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ガスタングステンアーク溶接 (GTAW/“TIG”)

ガスタングステンアーク溶接(GTAW)プロセスは、非常に汎用性があり、全ての溶接姿勢が可能な 溶接プロセスで、Ni/Co基合金の接合に広く使用されています。GTAWでは、溶接のための熱は、  非消耗タングステン電極と加工物との間に確立された電気アークから生成されます。GTAWは、手 動でも自動設備に取付けてでも実施でき、溶接による修理だけでなく、生産にも使用できます。GTAWは、溶接熱の精密な制御を提供するプロセスであり、それ故、薄い母材金属の溶接および   断面が厚い溶接のルートパスの溶着に日常的に使用されています。GTAWプロセスの主な欠点    は、手動溶接中の溶接金属の溶着速度が遅いために生産性が低いことです。

従来、Ni/Co系合金のGTAWにはトリウム2%入りのタングステン電極(AWS  A5.12  EWTh-2)が使用されていましたが、EWTh-2および他のトリウム入りタングステン電極に伴う健康上の懸念から、  今では他の組成がより一般的になっています。EWTh-2電極に含まれている酸化トリウムは、外部  放射の危険性が少ない低レベル放射性物質で、摂取や吸入による内部危険性がある物質です。  溶接作業者にとっての最大のリスクは、所望の円錐形状を維持するためにタングステン電極チップ を研削する時に、放射性粉塵を吸入することです。そのため、発生源で粉塵を制御するために局   所的な排気換気装置を使用する必要があり、必要に応じて呼吸保護具で補完し、研削装置から粉 塵を処理する際の曝露の危険性を制御することに注意を喚起しなければなりません。これらの健   康上の懸念の結果、トリチウム入りタングステン電極は、特定の統治団体および組織によって段階 的に廃止されつつあります。幸いにも、セリウム2%入り(AWS  A5.12  EWCe-2)およびランタン入り(AWS  A5.12  EWLa-2)電極のような、EWTh-2に匹敵する性能を提供する代替品があります。異な るタイプのタングステン電極についての更なる情報は、米国溶接協会の仕様書:AWS A5.12/ A5.12M(アーク溶接および切断のためのタングステンおよび酸化物分散型タングステン電極の仕様)を参照してください。

タングステン電極の直径は、溶接継手の厚さおよび溶加ワイヤの直径に応じて選択する必要があります。電極は、0.040~0.060  インチ  (1.0~1.5  mm)直径の平らな先端で、30°〜 60°の角度を持ったコーン形状に研削することを推奨します。推奨するタングステン電極の形状については図4を参照してください。

ほとんどの溶接に対して、シールドガスには、純度が99.996%以上の溶接グレードのアルゴンの使  用をお勧めします。ヘリウム、またはアルゴン/ヘリウムまたはアルゴン/水素の混合ガス  は、溶接の溶け込みを増加させるため、高運棒速度、高度に機械化された溶接作業のような特定 の状況において有利です。シールドガスの流量は重要です;流量が少なすぎると溶融池が十分に 保護されず、流量が多すぎると乱れが増加して空気を吸い込むことがあります。典型的には、アル ゴン100%のシールドガス流量は、20〜30  ft3/hr  (CFH)(9〜14ℓ/min)の範囲です。一般に、シールドガスキャップは、シールドガスをより低速で供給できるように、実用的な大きさでなければなり   ません。溶接トーチには、ガスの流れを安定させ、最適なシールドガスのシールド範囲を提供する  ために、ガスレンズを装備することもお勧めします。溶接グレードのシールドガスは非常に高純度   ですが、少量の空気でも保護シールドを損ない、溶接金属の酸化/変色やポロシティを発生させる 可能性があります。これは、ファン、冷却システム、通気などからの空気の移動、あるいは緩んだガスキャップまたは他の溶接トーチ部品からのシールドへの空気の漏れによって引き起こされる可能性があります。適切なシールドが達成されると、溶着された状態の溶接金属は、典型的には光沢のある外観を呈し、パス間でワイヤにより軽く磨くことが必要となるだけです。

