HASTELLOY®およびHAYNES® 合金のホームページ

冷間加工

HAYNES® および HASTELLOY® 合金は、冷間加工によって様々な形状に容易に成形することができます。これらの合金は、オーステナイト系ステンレス鋼よりも一般的に強度があり、より急速に硬化するため、同量の冷間変形を達成するためには、より大きな荷重が通常必要とされます。HAYNES® および HASTELLOY® 合金のより高い降伏強さは、オーステナイト系ステンレス鋼と比較して、冷間成形後に大きなスプリングバックを生じる可能性があります。さらに、急速な加工硬化は、最終形状を達成するために成形ステップ間においてより頻繁なアニーリング処理を必要とするかも知れません。HAYNES® および HASTELLOY® 合金の硬度、降伏強さ、および延性に及ぼす冷間加工の影響を以下のグラフに示します。

下記の合金に適用できる硬度に対する冷間加工の影響:
耐食合金
耐熱合金

cold-work(J)

cold-work(J-2)

降伏強さに対する冷間加工の影響:
耐熱合金

yeildstrength cold-work(J)


下記の合金に適用できる伸びに対する冷間加工の影響:
耐熱合金

elongation(J)

一般に、供給された状態の材料(Haynes International の工場でアニール済み)は、軽度の成形に対して十分な延性を有しています。しかしながら、延性の低下による亀裂発生の可能性がある高レベルの冷間成形に対しては、各々の成形作業を中間アニーリング処理を施した後に行う、一連の連続的な成形工程を推奨します。 ほとんどの状況下では、中間アニーリング処理は溶体化処理でなければなりません(処理温度は熱処理の項に記載されています)。このような連続的な成形/アニーリング作業を完了した後に、材料を最適な状態および特性に戻すために、仕上げ(溶体化)アニールを行うことを推奨します。この処理は、耐食合金の場合において、応力腐食割れに対する耐性を回復させるために特に重要です。

しかしながら、低レベルの冷間加工10%までの外繊維伸び)を施した材料のアニーリングは、異 常な結晶粒成長を引き起こし、”オレンジピール(あばた)”あるいは”ワニ皮"として知られている表面状態にし、特性に著しく影響するため推奨できません。

以下に議論するように、合金への有害元素の拡散を防ぐために、中間(あるいは仕上げ) アニーリング処理の前に、いかなる場合でも加工物の表面から、あらゆる潤滑剤、またはその他の異物を注意深く除去することが非常に重要です。

中間アニーリング処理によって生じたあらゆるスケール(すなわち、表面薄膜)は、次の成形作業の前に、酸洗いまたは機械的手段によって除去することを強く推奨します。

HAYNES® および HASTELLOY® 合金の冷間加工を成功させるためには、潤滑が重要な考慮点です。 通常、単純な曲げ加工には潤滑は必要ではありませんが、冷間引抜きなどの他の成形作業には潤滑剤の使用が不可欠です。軽度の成形作業は、容易に除去できるラード油またはヒマシ油を用いて、首尾良く完了させることができます。より厳しい成形作業には、金属石鹸または塩化/ スルホ塩化油が必要です。スルホ塩化油を使用する場合は、各工程の後に(その後のアニーリング中に硫黄が合金中に拡散するのを防ぐため)、加工物を潤滑油除去剤またはアルカリ性のク リーナで注意深く清浄化する必要があります。

白鉛、亜鉛化合物、または二硫化モリブデンを含む潤滑剤は除去が困難であり、その後のアニー リング中に鉛、亜鉛、または硫黄が合金中に拡散して深刻な脆化を招く可能性があるため、推奨できません。 同じ理由で、中間あるいは仕上げアニーリング処理の前に、あらゆる型材料、潤滑剤、あるいは異物も加工物から注意深く除去する必要があります。

