/8h/空冷合計時間:  18 hours
RT= 室温

引張データ、薄板

試験温度 極限引張強さ 0.2% 耐力 伸び
°F °C ksi MPa ksi MPa %
RT RT 203.6 1404 174.7 1205 18.4
800 427 176.2 1215 155.4 1071 21.3
1000 538 172.3 1188 150.2 1036 20.7
1200 649 164.1 1131 144.3 995 16.3
1400 760 114.8 792 103.8 716 6.9
1600 871 39.9 275 34.0 234 81.8
1800 982 13.7 94 9.7 67 175.6

ミルアニール + 1325°F(718°C)/8h/1150°F(621°C)まで炉冷、1150°F(621°C)/8h/空冷
合計時間: 18 hours
RT= 室温

物理的特性

物理的特性 英国単位 メートル単位
密度 RT
0.297 lb/in.3
RT
8.23 g/cm.3
溶融温度 2300-2435°F 1260-1335°C
電気抵抗 RT 47.5 µohm.in RT 121 µohm.cm
200°F 48.0 µohm.in 100°C 122 µohm.cm
400°F 49.4 µohm.in 200°C 125 µohm.cm
600°F 50.3 µohm.in 300°C 127 µohm.cm
800°F 50.7 µohm.in 400°C 129 µohm.cm
1000°F 51.6 µohm.in 500°C 130 µohm.cm
1200°F 52.0 µohm.in 600°C 132 µohm.cm
1400°F 52.2 µohm.in 700°C 132 µohm.cm
1600°F 52.1 µohm.in 800°C 132 µohm.cm
1800°F 52.4 µohm.in 900°C 133 µohm.cm
1000°C 133 µohm.cm
熱伝導率 RT
79 Btu.in/h.ft2.°F
RT 11.4 W/m-°C
200°F
87 Btu.in/h.ft2.°F
100°C 12.6 W/m-°C
400°F
100 Btu.in/h.ft2.°F
200°C 14.3 W/m-°C
600°F
112 Btu.in/h.ft2.°F
300°C 15.9 W/m-°C
800°F
124 Btu.in/h.ft2.°F
400°C 17.5 W/m-°C
1000°F
136 Btu.in/h.ft2.°F
500°C 19.0 W/m-°C
1200°F
148 Btu.in/h.ft2.°F
600°C 20.6 W/m-°C
1400°F
161 Btu.in/h.ft2.°F
700°C 22.2 W/m-°C
1600°F
173 Btu.in/h.ft2.°F
800°C 23.8 W/m-°C
1800°F
186 Btu.in/h.ft2.°F
900°C 254.4 W/m-°C
1000°C 27.1 W/m-°C
平均熱膨張係数 70-200°F 7.1 µin/in-°F 25-100°C 12.8 µm/m-°C
70-400°F 7.5 µin/in-°F 25-200°C 13.5 µm/m-°C
70-600°F 7.7 µin/in-°F 25-300°C 13.8 µm/m-°C
70-800°F 7.9 µin/in-°F 25-400°C 14.1 µm/m-°C
70-1000°F 8.0 µin/in-°F 25-500°C 14.3 µm/m-°C
70-1200°F 8.4 µin/in-°F 25-600°C 14.8 µm/m-°C
70-1400°F 8.9 µin/in-°F 25-700°C 15.5 µm/m-°C
70-1600°F 9.4 µin/in-°F 25-800°C 16.3 µm/m-°C
- - 25-900°C 17.2 µm/m-°C
動弾性率 RT
29.0 x 106 psi
RT 200 GPa
200°F
28.4 x 106 psi
100°C 195 GPa
400°F
27.6 x 106 psi
200°C 191 GPa
600°F
26.7 x 106 psi
300°C 185 GPa
800°F
25.8 x 106 psi
400°C 179 GPa
1000°F
24.8 x 106 psi
500°C 173 GPa
1200°F
23.7 x 106 psi
600°C 167 GPa
1400°F
22.3 x 106 psi
700°C 159 GPa
1600°F
20.2 x 106 psi
800°C 149 GPa
1800°F
17.4 x 106 psi
900°C 134 GPa
- - 1000°C 117 GPa

RT= 室温

熱安定性

加工

HAYNES® 718 合金は、非常に良好な成形および溶接特性を有しています。部材全体が均一な温 度になるのに十分な時間浸漬した場合は、おおよそ 1700-2100°F (927-1149°C) の温度範囲で熱 間加工することができます。最初のブレークダウンは通常、温度範囲の上限で実行されますが、仕 上げは通常、結晶粒を微細化するために、より低い温度で行われます。

延性が良好であることから、718 合金は冷間加工でも容易に成形することができます。全ての熱間 あるいは冷間加工した部品は通常、最高の特性バランスを引き出すために、時効処理する前に 1700 ~ 1850°F (927~1010°C) でアニールして空冷、または急冷しなければなりません。

