主な特徴

優れた耐酸化性

HAYNES® 214® 合金(UNS N07214)は、ニッケル – クロム – アルミ – 鉄合金で、オーステナイト系鍛
造材料に対して最適な高温耐酸化性を提供すると同時に、従来の成形および接合が可能なように
設計されています。主に1750℉(954℃)以上の温度で使用することを目的とした214® 合金は、これらの温度で、ほぼすべての従来の耐熱鍛造合金をはるかに上回る耐酸化性を示します。これは、こ
れらの温度において酸化クロムのスケールよりもむしろ密着したAl2O3タイプの保護酸化スケールを
形成することに依るものです。1750℉(954℃)よりも低い温度では、214® 合金は、酸化クロムと酸化アルミニウムの混ざった酸化スケールを形成します。この混合スケールは、やや防護性は劣ります
が、それでも最良のニッケル基合金に等しい耐酸化性を214® 合金に付与します。214® 合金が形成
する、より高温のAl2O3タイプのスケールは、また、浸炭、窒化および塩素を含んだ酸化環境での腐
食に対する優れた耐性をこの合金に与えます。

加工

HAYNES® 214® 合金は、中間温度での熱処理による時効硬化を意図した多くの高アルミ含有ニッケ
ル基合金と同様に、1100〜1700℉(593〜927℃)の範囲の温度で曝露された場合、第2相であるガ
ンマプライム(Ni3Al)を形成し、その結果、時効硬化します。これにより、214® 合金は、高い応力がかかった状態で高度に拘束された溶接部品が、中間温度領域を通ってゆっくりと加熱されると、ひずみ
時効割れを起こし易くなります。この問題を回避するための鍵は、適切な部品設計によって溶接拘
束を最小限に抑えること、および/または加工後の熱処理(または最初に使用する時の加熱)時
に、1100〜1700℉(593〜927℃)の温度領域を急速に通過するように加熱することです。

上記の考慮すべき事柄を除けば、HAYNES® 214® 合金は良好な成形および溶接特性を示します。こ
の合金は、2100℉(1149℃)の温度で十分な時間保持し、部材全体がこの温度に達すれば、鍛造、あ
るいは熱間加工することができます。この合金の室温引張延性も十分に高く、冷間加工によって成
形できます。冷間加工または熱間加工した全ての部品は、最良の特性バランスを回復させるため
に、アニールして急冷する必要があります。

この合金は、ガスタングステンアーク(TIG)、ガスメタルアーク(MIG)、またはシールドメタルアーク(被覆アーク溶接棒)溶接などの様々な溶接方法によって溶接することができます。

熱処理

HAYNES® 214® 合金は、特に指定されない限り、溶体化処理した状態で提供されます。この合金は、
通常、2000℉(1093℃)で溶体化処理され、最適な特性にするために急冷または水冷されます。溶体
化処理温度以下の温度での熱処理は結晶粒界に炭化物を析出させ、1750℉(954℃)以下での熱処
理はガンマプライム相を析出させます。このような低温での時効硬化処理はお勧めできません。

用途

HAYNES® 214® 合金は、酸化やスケールの剥離に対する耐性が最大限に必要とされる、比較的低
応力の高温酸化環境での使用に非常に適した特性を兼ね備えています。そのような環境への耐
性は、強度の制限が適用される可能性がありますが、2400℉(1316℃)に達する温度まで持続しま
す。用途には、メッシュベルト、陶器やファインチャイナの焼成用トレイや器具などを使用する”ク
リーン焼成”、電子機器や工業用セラミックスの熱処理などがあります。ガスタービン産業において
は、214® 合金は、箔で構成するハニカムシール、燃焼器のスプラッシュプレート、およびその他の
耐静的酸化性が必要な部品に使用されています。自動車産業においては、触媒コンバーター内
の部品に214® 合金の用途があり、軍用車両の補助ヒーターのバーナーカップ材料としても使用さ
れています。工業用加熱装置市場では、耐火材のアンカー、炉のフレームフード、塩化化合物を
処理するための回転式煆焼炉などの高度に特殊な用途に214®合金が使用されています。また、
病院廃棄物焼却施設の内部部品などの、塩素を含んだ高温環境で使用する部品にも使用されて
います。

*この合金に関して技術的なご質問がある場合は、当社の技術支援チームにご連絡ください。

標準組成

重量%

ニッケル:Ni Balance
クロム:Cr 16
アルミニウム:Al 4.5
鉄:Fe 3
コバルト:Co  2 max.
マンガン:Mn 0.5 max.
モリブデン:Mo  0.5 max.
チタン:Ti 0.5 max.
タングステン:W 0.5 max.
ニオブ:Nb 0.15 max.
ケイ素:Si 0.2 max.
ジルコニウム:Zr 0.1 max.
炭素:C 0.04
ホウ素:B 0.01 max.
イットリウム:Y 0.01

代表的な用途

耐酸化性

HAYNES® 214® 合金は、1750℉(954℃)以上の温度で、他の鍛造耐熱合金に並ぶものがない耐
酸化性を提供します。この合金は、2300℉(1260℃)までの温度で、燃焼ガスまたは空気に長期
間連続的に曝露して使用することができ、短期間の曝露に対しては、さらに高い温度で使用す
ることができます。有用な短期耐酸化性は、2400℉(1316℃)の高温でも実証されています。