溶接トーチのシールドガスに加えて、溶接継手のルート側で溶接グレードのアルゴンを用いた バックシールドが推奨されています。流量は、通常5~10 CFH (2~5 ℓ/min)の範囲です。銅の裏当ては、溶接部ルート側の溶接ビード形状を調整するためにしばしば使用されます。裏ガスは、しばしば裏当ての長さ方向に沿って設けられた小さな穴を通して導入されます。裏当てを使用できない状況があります。これらの条件の下では、裏当てなし突合せ溶接がしばしば行われます。このような溶接条件は、パイプまたはチューブの周方向の突き合わせ溶接中にしばしば遭遇します。継手のルート側へのアクセスが不可能なこれらの条件の下では、特別なガス流量条件が確立されています。これらの裏当てなし突合せ溶接条件下では、トーチ流量を約10 CFH(5 ℓ/min) に減らし、バックシールドガス流量を約40 CFH(19 ℓ/min)に増やします。パイプ溶接中のバックシールドガスに関する詳細な情報は、ご要求があれば、Haynes Internationalから提供いたします。

溶接トーチは、水平から90°の傾斜角度および0°〜5°の僅かに傾いた前進角度で、加工物に対して基本的には垂直に保持することを推奨します。トーチ前進角度が大きい(前進方向に大きく傾けた)場合、シールドガスに空気が引き込まれ、溶接部が汚染される可能性があります。アーク長は、特に自生溶接中は、できるだけ短く維持する必要があります。母材を溶かすのに十分なだけの電流を使用し、溶加材の適切な融合を可能にするストリンガー法、またはウィービング法を推奨します。タングステン電極との接触を避けるために、溶加金属は溶融池の先端に慎重に追加する必要があります。溶接作業の間、酸化を防止するために溶接溶加材の先端は常にシールドガスの下に保持する必要があります。溶融池を一時休止する、または”溜める”ことは、溶接熱入力が増加するため、推奨されません。

GTAWプロセスの電気極性は、直流棒マイナス(DCEN/"正極性")でなければなりません。HASTELLOY® および HAYNES® 合金溶接に対する典型的な手動GTAWのパラメータを表1に示します。パラメータは、最終的には特定の溶接電源、溶接継手の形状、溶接者の技量レベルなどの多くの要因に依存する近似値として見てください。したがって、これらのパラメータは、特定の溶接手順を開発するためのガイドラインとして使用することを推奨します。ルートパスを溶着するためには、より小さな直径の溶加ワイヤを推奨します。高周波スタート、プレパージ/ポストパージおよびアップスロープ/ダウンスロープ(またはフットペダル制御)を備えた電源を強くお勧めします。溶接移動速度はNi/Co基溶接の品質に大きな影響を与え、通常は炭素鋼およびステンレス鋼の場合よりも低いです。手動GTAWの推奨移動速度は、4〜6 in/min(ipm)/100〜150 mm/minで す。

図 4: タングステン電極の形状

GTAW(J)

表1: 典型的な手動タングステンアーク溶接パラメータ (下向き姿勢)

継手部厚さ タングステン電極直径 溶加ワイヤ直径  溶接電流 アーク
電圧
in mm in mm in mm Amps Volts
0.030-0.062 0.8-1.6 0.062 1.6 0.062 1.6 15-75 9-15
0.062-0.125 1.6-3.2 0.062/0.093 1.6/2.4 0.062/0.093 1.6/2.4 50-125 9-15
0.125-0.250 3.2-6.4 0.093/0.125 2.4/3.2 0.093/0.125 2.4/3.2 100-175 12-18
> 0.250 >6.4 0.093/0.125 2.4/3.2 0.093/0.125 2.4/3.2 125-200 12-18
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