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ガスメタルアーク溶接 (GMAW/“MIG”)

ガスメタルアーク溶接(GMAW/”MIG”)プロセスは、溶接ワイヤの電極と加工物との間に確立された電気アークを利用するプロセスです。GMAWは、手動、半自動、または自動プロセスとして実施することができ、様々なプロセスバリエーションによって提供される柔軟性は、多くの用途において有利です。GMAWは、GTAWまたはSMAWと比較して溶接金属の溶着速度を大幅に向上させ、半自動プロセスとして実施する場合、一般的には溶接者の技量をほとんど必要としません。しかしながら、GMAW装置は、より複雑で、可搬性が低く、一般的に、GTAWおよびSMAWプロセスよりも日常的な保守を必要とします。GMAWは、耐食合金の溶接および厚肉溶接に対する最も一般的なプロセスです。

GMAWでは、ワイヤ電極の終端部において溶融金属が加工品に移動するメカニズムが、溶接特性に大きな影響を与えます。GMAWでは、短絡移行、グロビュラー移行、およびスプ レー移行という3つの金属移行モードが可能です。さらに、パルススプレーと呼ばれるスプレー移行モードの変化形があります。

HASTELLOY® および HAYNES® 合金のGMAWに対する電気極性は、直流棒プラス(DCEP/ “逆極性”)でなければなりません。下向き姿勢溶接に対して、異なるGMAW移行モードに対する代表的なパラメータを表2に示します。GMAW電源が異なると、設計、操作、および制御システムが大きく異なるため、ここに示したパラメータは特定の溶接装置を用いて適切な溶接特性を達成するための推定範囲として見てください。GMAWの移動速度は、通常6~10 in/min(ipm)/150~250 mm/minです。

短絡移行は最小電流および電圧範囲で起こり、その結果、溶接熱入力は低くなります。典型的には、より小さな直径の溶加ワイヤを使用して行われ、目違い溶接および薄肉断面の接合に適した、相対的に小さく容易に制御できる溶融池を生成します。しかしながら、熱入力が低いと、特に厚い断面を溶接するときやマルチパス溶接のときに、短絡移行が融合不良(コールドラップ)を生じやすくなります。

グロビュラー移行は、短絡移行よりも高い電流および電圧レベルで起こり、溶融金属の大きくて不規則な溶滴が特徴です。グロビュラー移行モードは、理論的にはNi/Co基合金を溶接するために使用することができますが、欠陥の形成を促進する一貫性のない溶け込みおよび不均一な溶接ビード輪郭を生成するため、めったに使用されません。溶滴の離脱および移行には重力が重要であるため、グロビュラー移行は、一般に下向き溶接に限定されます。

スプレー移行は、最高の電流および電圧レベルで起こり、小さな金属溶滴の高度に指向された流れによって特徴付けられます。材料の厚い断面を溶接するのに最も効率的な、比較的高い溶着速度を伴う高熱入力プロセスです。しかしながら、主に下向き溶接においてのみ有効であり、その高い熱入力は、使用性能に影響を及ぼす可能性がある高温割れおよびミクロ組織における第2相の形成を促進します。

パルススプレー移行は、高度に制御されたスプレー移行の変形であり、スプレー移行が起こる高いピーク電流とより低いベース電流との間で溶接電流が交番します。その結果、スプレー移行よりも著しく低い平均溶接電流で、安定した低スパッタプロセスになります。パルススプレーはスプレー移行に比べて熱入力が低くなりますが、短絡移行に共通する融合不良は起こりにくくなっています。この溶接方式は、すべての溶接姿勢および広範囲の材料厚さに対して有効です。ほとんどの状況において、Haynes International は、HASTELLOY® および HAYNES® 合金のGMAWにパルススプレー移行を使用することを強く推奨しています。共同運動性制御および波形調整(”適応パルス”)ができる現代的な電源の使用はパルススプレー移行にとって非常に有効です。これらの先進技術は、パルス電流、パルス持続時間、ベース電流、およびパルス周波数のようなパルスパラメータを制御システムに組み込んでワイヤ送給速度にリンクさせているため、パルススプレー移行の使用を容易にしています。