空気流中での耐酸化性の比較*

合金 1800°F (982°C)/1008 h 2000°F (1093°C)/1008 h 2100°F (1149°C)/1008 h 2200°F (1204°C)/1008 h
平均 メタルロス** 平均 酸化層厚さ*** 平均 メタルロス** 平均 酸化層厚さ*** 平均 メタルロス** 平均 酸化層厚さ*** 平均 メタルロス** 平均 酸化層厚さ***
mils µm mils µm mils µm mils µm mils µm mils µm mils µm mils µm
214® 0.1 3 0.3 8 0.1 3 0.2 5 0.1 3 0.5 13 0.1 3 0.7 18
230® 0.2 5 1.5 38 0.5 13 3.3 84 1.2 30 4.4 112 4.7 119 8.3 211
X 0.2 5 1.5 38 1.3 33 4.4 112 3.6 91 6.1 115
601 0.4 10 1.7 43 1.3 33 3.8 97 2.8 71 6.5 165 4.4 112 7.5 191
HR-120® 0.4 10 2.1 53 1 25 4.4 112 7.9 201 10.1 257 21.7 551 25.4 645
556® 0.4 10 2.3 58 1.5 38 6.9 175 10.4 264 17.5 445
600 0.3 8 2.4 61 0.9 23 3.3 84 2.8 71 4.8 122 5.1 130 8.4 213
RA-330® 0.3 8 3 76 0.8 20 6.7 170
800HT 0.5 13 4.1 104 7.6 193 11.6 295 11 279 15 381
HR-160® 0.7 18 5.5 140 1.7 43 10.3 262 2.5 64 16 406 13.5 345 62.9 1598
304 SS 5.5 140 8.1 206 NA NA >19.6 >498 NA NA >19.5 >495
316 SS 12.3 312 14.2 361 NA NA >17.5 >445 NA NA >17.5 >445
446 SS 13 330 14.4 366 NA NA >21.5 >546

*試料を通過する空気流速は、7.0 ft/min (213.4 cm/min) 。 試料は、1週間に1回のサイクルで室温まで冷却。
**メタルロスは、最初と最後の金属厚さから計算; すなわち、 ML = (OMT – FMT) /2
***平均酸化層厚さはメタルロスと平均内部酸化深さの合計。

環境試験の評価に使用した金属組織学的手法の模式図

2100℉(1149℃)の空気流中での耐酸化性の比較

下に示すミクロ組織は、試料を7.0 ft/min (213.4 cm/min)で通過する 2100℉(1149℃)の空気流
中に1008時間曝露した試験片のものです。試料の脱スケールは、試験片を溶融塩溶液中に浸
している間に陰極帯電させることによって行いました。各写真の上部に示された黒い領域は、酸
化による実際のメタルロスを表しています。HAYNES® 214 ®合金は曝露の影響をわずかに受ける
だけですが、600および601合金のような他のニッケル-クロム合金、およびRA330®合金などの
鉄-ニッケル-クロム合金はすべて、酸化損傷が著しく多いことをデータは明白に示しています。
特に重要なのは、214® 合金の内部酸化がほとんどないことです。これは、601合金およびRA330
合金の試験片によって実証された、かなりの量の内部酸化と著しく対照的です。この内部酸化
の特質は、顕微鏡写真に示すように、1~2%のアルミニウムまたはケイ素を含む合金に共通で
す。このようなレベルのこれら元素は、酸化クロムスケールの付着を促進しますが、スケールの
下への酸化物侵入に対する耐性を改善することはありません。

HAYNES® 214® 合 金
平均酸化層厚さ
= 0.5 mils (13 µm)

600合金
平均酸化層厚さ
=4.8 mils (122µm)

601合金
平均酸化層厚さ
=6.5 mils (165 µm)

RA330® 合金
平均酸化層厚さ
=8.7 mils (221 µm)

バーナーリグでの耐酸化性の比較

合金 1800℉ (982℃)/1000 h 2000℉ (1093℃)/500 h 2100℉ (1149℃)/200 h
メタルロス* 平均
酸化層厚さ**
メタルロス* 平均
酸化層厚さ**
メタルロス* 平均
酸化層厚さ**
mils µm mils µm mils µm mils µm mils µm mils µm
214® 1.5 38 1.8 46 1.2 30 1.5 38 2 51 2.1 53
230® 2.8 71 5.6 142 7.1 180 9.9 251 6.4 163 13.1 333
556® 4.1 104 6.7 170 9.9 251 12.1 307 11.5 292 14 356
X 4.3 109 7.3 185 11.6 295 14 356 13.9 353 15.9 404
HR-160® 5.4 137 11.9 302 12.5 318 18.1 460 8.7 221 15.5 394
601 5.7 145 板厚を貫通 16.3 414 板厚を貫通
HR-120® 6.3 160 8.3 211
RA330 8.7 221 10.5 267 15.4 391 17.9 455 11.5 292 13 330
310 SS 16 406 18.3 465 消滅
800H 22.9 582 板厚を貫通 300 時間後に消滅 消滅
800HT 23.3 592 板厚を貫通 365 時間 後に消滅 消滅
304 SS 消滅 消滅

* メタルロスは、最初と最後の金属厚さから計算; すなわち、 ML = (OMT – FMT) /2
** 平均酸化層厚さはメタルロスと平均内部酸化深さの合計

空気流中に360日間 (8,640時間) 曝露した時の
耐熱合金薄板(0.060~0.125”/1.52~3.18 mm)の酸化量*

合金 1800°F (982°C) 2000°F (1093°C) 2100°F (1149°C) 2200°F (1204°C)
メタルロス** 平均
酸化層厚さ***
メタルロス** 平均
酸化層厚さ***
メタルロス** 平均
酸化層厚さ***
メタルロス** 平均
酸化層厚さ***
mils μm mils μm mils μm mils μm mils μm mils μm mils μm mils μm
214® 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1.4 36
230® 0.1 3 2.5 64 3.4 86 11 279 28.5 724 34.4 874 39 991 64 1626
X 0.2 5 2.8 71 17.1 434 26.2 665 51.5 1308 55.4 1407 >129.0 >3277 >129.0 >3277
HR-120® 0.5 13 3.3 84 18.1 460 23.2 589 33.6 853 44 1118 >132.0 >3353 >132.0 >3353
556® 0.5 13 6.2 157 15 381 24.1 612
HR-160® 1.7 43 13.7 348 7.2 183 30.8 782 12 305 45.6 1158 13.5 345 62.9 1598

*試料を通過する空気の流速は 7.0 ft/min (213.4 cm/min) 。試料は、1か月に1回のサイクルで室温まで冷却。
** メタルロスは試験の最後と最初の試料の厚さから計算 ; すなわち、ML = (OMT – FMT) /2
***平均酸化層厚さは、メタルロスと平均内部酸化深さの合計。

酸化試験パラメータ

バーナーリグ酸化試験では、0.375 in x 2.5 in x 特定厚さ (9.5mm x 64mm x 特定厚さ) の複数の
試料を回転する保持装置に取付け、No. 1燃料油:2、No. 2燃料油:1の混合油を約50:1の空燃比
で燃焼させてできる燃焼ガス中に曝しました。(燃焼ガスの流速は、マッハ数で約0.3でした。) 試
料は30 分毎に自動的に燃焼ガス流から取り出され、ファンで500℉(260℃)以下まで冷却された
後、燃焼ガス流中に戻されました。

