正しい溶接継手デザインの選択は、HASTELLOY® および HAYNES®合金の加工を成功させるために重要です。まずい継手デザインは、最適な溶接条件でさえも打ち消す可能性があります。
Ni/Co基合金の溶接継手デザインにおける主な考慮事項は、溶接電極または溶加材の動作に対して、十分なアクセスのし易さと空間を提供することです。炭素鋼またはステンレス鋼の場合と比較して、幾分異なる溶接継手の幾何学的形状が要求されます;特に、より大きな溶接開先角度、より広いルート開口部(ギャップ)、および厚さを減らしたランド部(ルート面)が代表的な必要事項です。
溶接継手をデザインする場合に理解しておかなければならない最も重要な特性は、Niおよび Co 基の溶融した溶接金属は、相対的に”動きがのろい”ことで、これは、溶融した溶接金属が溶接継手の側壁を容易に”濡らす”ように流れたり、広がらないことを意味します。したがって、適切な溶接ビードの連結および融合を達成するために、適切な電極操作および溶接ビードの配置を可能にするのに十分な広さがある継手開口部を確保することに注意しなければなりません。溶接アークおよび溶加材は、溶融金属を必要な場所に配置するように操作されなければなりません。継手は、最初の溶接ビードが凸面で溶着するようにデザインする必要があります。過度に狭い開先角度またはルート開口部は、凹形溶接ビードの形成を促進し、それによって溶接表面に張力を働かせて溶接金属の凝固割れを促進します。
さらに、溶接溶け込みは、典型的な炭素鋼またはステンレス鋼よりも著しく少ないです。この特性は、炭素鋼およびステンレス鋼と比較して、継手ルート部でのランド厚さ薄くすることを必要としています。これはNi/Co基合金の固有の性質であるため、溶接電流を増加させても溶接の溶け込みが浅いという特性は大幅には改善されません。
ガスタングステンアーク溶接(GTAW)、ガスメタルアーク溶接(GMAW)、およびシールドメタルアーク溶接(SMAW)で使用される典型的な突合せ継手のデザインは、図1に示すように;(i) I型、(ii) V型、および(iii) X型 です。ガスタングステンアーク溶接は、接合部の片側のみにアクセスできる I型または
V型継手のルートパスを溶着するための好ましい方法として頻繁に用いられます。継手の残部は、適切な他の溶接プロセスを使用して埋めることができます。厚さ3/4インチ(19mm)より厚い厚板の開先溶接に対しては、J型が許容されます。このような継手は、溶加材の量および溶接を完了するのに必要な時間を低減します。特定の状況での他の溶接継手デザインを図2に示します。
溶接継手のデザインを支援するために、様々な溶接資料が利用可能です。 詳細なガイダンスを提供する2つの資料は次のとおりです:
Welding Handbook, Ninth Edition, Volume 1, Welding Science and Technology, Chapter 5, Design for Welding, pg. 157-238, American Welding Society, 2001
ASM Handbook, Volume 6, Welding, Brazing and Soldering, Welding of Nickel Alloys, pg. 740-751, ASM International, 1993.
上記に加えて、ASMEの圧力容器および配管規格のような製造規格によって設計要件が課されています。
溶接継手を満たすために必要な実際のパス数は、溶加材のサイズ(電極またはワイヤ直径)、電流値、および運棒速度を含む多数のファクタに依存します。溶接の単位長あたりに必要とされる溶接金属の推定重量は図1に示されています