曲げ、ロール成形、ロール曲げ、およびブレーキ曲げ

下記の合金に適用できる推奨手順:
耐食合金
耐熱合金

HAYNES® および HASTELLOY® の薄板および厚板は、単純な曲げ、ロール成形、ロール曲げ、およびプレスブレーキ曲げ加工に適しています。 このような加工には、潤滑は一般的に必要ありません。最小曲げ半径のガイドラインを下表に示しますが、合金ごとに異なる場合があります。

材料の厚さ

推奨値

最小曲げ半径*

in

mm

<0.050

<1.27

1T

0.050-0.187

1.27-4.75

1.5T

0.188-0.500

4.76-12.70

2T

0.501-0.750

12.71-19.05

3T

0.751-1.000

19.06-25.40

4T

T = 材料の厚さ

断面が厚い場合は、延性を回復するための中間アニーリング処理を伴った複数のステップが必要です。これらの熱処理は、熱処理の項に記載されている推奨事項に従って行う必要があり、アニーリングの前に加工物の表面を清浄化することにも注意を払わなければなりません。

深絞り、引張成形、およびハイドロフォーム成形

下記の合金に適用できる推奨手順:
耐食合金
耐熱合金

HAYNES® および HASTELLOY® 合金は、深絞り、引張成形、ハイドロフォーム成形などに適しています。これらのプロセスには、一般に潤滑が必要です。耐熱合金の場合、優れた成形特性を有する細かい結晶粒の原材料が利用可能です。曲げ加工の場合と同様に、断面が厚い場合は、延性を回復させるための中間アニーリング処理をともなった複数のステップを必要とする場合があります。これらの熱処理は、熱処理の項に記載されている推奨事項に従って行う必要があり、アニーリングの前に、加工物の表面を清浄化することにも注意を払わなければなりません。

耐熱合金の成形性の指針として、いくつかの合金に対する(潤滑有りの)オルセンカップ試験結果を、310ステンレス鋼と比較して以下に示します。

合金

平均オルセンカップ深さ*

in

mm

25

0.443

11.3

188

0.490

12.4

230®

0.460

11.7

556®

0.480

12.2

625

0.440

11.2

S

0.513

13.0

X

0.484

12.3

310 ステンレス鋼

0.505

12.8

* 0.040-0.070 in (1.0-1.75 mm) の薄板の、3~12回の測定値の平均。

スピニング および しごきスピニング

下記の合金に適用できる推奨手順: Applicable to:
耐食合金
耐熱合金

スピニング加工とは、回転と力との組み合わせによって、薄板またはチューブを継ぎ目のない中空シリンダー、円錐状の半球体、またはその他の対称円形に成形するための変形プロセスです。人力 ピニング(へら絞り)および機械力(またはせん断)スピニング(しごきスピニング)として知られてい る、2つの基本的な成形方法があります。前者の方法では、金属の著しい薄化は起こりませんが、後者では、金属はせん断力の結果として薄くなります。

ほとんど全ての HAYNES® および HASTELLOY® 合金は、一般に室温でスピニング成形できます。寸法精度に加えて、しわやひっかき傷がないことを含めた品質管理は、作業者の技量に大きく依存します。

これらの合金をスピニング加工する場合、以下のような基本的なパラメータを考慮しなければなりません:

  • 速度
  • 送り速度
  • 潤滑
  • 材質
  • ひずみ硬化特性
  • 工具の材質、設計、表面仕上げ
  • 機械の荷重

速度、送り、および加圧力の最適な組み合わせは、通常、”新しい作業”が設定されたときに実験的に決定されます。連続作業中にマンドレルおよびスピニング工具の温度が変化した場合、均一な結果を得るために加圧力、速度および送りの調整を必要とすることがあります。

潤滑は全てのスピニング加工で使用する必要があります。通常は、機械に負荷をかける前にブランクに潤滑剤を塗布します。加工中に潤滑剤を加える必要があるかも知れません。スピニング加工中、加工物および工具には水溶性油のエマルジョンのような冷却剤を注ぐ必要があります。