1800℉ (982℃)/1000 時間におけるバーナーリグでの耐酸化性の比較

HAYNES® 214® 合金
平均酸化層厚さ
= 1.8 mils (45.7 µm)

601合金
平均酸化層厚さ
> 23 mils (> 584 µm)

RA330® 合金
平均酸化層厚さ
=10.5 mils (267 µm)

800H 合 金
平均酸化層厚さ
> 38 mils (> 965 µm)

2000℉ (1093℃)/500 時間におけるバーナーリグでの耐酸化性の比較

HAYNES® 214® 合金
平均酸化層厚さ
= 1.5 mils (38 µm)

601合金
平均酸化層厚さ
> 23 mils (> 584 µm)

RA330® 合金
平均酸化層厚さ
=17.9 mils (455 µm)

800H 合 金
平均酸化層厚さ
> 38 mils (> 965 µm)

水蒸気

1200°F (649°C)
合金 空気 + 5%H2O 中で1008時間
(1週間に1回のサイクル)
空気 + 10%H2O 中で1008時間
(1週間に1回のサイクル)
メタルロス* 平均酸化層厚さ** メタルロス* 平均酸化層厚さ**
mils µm mils µm mils µm mils µm
214® 0 0 0 0 0 0 0.08 2
230® 0 0 0.05 2 0.01 0 0.2 5
625 0 0 0.07 2 0.01 0 0.26 7
X 0 0 0.18 4 0.01 0 0.13 3
HR-120® 0 0 0.23 6 0.02 0 0.55 14
347SS 0.02 0 0.28 7 0.03 1 0.34 9
253MA 0.05 1 0.5 13 0.08 2 1.12 29
1400°F (760°C)
合金 空気 + 5%H2O 中で1008時間
(1週間に1回のサイクル)
空気 + 10%H2O 中で1008時間
(1週間に1回のサイクル)
空気 + 20%H2O 中で1008時間
(1週間に1回のサイクル)
メタルロス* 平均
酸化層厚さ**
メタルロス* 平均
酸化層厚さ**
メタルロス* 平均
酸化層厚さ**
mils µm mils µm mils µm mils µm mils µm mils µm
214® 0.01 1 0.05 1 0.01 0 0.16 4 0.01 0 0.01 0
230® 0.03 1 0.24 6 0.03 1 0.21 6 0.04 1 0.14 4
625 0.02 1 0.13 3 0.04 1 0.27 7 0.05 1 0.25 6
HR-120® 0.04 1 0.24 6 0.04 1 0.29 7 0.08 2 0.68 17
X 0.04 1 0.32 8 0.04 1 0.3 8 0.06 2 0.36 9
617 0.05 1 0.45 11
253MA 0.04 1 0.42 11 0.08 2 0.68 17 0.19 5 0.99 25
347SS 0.04 1 0.46 12 0.18 5 0.88 22 0.78 20 1.98 50
1600°F (871°C)
合金 空気 + 5%H2O 中で1008時間
(1週間に1回のサイクル)
空気 + 10%H2O 中で1008時間
(1週間に1回のサイクル)
空気 + 20%H2O 中で1008時間
(1週間に1回のサイクル)
メタルロス* 平均
酸化層厚さ**
メタルロス* 平均
酸化層厚さ**
メタルロス* 平均
酸化層厚さ**
mils µm mils µm mils µm mils µm mils µm mils µm
214® 0.05 1 0.21 5 0.05 1 0.26 7 0.04 1 0.12 3
625 0.11 3 0.41 11 0.11 3 0.5 12 0.11 3 0.6 15
X 0.09 2 0.38 10 0.03 1 0.5 13 0.13 3 1.17 30
230® 0.06 1 0.32 8 0.07 2 0.53 13 0.08 2 1.11 28
HR-120® 0.08 2 0.54 14 0.09 2 0.68 17 0.16 4 1.06 27
617 0.08 2 0.88 22
347SS 0.65 16 1.48 38 0.86 22 1.48 38 7.31 186 9.34 237
253MA 0.12 3 0.43 11 0.66 17 1.59 41 0.64 16 1.67 42
1800°F (982°C)
合金 空気 + 5%H2O 中で1008時間
(1週間に1回のサイクル)
空気 + 10%H2O 中で1008時間
(1週間に1回のサイクル)
空気 + 20%H2O 中で1008時間
(1週間に1回のサイクル)
メタルロス* 平均
酸化層厚さ**
メタルロス* 平均
酸化層厚さ**
メタルロス* 平均
酸化層厚さ**
mils µm mils µm mils µm mils µm mils µm mils µm
214® 0.04 1 0.24 6 0.05 1 0.55 14 0.04 1 0.64 16
188 0.13 3 1.43 36 0.14 4 1.64 42 0.18 5 1.48 38
230® 0.17 4 1.47 37 0.18 5 1.38 35 0.19 5 1.59 40
625 0.32 8 1.62 41 0.16 4 1.46 37 0.36 9 1.66 42
X 0.27 7 1.77 45 0.26 7 1.66 42 0.27 7 1.77 45
556® 0.35 9 1.85 47
617 0.3 8 2 51 0.15 4 1.65 42 0.39 10 1.99 50
HR-120® 0.34 9 1.94 49 0.36 9 1.66 42 0.38 10 2.08 53
800HT 2.47 63 5.07 129
HR-160® 0.77 20 5.57 141

* メタルロスは、最初と最後の金属厚さから計算; すなわち、 ML = (OMT – FMT) /2
** 平均酸化層厚さはメタルロスと平均内部酸化深さの合計

耐浸炭性

HAYNES® 214® 合金は、密閉黒鉛曝露試験と混合ガス曝露試験の両方の測定結果が示すよう
に、浸炭に対して非常に良好な耐性を有しています。これらの試験の結果は、以降のページに
示されています。全ての結果は、単位面積当たりの吸炭量で表され、計算式;M = C(W/A)か
ら得られます。ここで、M = 単位面積当たりの吸炭量(mg/cm2)、C = 曝露前後の炭素量(重
量%)の差、W = 曝露していない検体の重量(mg)、A = 試験環境に曝露された検体の表面積
(cm2)です。