溶体化処理した 718 合金の室温引張特性

形態 極限引張強さ 0.2%耐力 伸び
ksi MPa ksi MPa %
薄板 126.3 871 60.7 419 46.7
厚板 124.3 857 57.3 395 49.0

冷間加工硬さ

圧下率 % 平均硬さ HRBW/C
0 92.4 HRB
10 27.2 HRC
20 33.6 HRC
30 36.9 HRC
40 38.3 HRC
50 39.2 HRC

HRBW = ロックウェル硬さ “B”、タングステン球圧子
HRC= ロックウェル硬さ “C”

硬さおよび結晶粒サイズ

形態 硬さ、 HRB 典型的な ASTM 結晶粒度
薄板 94 6 - 8
厚板 93 5 - 8

全ての試料は溶体化処理した状態で試験。

溶接

HAYNES® 718 合金は、ガスタングステンアーク溶接 (GTAW)、ガスメタルアーク溶接 (GMAW)、 シールドメタルアーク溶接 (SMAW)、電子ビーム (EB) および抵抗溶接で容易に溶接することが できます。その溶接特性は、HASTEL LOY® X 合金と同様です。サブマージアーク溶接 (SAW) および酸素アセチレン溶接は、これらのプロセスが母材への高い入熱と溶接部の冷却が遅い という特徴を有しているため、推奨できません。これらの要因は溶接による拘束を増加させ、割 れを促進する可能性があります。

母材金属の準備

溶接表面および近接する領域は、溶接作業の前に適切な溶剤により完全に清浄にしなければ なりません。全てのグリース、オイル、切削油、クレヨンの痕、機械加工溶剤、腐食性生成物、 塗料、スケール、染色浸透溶液、およびその他の異物は完全に除去しなければなりません。

母材金属の準備

HAYNES® 718 合金は、同一組成の溶加材 (AWS A5.14 ERNiFeCr-2, AMS5832)を使用して接合しなければなりません。718 合金と他の合金との異材溶接には、HASTELLOY® S (AMS 5838) または W (AWS A5.14 ERNiMo-3, AMS 5786) 溶加ワイヤを推奨します。更なる情報が必要な場合は、”溶接および加工”のパンフレットをご覧になるか、または Haynes Welding SmartGuide をご利用ください。

予熱および中間パス温度

予熱の必要はありません。予熱は通常、室温(典型的な作業場の条件)と明記されています。 中間パス温度は、200°F (93°C)以下に維持しなければなりません。必要に応じて、汚染物質を 引き込まないという条件の下で、溶接パス間に補助冷却手段を使用することができます。 詳細 については、”溶接及び加工”のパンフレットをご覧ください。

溶接後の熱処理

HAYNES® 718 合金は、通常、完全に時効処理した状態で使用されます。成形および溶接に続 いて、最良の接合および全体の加工特性を引き出すために、時効処理する前に完全溶体化処 理がしばしば適用されます。最良の作業方法は、時効処理する前の加工の個別の条件に依 存します。詳細については、Haynes International, Inc. にお問い合わせください。

標準溶接パラメータ

GTAW、GMAWおよびSMAWの詳細は、“溶接および加工”パンフレットに記載しています。標準 溶接パラメータは代表的な作業に対する指標として提供しており、当社の実験室で使用してい る溶接条件に基づいています。

適合規格および基準

規格

HAYNES® 718 合金 (N07718)
薄板、厚板および帯板」 AMS 5596AMS 5597
ビレット、ロッドおよび棒 AMS 5662AMS 5662AMS 5663AMS 5664SB 637/B 637
被覆アーク溶接棒 -
裸溶接棒およびワイヤ A 5.14 (ERNiFeCr-2)AMS 5832
継ぎ目なしパイプおよびチューブ AMS 5589AMS 5590B 983
溶接パイプおよびチューブ -
継手類 -
鍛造材 AMS 5662AMS 5663AMS 5664SB 637/B 637
DIN 17742 No. 2.4668NiCr19Fe19NbMo3
その他 ASME Code CaseNo.1993-6Case No. 2221-1NACE MR0175 ISO 15156

基準

HAYNES® 718 合金 (N07718)
MMPDS 6.3.5

免責事項

Haynes Internationalは、本パンフレットに記載されているデータの精度・正確性を保証するために妥当な努力を払っておりますが、データの精度、正確性、あるいは信頼性について、いかなる表明も保証もいたしません。すべてのデータは一般的な情報のみであり、設計上のアドバイスを提供するものではありません。ここに開示されている合金特性は、主にHaynes International、Inc.によって行われた作業に基づいており、場合によっては公開文献の情報によって補足されているため、そのような試験の結果のみを示すものであり、保証最大値または最小値と考えてはなりません。実際の使用条件で特定の合金を試験して特定の目的に対する適合性を判断するのはユーザーの責任です。

特定の製品に含まれる特定の元素濃度とその潜在的な健康への影響については、Haynes International、Inc.が提供する安全データシートを参照してください。特記のない限り、すべての商標はHaynes International、Inc.が所有しています。

合金パンフレット

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