スピニング加工により潤滑剤が表面に磨き込まれ、その後のアニーリング処理中に(硫黄および/または塩素の拡散による)有害な表面効果が生じる可能性があるため、硫化または塩化潤滑剤を使用してはなりません。これらのタイプの潤滑剤が誤って使用された場合は、中間または仕上げアニールの前に(研削、研磨、または酸洗いによって)完全に除去しなければなりません。

問題のない加工を実現するには、工具材料、加工品の設計、表面仕上げが非常に重要です。スピニング加工に使用するマンドレルは、硬く、耐摩耗性があり、通常の偏心荷重に起因する疲労に耐えなければなりません。

他の冷間成形加工の場合と同様に、冷間スピニング加工で製作された部品は、本指導書の熱処理の項に記載されている推奨事項に従って、中間および仕上げアニールをしなければなりません。

チューブ成形

下記の合金に適用できる推奨手順:
耐食合金
耐熱合金

HAYNES® および HASTELLOY® 合金は、標準的なパイプおよびチューブ曲げ装置で冷間成形することができます。ほとんどの曲げ作業に対して、曲げ半径の中心点からチューブの中心線までの最小推奨曲げ半径は、チューブ直径の3倍です。 ”U字型曲げ”の場合、直管部の中心線から中心線までの距離は、チューブ直径の6倍です。一方、チューブ直径の2倍の曲げ半径(曲げ半径の中心点からチューブの中心線まで)が可能になるチューブ直径と壁厚さの組み合わせがいく    つかあります。

壁厚さに対する管の直径の比が増加するにつれて、歪みを防止するために、内径および外径保    持の必要性がますます重要になります。曲げ半径が小さ過ぎると、(壁の薄化に加えて)、しわ、     不十分な楕円率、および座屈が発生することがあります。

打ち抜き

下記の合金に適用できる推奨手順:
耐食合金
耐熱合金

HAYNES® および HASTELLOY® 合金の打ち抜きは、通常は室温で行われます。穿孔は、最小直径を板厚の2倍に制限しなければなりません。穴の中心間距離は、直径の約3~4倍でなければなりません。

パンチとダイの片側当たりの隙間

0.125 in (3.2 mm)までのアニールした薄板

板厚の3-5%

0.125 in (3.2 mm)を超えるアニールした薄板又は厚板

板厚の5-10%

切断 および せん断

下記の合金に適用できる推奨手順:
耐食合金
耐熱合金

HAYNES® およびHASTELLOY® 合金は、(多くのオーステナイト系ステンレス鋼と比較して)強度が高く、加工硬化速度が速いため、帯鋸切断は一般的に効率が悪いです。平板形状製品の場合、炭素鋼の厚さが切断する合金厚さの少なくとも50%以上の”はさみ型”せん断機で、せん断することができます。

一般に、合金の厚さが0.4375インチ(11.1 mm)までの場合はせん断可能であり、それ以上厚い材料は通常、研磨ディスク鋸またはプラズマアークによって切断されます。ウォータージェット切断は、通常は推奨されませんが、場合によっては実用的かも知れません。棒材および管状製品は通常、研磨ディスク鋸を用いて切断されます。

HAYNES® および HASTELLOY® 合金を首尾よく切断するには、酸化アルミニウムを樹脂結合した研磨砥石を使用します。典型的な粒度およびグレードは86A361-LB25W EXC-Eです。

HAYNES® および HASTELLOY® 合金は、従来のシステムを使用してプラズマアーク切断することができます。最高のアーク品質は、アルゴンと水素の混合ガスを使用することにより得られます。水素の代わりに窒素ガス使用することもできますが、切断の品質が低下します。ショップエアおよび酸素含有ガスは不適切であり、これらの合金をプラズマ切断する場合には避けるべきです。

これらの合金の酸素アセチレン切断(溶断)は推奨されません。アークエア切断は可能ですが、炭素混在物を除去するために、切断後に研削が必要です。

Print Page Download Page
Top