耐密閉吸炭性

密閉した黒鉛に1800℉(982℃)で500時間曝露した後に 214® 合金対して観察された吸炭量は、
以下に示すように、非常に低い値でした。HAYNES® HR-120® および 556® 合金は優れた耐浸炭
性を示しましたが、試験した他の合金は著しく大きな吸炭性を示しました。特に、214® 合金の耐
浸炭性は、ステンレス鋼タイプの材料に対する耐浸炭性よりもはるかに良好でした。

混合ガス浸炭試験

浸炭ガス混合気に、1700℉(927℃)および1800℉(982℃)の両方で曝露した後に214®合金に対し
て観察された吸炭量は、試験した他のすべての材料よりも著しく低い量でした。この試験結果は、
以降のページのグラフに示されています。これらの試験では、曝露は、(体積%で)5.0%のH2、5.0%
のCO、5.0%のCH4および残りはアルゴンからなるガス環境中で行いました。試験環境に対しての
計算で求めた平衡組成は、以降のページに試験結果と一緒に示しています。

混合ガス浸炭試験における1700℉ (927℃) での結果比較

1700℉ (927℃) 、1atma における計算による平衡組成(体積%)は、14.2% H2 、4.74% CO、0.0044% CO2 、0.032 CH4 、残りはアルゴンでした。炭素活量は 1.0 で、酸素分圧は 2.47 x 10-22 atma でした。

 

混合ガス浸炭試験における 1800℉ (982℃) での結果比較

1800℉ (982℃)、1 atma での計算による平衡組成(体積%)は、14.2% H2、4.75% CO、0.0021%
CO2、0.024% CH4、0.0098% H2O、残りはアルゴンでした。炭素活量は 1.0 で、酸素分圧は 6.78 x
10-22 atma でした。

 

1800℉(982℃)で55時間曝露した後の典型的な浸炭したミクロ組織(エッチングなし)

塩素含有環境に対する耐性

HAYNES® 214® 合金は、高温で塩素に汚染された酸化環境での腐食に対して傑出した耐性を示
します。これは、Al2O3に富む保護酸化物スケールの形成に好都合な 1800℉(982℃)以上の温
度で曝露した場合に特に明白です。 Ar + 20% O2 + 0.25% Cl2 の混合ガス流中に400時間曝露し
た場合の試験結果を以下に示します。214® 合金のメタルロスは、試験した他の合金と比較して
非常に低いことに注目してください。

HAYNES® 214® 合金は、塩素の汚染レベルがより高い環境でも試験されています。下の顕微鏡写真
は、1830℉(999℃)で50時間、空気と2%塩素の混合気に曝露された試料のものです。再度ですが、
各写真の上部にある黒い領域は、実際のメタルロスを表しています。601合金のメタルロスは 2.0
mil(51μm)、内部腐食深さは 6.0 mil(152μm)で、合計した平均腐食層厚さは 8.0 mil(203μm)で
した。これに対して、214® 合金の結果は、1.0 mil(25μm)のメタルロス、1.0 mil(25μm)の平均内部腐食深さで、合計した平均腐食層厚さは、わずか 2.0 mil(51μm)でした。これらの結果は、前の
ページで示した、より低い塩素レベルで長期間試験した結果と一致しています。

 

耐窒化性

214® 合金は、伝統的な1000℉〜1200℉(538℃〜649℃)の温度での窒化環境に対して最も耐性の
ある合金ではありませんが、Al2O3保護スケールが形成できるより高い温度では、極めて低濃度
の酸素環境であっても傑出した耐性を示します。試験は168時間、1,200、1800 および 2000℉
(649、982 および 1093℃)のアンモニア流中で実施しました。吸窒量は、曝露前後の試料の技術
的分析、および試料の曝露面積から求めました。

合金 吸窒量 (mg/cm2)
1200°F (649°C) 1800°F (982°C) 2000°F (1093°C)
230® 0.7 1.4 1.5
600 0.8 0.9 0.3
625 0.8 2.5 3.3
601 1.1 1.2 2.6
214® 1.5 0.3 0.2
X 1.7 3.2 3.8
800H 4.3 4 5.5
310 SS 7.4 7.7 9.5