シールドガスの選択は、GMAW手順開発にとって重要です。Ni/Co基合金の場合、保護シールドガス雰囲気は、通常、アルゴンまたはヘリウムとアルゴンの混合ガスによって提供されます。アルゴンの比較的低いイオン化エネルギは、より良好なアーク開始/安定性を促進し、その低い熱伝導率は、より深い、指状の溶け込み形状を提供します。ヘリウムは、単独で使用すると不安定なアーク、過剰なスパッタ、および過度に液状化した溶融池を生成しますが、アルゴンに添加する と、より液状化した溶融池を提供し、それによって濡れ性が高くなり、溶接ビードがより平坦になります。酸素または二酸化炭素を添加したシールドガスは、他の金属では普通に使用されていますが、 Ni/Co基合金の溶接には避けるべきです。これらの添加は、表面を非常に酸化し、溶接金属のポロシティ、不規則なビード表面、および融合不良を促進します。最適シールドガスは、溶接継手のデザイン/形状、溶接姿勢、および所望の溶け込み形状などの多くの要因に依存します。ほとんどの場合、75%アルゴンと25%ヘリウムの混合ガスが推奨されます;15〜30%のヘリウム含有量で良好な結果が得られています。短絡移行の間に、ヘリウムをアルゴンに添加すること は、融合不良につながる過剰な凸状の溶接ビード形成を避けるのに役立ちます。スプレー移送の場合、純粋なアルゴンまたはアルゴン - ヘリウム混合ガスで良好な結果を得ることができます。ヘリウムの添加は濡れ性を大きく向上させるので、パルススプレー移行に一般に必要とされます。

アルゴンとヘリウムは不活性ガスであるため、溶着したままの溶接表面は、最小限の酸化に止まり、明るく光っていることが予想されます。この場合、マルチパス溶接中のパス間に研削することは必須ではありません。しかしながら、溶接面にはいくらかの酸化または”すす”が認められるかも知れません。その場合、酸化された表面を除去し、その後の溶接ビードの健全な溶着を確実にするために、溶接パス間にワイヤブラシによる強い磨き、および/または軽い研削/表面調整(80 グリット)を行うことを推奨します。シールドガスの流量は、一般に25〜45 CFH(12〜21 ℓ /min)の範囲でなければなりません。流量が低すぎると溶接部が十分にシールドされず、流量が大きすぎるとアークの安定性が阻害されます。GTAWの場合と同様に、溶接継手のルート側が過度に酸化されないように、バックシールドを推奨します。バックシールドができない場合は、溶接後に溶接継手のルート側を研削して、酸化された溶接金属および溶接欠陥をすべて除去する必要があります。その後、溶接継手は、必要に応じて両側から溶接で埋めることができます。

GMAWの間、溶接ガンは、傾斜角度と前進角度の両方がほぼ0°で、加工物に対して垂直に保持する必要があります。視認性のために、垂直からわずかに傾けることが必要かもしれません。ガンが垂直から離れすぎて配置されていると、大気からの酸素が溶接ゾーンに引き込まれ、溶けた溶融池が汚染される可能性があります。スプレー移行溶接には常に水冷式の溶接ガンが推奨され、常により高い溶接電流が用いられます。

電極チップやワイヤコンジット/ライナなどのGMAW装置の一部は摩耗が激しく、定期的に交換する必要があることを認識しておかなければなりません。摩耗または汚れたライナは、ワイヤの供給を不規則にし、その結果、アークが不安定になる、あるいは、”鳥の巣”として知られているワイヤの詰まりを起こすことがあります。ガンケーブルの鋭角状の曲がりを最小限に抑えることを推奨します。可能であれば、溶接中にガンケーブルがほぼ真直ぐになるように、ワイヤフィーダを配置する必要があります。

表 2: 典型的なガスメタルアーク溶接パラメータ (下向き溶接)

ワイヤ直径 ワイヤ供給速度 溶接電流 平均アーク電圧 シールドガス
in mm ipm mm/s Amps Volts -
短絡移行モード
0.035 0.9 150-200 63-85 70-90 18-20 75Ar-25He
0.045 1.1 175-225 74-95 100-160 19-22 75Ar-25He
スプレー移行モード
0.045 1.1 250-350 106-148 190-250 28-32 100Ar
0.062 1.6 150-250 63-106 250-350 29-33 100Ar
パルススプレー移行モード*
0.035 0.9 300-450 127-190 75-150 Avg. 30-34 75Ar-25He
0.045 1.1 200-350 85-148 100-175 Avg. 32-36 75Ar-25He

*詳細なパルススプレーパラメータは、ご要求があれば提供できます。

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