物理的特性

物理的特性 英国単位 メートル単位
密度 RT 0.291 lb/in3 RT 8.05 g/cm3
溶融温度 2475-2550°F 1357-1399°C
電気抵抗 RT 53.5 µohm-in RT 135.9 µohm-cm
200°F 53.9 µohm-in 100°C 136.9 µohm-cm
400°F 53.9 µohm-in 200°C 136.9 µohm-cm
600°F 53.9 µohm-in 300°C 136.9 µohm-cm
800°F 54.3 µohm-in 400°C 137.7 µohm-cm
1000°F 54.3 µohm-in 500°C 137.9 µohm-cm
1200°F 53.5 µohm-in 600°C 136.8 µohm-cm
1400°F 51.6 µohm-in 700°C 133.7 µohm-cm
1600°F 49.6 µohm-in 800°C 129.2 µohm-cm
1800°F 48.0 µohm-in 900°C 124.9 µohm-cm
1900°F 47.6 µohm-in 1000°C 121.6 µohm-cm
2000°F 47.6 µohm-in 1050°C 120.9 µohm-cm
2100°F 48.0 µohm-in 1100°C 121.0 µohm-cm
2200°F 48.4 µohm-in 1150°C 121.9 µohm-cm
1200°C 122.9 µohm-cm
熱伝導率 RT 83 Btu-in/ft2-hr-°F RT 12.0 W/m-°C
200°F 88 Btu-in/ft2-hr-°F 100°C 12.8 W/m-°C
400°F 99 Btu-in/ft2-hr-°F 200°C 14.2 W/m-°C
600°F 112 Btu-in/ft2-hr-°F 300°C 15.9 W/m-°C
800°F 132 Btu-in/ft2-hr-°F 400°C 18.4 W/m-°C
1000°F 153 Btu-in/ft2-hr-°F 500°C 21.1 W/m-°C
1200°F 175 Btu-in/ft2-hr-°F 600°C 23.9 W/m-°C
1400°F 200 Btu-in/ft2-hr-°F 700°C 26.9 W/m-°C
1600°F 215 Btu-in/ft2-hr-°F 800°C 29.7 W/m-°C
1800°F 225 Btu-in/ft2-hr-°F 900°C 31.4 W/m-°C
2000°F 234 Btu-in/ft2-hr-°F 1000°C 32.7 W/m-°C
2200°F 255 Btu-in/ft2-hr-°F 1100°C 34.0 W/m-°C
1200°C 36.7 W/m-°C
熱拡散率 RT 5.2 x 10-3in2/sec RT 33.6 x 10-3cm2/sec
200ºF 5.7 x 10-3in2/sec 100 34.5 x 10-3cm2/sec
400°F 6.2 x 10-3in2/sec 200 36.6 x 10-3cm2/sec
600°F 6.8 x 10-3in2/sec 300 39.4 x 10-3cm2/sec
800°F 7.5 x 10-3in2/sec 400 43.2 x 10-3cm2/sec
1000°F 7.9 x 10-3in2/sec 500 47.2 x 10-3cm2/sec
1200°F 8.1 x 10-3in2/sec 600 49.5 x 10-3cm2/sec
1400°F 8.2 x 10-3in2/sec 700 52.9 x 10-3cm2/sec
1600°F 8.4 x 10-3in2/sec 800 51.7 x 10-3cm2/sec
1800°F 9.1 x 10-3in2/sec 900 53.3 x 10-3cm2/sec
2000°F 9.4 x 10-3in2/sec 1000 54.2 x 10-3cm2/sec
2175°F 5.2 x 10-3in2/sec 1100 58.6 x 10-3cm2/sec
1200 61.2 x 10-3cm2/sec
比熱 RT 0.108 Btu/lb.-°F RT 452 J/Kg-°C
200°F 0.112 Btu/lb.-°F 100°C 470 J/Kg-°C
400°F 0.118 Btu/lb.-°F 200°C 493 J/Kg-°C
600°F 0.124 Btu/lb.-°F 300°C 515 J/Kg-°C
800°F 0.130 Btu/lb.-°F 400°C 538 J/Kg-°C
1000°F 0.136 Btu/lb.-°F 500°C 561 J/Kg-°C
1200°F 0.154 Btu/lb.-°F 600°C 611 J/Kg-°C
1400°F 0.166 Btu/lb.-°F 700°C 668 J/Kg-°C
1600°F 0.173 Btu/lb.-°F 800°C 705 J/Kg-°C
1800°F 0.177 Btu/lb.-°F 900°C 728 J/Kg-°C
1900°F 0.178 Btu/lb.-°F 1000°C 742 J/Kg-°C
2000°F 0.179 Btu/lb.-°F 1100°C 749 J/Kg-°C
2200°F 0.180 Btu/lb.-°F 1200°C 753 J/Kg-°C
平均熱膨張係数 70-400°F 7.4 µin/in-°F 25-200°C 13.3 µm/m-°C
70-600°F 7.6 µin/in-°F 25-300°C 13.6 µm/m-°C
70-800°F 7.9 µin/in-°F 25-400°C 14.1 µm/m-°C
70-1000°F 8.2 µin/in-°F 25-500°C 14.6 µm/m-°C
70-1200°F 8.6 µin/in-°F 25-600°C 15.2 µm/m-°C
70-1400°F 9.0 µin/in-°F 25-700°C 15.8 µm/m-°C
70-1600°F 9.6 µin/in-°F 25-800°C 16.6 µm/m-°C
70-1800°F 10.2 µin/in-°F 25-900°C 17.6 µm/m-°C
70-2000°F 11.1 µin/in-°F 25-1000°C 18.6 µm/m-°C
25-1100°C 20.2 µm/m-°C
動弾性率 RT 31.6 x 106 psi RT 218 GPa
200°F 30.6 x 106 psi 100°C 210 GPa
400°F 29.6 x 106 psi 200°C 204 GPa
600°F 28.7 x 106 psi 300°C 199 GPa
800°F 27.4 x 106 psi 400°C 190 GPa
1000°F 25.3 x 106 psi 500°C 184 GPa
1200°F 23.9 x 106 psi 600°C 177 GPa
1400°F 22.3 x 106 psi 700°C 170 GPa
1600°F 20.2 x 106 psi 800°C 162 GPa
1800°F 19.0 x 106 psi 900°C 151 GPa
1000°C 137 GPa

RT= 室温

引張特性

冷間圧延および溶体化処理した厚さ 0.078 ~ 0.125 in (2.0 ~ 3.2 mm)の薄板*

試験温度 0.2% 耐力 極限引張強さ 伸び
°F °C ksi MPa ksi MPa %
RT RT 83.6 577 141.4 975 37.3
1200 649 77.9 537 109.6 756 22.2
1400 760 72.3 498 88.2 608 20.4
1600 871 40.5 279 49.5 341 49.4
1800 982 6 41 9.8 68 144.8
1900 1038 3.9 27 7.3 51 153.1
2000 1093 3 20 5.5 38 157.1
2100 1149 2 14 4 28 159.3
2200 1204 1.4 10 3.2 22 134.6

RT= 室温

熱間圧延および溶体化処理した厚さ 0.500 in (12.7 mm) の厚板*

試験温度 0.2% 耐力 極限引張強さ 伸び
°F °C ksi MPa ksi MPa %
RT RT 82.2 565 138.9 960 42.8
1000 538 71.5 495 120 825 47.8
1200 649 75.9 252 114.9 790 33
1400 760 73.6 505 94.4 670 23.1
1600 871 50.4 345 66.4 460 33.6
1800 982 8.4 58 16.7 115 86.4
2000 1093 4.2 29 9 62 88.6
2100 1149 2.1 14 6.6 46 99.4
2200 1204 1.4 10 5 34 91.5

RT= 室温

*板に対する高温引張試験は、今では標準ではない歪み速度で実施しました。これらの結果
は、降伏するまでの歪み速度が 0.005 in/in/minで、降伏から破断に至るまでは試験片の平行
部に対するクロスヘッド速度を 0.5 in/min とした試験から得られたものです。現在用いられてい
る基準は、降伏するまでの歪み速度が 0.005 in/in/min で、降伏から破断に至るまでのクロス
ヘッド速度は、試験片の平行部に対して 0.05 in/min です。

溶接部の引張試験

試験温度 0.2% 耐力 極限引張強さ 伸び
°F °C ksi MPa ksi MPa %
横方向 GTAW 溶接した 検体 RT RT 81 558 124 855 22
1000 538 70 483 99 683 13
1200 649 79 545 97 669 10
1400 760 77 531 83 572 5
1500 816 66 455 70 483 5
1600 871 46 317 50 345 5
1800 982 10 69 11 76 35
2000 1093 4 28 5 34 29
全溶接金属 の検体 RT RT 85 586 118 814 33
1400 760 81 558 85 586 4
1500 816 68 469 70 483 4
1600 871 N/A N/A 51 352 1
1800 982 N/A N/A 12 83 24

硬度

典型的なASTM結晶粒度 平均硬さ、HRBW
厚板 3.5 – 5 100
2.5 – 5.5 94
薄板 3.5 – 5 98

クリープおよびラプチャー特性

溶体化処理した薄板

温度 クリープ 下記時間で所定のクリープを生じるおおよその初期応力
10 h 100 h 1,000 h 10,000 h
°F °C % ksi MPa ksi MPa ksi MPa ksi MPa
1200 649 0.5 46 317
1 53 365
R 57 393 37 255
1300 704 0.5 45 310 30 207
1 49 338 32 221
R 51 352 33 228 21* 145*
1400 760 0.5 38 262 26 179 17.5 121 11.2* 77*
1 42 290 29 200 18.8 130 11.7 81
R 50 345 33 228 19.8 137 12.3 85
1500 816 0.5 23 159 15 103 8.9 61
1 27 186 16.5 114 9.9 68
R 32 221 20 138 11.5 79 7 48
1600 871 0.5 12.7 88 7.5 52 4.5 31
1 15.2 105 8.7 60 4.9 34
R 21* 145* 11.8 81 6.3 43 3.4 23
1700 927 0.5 6.5 45 3.7 26 2.1 14
1 7.5 52 4.2 29 2.4 17
R 9.8 68 5.6 39 3.1 21 1.8* 12*
1800 982 0.5 1.9 13 1.2 8.3 0.75* 5.2*
1 2.2 15 1.3 9 0.83* 5.7*
R 4.8 33 2.7 19 1.7 12 1 6.9
1900 1038 0.5 1.2 8.3 0.74* 5.1* 0.48* 3.3*
1 1.4 10 0.88 6.1 0.55* 3.8*
R 3.3* 23* 2 14 1.2 8.3 0.76 5.2
2000 1093 0.5 0.75 5.2 0.55 3.8 0.32 2.2
1 0.95 6.6 0.63 4.3 0.43 3
R 2.2* 15* 1.5 10 0.94 6.5 0.61 4.2
2100 1149 0.5 0.53 3.7 0.35 2.4
1 0.64 4.4 0.42 2.9 0.27 1.9
R 1.6* 11* 1.1 7.6 0.69 4.8 0.44 3
2200 1204 0.5
1
R 1.1* 7.6* 0.76 5.2 0.49 3.4

*著しく外挿した値

溶体化処理した厚板

温度 クリープ 下記時間で所定のクリープを生じるおおよその初期応力
10 h 100 h 1,000 h 10,000 h
°F °C % ksi MPa ksi MPa ksi MPa ksi MPa
1400 760 0.5 41* 283* 29 200 21 145 14* 97*
1 44* 303* 32 221 23 159 14.5* 100*
R 55* 379* 38 262 24 165 15 103
1500 816 0.5 26 179 19 131 12.8 88 7.8* 54*
1 28 193 20.5 141 13.8 95 8.4* 58*
R 35 241 23 159 15 103 9.0* 62*
1600 871 0.5 17* 117* 11.2 77 6.2 43 3.3 23
1 20* 138* 12.2 84 6.7 46 3.7 26
R 24* 165* 15 103 8.5 59 4.6 32
1700 927 0.5 8.5 59 4.9 34 2.6 18 1.4 10
1 9.7 67 5.3 37 2.9 20 1.6 11
R 11.5 79 7.1 49 4.2 29 2.4 17
1800 982 0.5 2 14 1.3 9 0.85 5.9
1 2.2 15 1.5 10 1 6.9 0.68* 4.7*
R 3.9 27 2.9 20 1.8 12 1.1 7.6
1900 1038 0.5 1.2 8.3 0.77 5.3 0.5 3.4
1 1.4 10 0.91 6.3 0.6 4.1 0.39 2.7
R 2.9 20 1.9 13 1.2 8.3 0.8 5.5
2000 1093 0.5 0.77 5.3 0.48 3.3 0.29 2
1 0.93 6.4 0.62 4.3 0.41 2.8 0.20* 1.4*
R 2.1* 14* 1.4 9.7 0.9 6.2 0.6 4.1
2100 1149 0.5 0.47 3.2 0.27* 1.9*
1 0.60* 4.1* 0.35 2.4
R 1.6* 11* 1 6.9 0.68 4.7 0.44 3
2200 1204 0.5 0.35 2.4 0.19* 1.3*
1 0.45* 3.1* 0.26 1.8
R 1.1* 7.6* 0.77 5.3 0.5 3.4 0.33 2.3

*著しく外挿した値

ストレスラプチャー強度の比較、1800℉ (982℃)/10,000 時間

熱安定性

HAYNES® 214® 合金は、中間温度での長期間の熱曝露後に適度な室温延性を示します。1750℉
(954℃)以下の曝露に対しては、少量のクロムリッチな炭化物と一緒に、ガンマプライム相の析
出が起こります。約1700℉(927℃)を超える温度での曝露は、214® 合金の特性にほとんど影響を
及ぼしませんが、約2000℉(1093℃)以上では、著しい結晶粒の成長が起こる可能性があります。

熱曝露した薄板の室温引張特性

曝露温度 曝露時間 0.2% 耐力 極限引張強さ 伸び
°F °C h ksi MPa ksi MPa %
1400 760 0 89.4 615 141.1 975 37.3
32 104.6 720 157.5 1085 27.6
100 103.7 715 157.8 1090 26.1
1000 98.3 680 156.4 1080 27.1
1600 871 0 89.4 615 141.1 975 37.3
32 81.6 565 139.7 965 35
100 76.9 530 135.5 935 35.1
1000 71.6 495 132.5 915 39.9
1800 982 0 89.4 615 141.1 975 37.3
32 84.6 585 137.5 950 38
100 84.7 585 137.7 950 34.2
1000 87.9 605 139.6 965 35.2

熱間加工

熱間加工

HAYNES® 214® 合金の熱間加工を計画している場合は、最初に、この合金の冶金特性を見直す必
要があります。その冶金特性を理解することにより、214®合金を熱間成形しようとする製造者には
多くの選択肢が可能になります。

はじめに

HAYNES® 214® 合金(Ni基;Cr 16;Fe 3;Al 4.5;Y 少量を含む)は他のほとんどの合金とは異なり、ニッケル基で、アルミナ保護皮膜を形成するためのアルミニウムを含んでいます。アルミニウムは
また、約1000℉(538℃)から1750℉(954℃)の間の温度で金属間化合物、Ni3Alを急速に形成しま
す。一般にガンマプライム(γ ‘)と呼ばれる金属間化合物は合金を非常に強化しますが、1300℉
(704℃)から1400℉(760℃)の範囲においては延性を低下させ、引張伸びは、2000℉(1093℃)付近の約90%から1300℉(704℃)~1400℉(760℃)の範囲では約15%にまで低下します。この特性は、添付の引張特性グラフに示されています。

熱間加工した部品の結晶粒度は、スタート時の結晶粒度、熱間加工の温度、応力緩和またはア
ニーリング、および加えられる加工の程度や量の関数になります。大きく見ると、214® 合金の結晶
粒度は温度の上昇とともに大きくなり、加工や変形が増えると微細化されます。

部品の最終的な結晶粒度は通常重要であり、鍛造やその他の熱間加工作業を計画するときに考 慮する必要があります。結晶粒径が大きいと、使用時のクリープ寿命および応力破断寿命が長く なる傾向がありますが、中間温度(1200℉(649℃)~1750℉(954℃))での延性が低下し、部品が溶 接を必要とする場合には、ひずみ時効割れが発生しやすくなります。耐環境性は、結晶粒度には 影響されません。

冶金

HAYNES® 214® 合金は、約2200℉(1204℃)~1800℉(982℃)の温度範囲で問題なく熱間加工できます。加熱時間は加工物のサイズと複雑さによって異なります。大きな断面から小さな断面へと変化
する複雑な形状では、温度を最終熱間加工温度まで上昇させる前に、部品を約1600℉(871℃)で
熱平衡させることが有効な場合があります。一般に、炉内温度が2100℉(1149℃)付近から作業す
ると最良の結果が得られるようです。加工物内の熱を維持するのに十分な速さで、合金を相当量
変形させるのが良い作業方法です。ガンマプライムの析出と、それに伴う延性の低下によって引き
起こされるき裂の可能性を最小限に抑えるために、加工物が1800℉(982℃)に達したときに作業を
停止することを強くお勧めします。

例えば仕上げパスなど、適度な量の作業のみを行う場合、オペレータは合金中で結晶粒が過度に
成長するのを防ぐために、加工物の加熱に使用する炉の温度を下げることを考慮する必要があり
ます。この場合も、部材の温度が1800℉(982℃)まで下がったら作業を中止することをお勧めしま
す。

応力緩和およびアニーリング

これらの用語がここで使用されていますが、応力緩和とアニーリングの違いは、アニーリングが
Ni3Alの析出を防ぐために部品を急冷するのに対して、応力緩和は、典型的には部品をもっと
ゆっくりと冷却して、より均一な冷却を行います。214® 合金中に形成されるNi3Alは、約1800℉
(982℃)を超える温度で溶解(固溶化)して降伏強度を実質的に低下させるので、これよりも高い
温度では、この合金は効果的に”応力緩和”または溶体化処理することができます。熱間変形プ
ロセスが完了したならば、ガンマプライムの形成を防止または最小化するために、Haynes
International, Inc.では通常、1950〜2050℉(1066〜1121℃)の間で製品をアニールし、急冷して
います。製品が、その後に熱間変形させられることになっている場合には、一般に、部材を加熱
した後に周囲温度まで空冷しても構いません。

応力緩和またはアニールの実際の温度は、最終製品に求められる特性に基づいて選択しなけ
ればなりません。高い温度は、大きな結晶粒サイズ、中間温度での延性の低下、ひずみ時効割
れに対する耐性の低下、クリープ破断強度の向上、室温強度の低下、室温延性の向上および
機械加工性の向上をもたらす傾向があります。

温度を低くすると、現在の中間温度での延性および結晶粒度、ひずみ時効割れに対する現在の
耐性を維持する傾向があり、急冷された場合のゆがみが少なくなります。

製品が応力緩和され、徐冷されると、合金中にガンマプライムが形成されることが予想されま
す。これは室温での硬度、強度および機械加工の困難性を増加させます。

ここで紹介した議論は、インディアナ州ココモにある Haynes International、Inc.での一般的な 経験に基づいています。それらは当社で得られた結果のみを示すものであり、保証された作業 パラメータではありません。

溶接

214合金に適用するガンマプライム合金を接合するための良い溶接方法:

  • 母材は、通常、溶体化処理された状態であること。
  • 熱入力を最少にすること。
  • 拘束を最小にすること。
  • 清浄であることが重要。
  • ストリンガービードを使用すること。
  • 最高パス間温度が 200℉(93℃)となるように維持すること。
  • 必要に応じて、より良い肉盛材あるいは許容された溶加材 (HASTELLOY® X 合金または
    HASTELLOY® S 合金) を使用すること。
  • 凸状のプロファイル(クラウニング)が必須。
  • 部分溶け込み溶接をしないこと。

HAYNES® 214® 合金は、ガスタングステンアーク(GTAW)、ガスメタルアーク(GMAW)、シー
ルドメタルアーク(被覆アーク溶接棒)およびプラズマアーク(PAW)溶接などの溶接方法を用
いて問題なく接合できます。214®合金を接合するには、同一組成の溶加材を推奨します。
シールドメタルアーク溶接には、HASTELLOY® X溶接棒(AMS 5799)を推奨します。214® 合
金とニッケル基あるいはコバルト基材料との異種金属接合に対しては、一般にHAYNES ®
230-W®溶加金属が良い選択ですが、HASTELLOY® S 合金(AMS 5838)、あるいは HASTELLOY® W合金(AMS 5786、5787)溶接製品を使用することもできます。鉄基材料との異種金属溶接には、 HAYNES® 556®(AMS 5831)溶加金属を推奨します。214® 合金以外の溶加金属を使用する場合は、溶接部の耐環境性は母材よりも劣り、耐環境性を高める手
段として214®合金ワイヤを用いたカバーパスを提案します。

母材の準備

溶接の前に、接合面および隣接する領域を完全に清浄にしなければなりません。グリース、オイ
ル、クレヨンの痕、硫黄化合物、その他の異物はすべて除去しなければなりません。合金は溶接
時に溶体化処理された状態であることが好ましいです。溶接継手の各側面に沿った1インチ
(25.4mm)幅の領域は、溶接前に光沢のある金属を露出させるために研削する必要がありま
す。また、パス間で溶接部を研磨する必要があります。

溶接継手

厚さ 7/64 インチ(2.8mm)までの薄板材料には、I形突合せ継手が使用されます。7/64 インチか
ら 3/8 インチ(9.5mm)までの厚さの突合せ溶接にはV形継手、3/8 インチから 5/8 インチ
(15.9mm)の厚さには、X形継手またはU形継手(厚板の両面からアクセス可能な場合にはX形
継手が好ましい)、および5/8 インチを超える厚さに対しては、両面U形(H型)継手が使用されま
す。設計上必要な場合には、T形継手(両面隅肉溶接)が使用されます。部分溶け込み溶接あ
るいは隅肉溶接は推奨できません。

V形継手は、GTAW溶接の場合は60°の開先角度(SMAWの場合は70°)に面取りする必要があ
るのに対して、U形継手の開先角度は30°で最小半径が1/4 インチ(6.4mm)となるように面取り
しなければなりません。被覆アーク溶接棒溶接に対しては、継手の開先角度はさらに10〜15°大
きくしなければなりません。

溶接の溶け込み

12ゲージ(7/64 インチ(2.8mm))あるいはそれ以上の厚さの材料を完全に溶け込ますためには、両
面から溶接しなければなりません。12ゲージより薄い材料は、完全な溶け込みを可能にするために
適切なエッジ間隔を取って片側から溶接することができます。不完全な溶け込みを防ぐために注意
を払わなければなりません。不完全な溶け込みは、継手の裏側に望ましくない隙間やボイドを残す
可能性があります。高温用途に使用される材料の不完全な溶け込みは、機械的損傷の中心となる
部分に応力集中部を形成します。

両側からの溶接が無理な場合は、継手間隔を広げ、銅の裏当てを使用しなければなりません。完全
な溶け込みを得るには、通常よりわずかに高い電流を使用します。HAYNES® 214®合金は、鋼よりも
低い熱伝導率を有しています;したがって、標準の溝を使用する場合は、鋼に対して必要なクリアラ
ンスよりもわずかに大きなクリアランスを使用する必要があります。

予熱、パス間温度および溶接後の熱処理

母材が 32℉ (0℃)以上の温度で溶接される限り、予熱は、通常必要ありません。 熱入力を最少にす
ることが重要です。可能な最低の電流および電圧が好ましいです。可能であれば、ウィービングを最
小にし、ストリンガービードを使用してください。過度に遅い運棒速度や位置はずれの溶接は避けて
ください。これらは熱を蓄積します。過度に速い運棒速度は涙滴形の溶接パドルを生じ、また、ビード
の縦割れを防止するために避けなければなりません。パス間温度は、200℉(93℃)よりも低くしなけ
ればなりません。溶接パス間での水冷を含む補助冷却手段は、このような手段がゴミを持ち込むこ
とがなく、部品が乾いた状態にあるのであれば、必要に応じて使用することができます。

214® 合金に対する溶接後の熱処理は、部品の厚さと形状の複雑さに依ります。1200〜1800℉(649
~982℃)で使用される 214®合金製加工物の場合、1/4 インチ(6.4mm)以上の厚さの溶接物、また
は著しい残留応力を生じる形状に溶接された溶接物は、溶接後にアニーリング処理することを推奨
します。溶接後の熱処理の目的は、組立部品内の残留応力を最小にし、除去することです。

1900〜2000ºF(1038~1093℃)の金属温度での熱処理は問題なく行われています。金属をこの温度
にするのは、通常、わずか5分で十分です。追加の溶接または成形を行わないのであれば、加工品
を空冷してもよく、そうでなければ急冷することを推奨します。

アニーリングの際は注意が必要です。1200〜1800℉(649~982℃)の温度範囲で214® 合金を加熱す
ると、ガンマプライム(Ni3Al)が析出します。このガンマプライムの析出は、強度の増加および対応す
る延性の低下をもたらすだけでなく、正味の収縮を起こします。溶接物やその他の高応力部品で
は、ひずみ時効割れが発生することがあります。これは、成形および溶接による残留応力が析出に
よる応力によって増大し、母材の破断強度を超える場合に発生します。1200〜1800℉(649~982℃)
の温度範囲を、できるだけ速やかに通過するように材料を加熱することが重要です。1200〜1800℉
(649~982℃)の温度範囲で応力緩和処理をしないでください。

加工物に直接火炎を当てるトーチ加熱または加熱方法は、避けなければなりません。 加熱は、保護
雰囲気だけでなく、空気雰囲気でも問題なく行われています。

免責事項

Haynes Internationalは、本パンフレットに記載されているデータの精度・正確性を保証するために妥当な努力を払っておりますが、データの精度、正確性、あるいは信頼性について、いかなる表明も保証もいたしません。すべてのデータは一般的な情報のみであり、設計上のアドバイスを提供するものではありません。ここに開示されている合金特性は、主にHaynes International、Inc.によって行われた作業に基づいており、場合によっては公開文献の情報によって補足されているため、そのような試験の結果のみを示すものであり、保証最大値または最小値と考えてはなりません。実際の使用条件で特定の合金を試験して特定の目的に対する適合性を判断するのはユーザーの責任です。

特定の製品に含まれる特定の元素濃度とその潜在的な健康への影響については、Haynes International、Inc.が提供する安全データシートを参照してください。特記のない限り、すべての商標はHaynes International、Inc.が所有しています。

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